料理魔法学校クックバレル 共通1 贖罪
魔法料理学校クックバレル。
料理または菓子の調理師を目指す者と経営者を目指す者の通う学校。
あぶりに使う炎、基本の水、食材の栽培から、魔法実力者が多く。
なぜ普通の魔法学園に通わないのかと惜しまれる優秀な生徒ばかりいる。
「はあ……おなかいっぱいだ~」
生徒メラーナはたくさん試食をして満腹から眠気に襲われる。
「おーい! メラーナ」
うとうとしているところで、眠気がふっとぶほど大きな声で呼ばれた。
「ナムシング、どうかした?」
メラーナは学園の用心棒的存在だと周りから思われている。優秀な生徒は別の学校にしつこく勧誘される。
職人気質で弁の立たない無口な生徒などは断れないので正義感の強い彼女はよく追い払うのだ。
彼女と同じ学科の彼は父親がアルドヴィエランに所属する軍人でよく魔法学園からスカウトされる。
だから、いつものようにスカウトマンの追い返しを頼みにきたんだろうかと考えた。
「それは、今日は大丈夫だ」
「ならいいけど人気ものは大変だねー」
「あいつら買いかぶりすぎなんだよ。必要だからやれるだけで戦闘には不向きだし、手ケガしたくない」
スタンダードの魔法学園にスカウトされてうんざり、と愚痴る。
「それで、今日はパティシエ科のとこで味見いかないか?」
「甘いものそんなに食べたくないんだけど」
さっきご飯たくさん食べたし、これ以上は胃もカロリーもキャパオーバー。
「女子はスイーツならカロリー0って聞いたぞ」
「理論的に0はないっての~! 水でも太るんだからね」
がっくりと肩を落としてまた今度誘うよと去った。
「きゃー! オファス家のラジール様だわ!」
「今度は何だろう?」
大きな騒ぎが起きている。もう眠くなくなってしまった。
メラーナは他人に興味がない。というより、学園のまじめな生徒は大体自分の世界に入っている。
彼女も例外ではなく、家柄目当ての生徒とは違う。
また、メラーナの家は天遣族という数少ない有翼の上位らしい。
都会育ちで里には一度も言ったことはないが、とにかく生活に困りはしない。
「……なんだあいつは」
余裕がある分、お金のある人の妻になりたい人を見下すこともない。
生まれの差は本人のせいではないし、自分もそうなる日が来るかもしれないからだ。
「あーメラーナじゃないか」
「クルス先輩こんにちは」
「今、たらふく食べた頃だと思ってケーキじゃなくクッキーを焼いたのさ」
「ありがとうございます!」
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「サーグ先生」
「このプリントを経営者科の教室に持っていってくれ」
「はーい」
「おい、そこのお前」
「私?」
誰だったかな……。 あ、さっき女子の騒いでた。
「ラジール=オファスだな」
「あー調理師科の転校生ですね。この前クラスメイトが騒いでた」
何か用事? もしかして料理の味見でもさせてくれるのかな。
そんなことを考えていると、テーブルに魚フレークの入ったサラダがのせられる。
「俺の料理だ。ありがたく食え」
「ごめん、おなかいっぱいなの」
メラーナはこれから腹ごなしに運動場で走りたい為、去ろうとした。
しかし彼が待てと、呼び止めるので味見はほかの人にお願いしたら?
そう言ったら、怒っているのか、わなわなと震えだす。
「この俺の料理が食えんというのか!?」
「だから、お腹すいてないの!」
「はっ……まさか転校生だからまともな料理が作れないと警戒して!?
俺が作ったのにまずいわけがないだろ!?」
「いや、話をきけ」
先生に宥められ、ようやく正気に戻る。メラーナは面倒で逃亡していた。
「味見なんて誰でもいいと思ったが……」
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