1:女総長の実態
「楓さーん!もういいですって!もう諦めてください!」
「うっさい!誰が諦めるか!」
「俺らも言い過ぎましたよ!だからもう」
「やるって決めたらやるんだよ!黙ってろ!」
「でも……」
朱一の女総長である笠幡楓は後ろにいる不良達をイライラしながら睨みつけた。
「うっさいっての!グダグダ言うな、もう!あたしはなんでもできるんだから」
楓は一呼吸おいて口を開く。
「見とけっ、てめーら!あたしは絶対普通になってみせっからな!」
堂々と宣言した楓を見た、楓の子分である不良達は顔を見合わせた。
刹那。
爆発的な爆笑が空に響き渡った。
「あっははは!ガチで言ってますー?」
「無理無理ーっ!つか、なにそのどや顔ー!」
「マジで冗談厳しいっすよーっ」
完璧に楓を馬鹿にした笑いに楓のこめかみに青筋が立つ。
「……やってみなきゃわかんねーだろうが、おい」
「くくっ……、で、でもですね楓さん、さっきから言ってますがやめた方がいいですって」
「できないって思ってるからそう言ってんでしょ?」
「そりゃそーですよ!この楓さんがフツーの女の子になれる訳ないじゃないですか!」
「お前…… しばかれたいのか」
楓が拳を握りしめたのを察して目の前の子分兼不良は溜め息を吐いた。
「だからですね、心配してるんですよ、俺達は。楓さんのことを考えて止めてるんです。」
「お前……」
ふいにこんな事言われると感動しちゃうじゃん、と楓が目頭を抑える。
「まぁぶっちゃけどっちでもいーすけどね。行きたきゃ行けばいーんじゃないすか?」
前言撤回、コイツ等はあたしに反対して楽しんでるだけだろう、多分。
「行くよ、もう!いいの!?やめちゃうからね、不良!」
楓が不良達にそう叫ぶと「いってらー」と声が返ってきた。
楓はやりきれない思いで「いってくるよ」と呟いた。




