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黒と彼らの関係性  作者: 各務 迥
黒とサザンカ
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閑話:とある仲介業者の証言




 ああ? 橘について? 何でも屋に依頼か? だったらまずは紹介料を―――え、違う?


 ………アンタ一体、あの何でも屋に一体どんな恨みがあるんだ? 悪い事は言わんが、止めといた方が身の為だぜ?

 ………は? それも違う? ますます訳わかんねえなぁ、おい。

 ああ、そうだよ。あの男に用があるって言う奴は大抵二種類だ。

 一方は依頼。もう一方は襲撃者。

 まあ、過去に何をしたのかは知らねえが、こうも極端だとちょっと付き合い考えちまうよなぁ。愛想なんぞ欠片もねえし。

 ………確かにおべっか使われるよりは良いだろうがよ。あの野郎がおべっかって………―――うう、想像したら寒気が。………そうだな。想像すら付かないよな、あの万年不機嫌な傲慢野郎がそんな真似。


 で? あの何でも屋の何が聞きたいんだ? ………なんで何でも屋って呼ぶのか? 確かにあの野郎はそんな屋号も掲げてねえし名乗ってもいねえが、節操無く依頼受けてるからな。あいつの噂を聞いたんなら知ってるだろ? 『浮気から人探し、果ては悪霊関連まで承ります』っつう謳い文句―――知らない? マジで?

 俺に何でも屋の事聞いてくる奴らは大抵その話を聞いてから来るんだがな。珍しいな、アンタ。どっからあいつの話を聞いたんだ?

 ………は? 企業秘密?

 なんだそりゃ。ふざけてんのか………。………て、ちょっと待て! アンタその話どっから………―――っ!? ぎゃああ! 止めろ、仕舞えそれ! ………ぐ、うう。分かった、話せばいいんだろ、話せば!?


 …………、どうやって撮ったんだよその写真。ネガ付きとか可笑しいだろ。何でデジカメじゃねえんだよ。………アンタホント良い根性してんな! その方が物的証拠に取り扱われるからとか、そういう理由でわざわざとか―――ギャ――――っ! スミマセンスミマセン! だからそれ仕舞ってェ――――っ!




 ………ぜぇ、ぜぇ………た、橘についてですよね。悪いんですが、正直俺、あんまり何でも屋については知らないんですが………。


 ………日常生活とか印象について? まあ、それなら………。


 あの。前置きしときますけど、俺を面倒事に巻き込まないで下さいよ? しがない仲介家業なんですから。本当に。

 ………今更それですか。別に心配してませんよ。そもそもそんな間柄じゃないんですから、ただ仕事柄付き合いがあるっていうだけで。




 第一印象は、目付きの悪いヤバそうな奴、ってところですかね。

 俺が知り合ったのは3年前で、その頃何でも屋が事務所を構えた時でした。前から噂は聞いていたんですが―――悪魔とか、魔王とか、非道が人の形をして歩いてるとか―――まあ、碌な噂じゃなかったですね。話半分で聞いてたんですが、………ああ、事実は小説より奇なりって本当だなって実感しましたね、俺。

 それでも依頼達成率100%―――それもたった一人でこなすなんて聞いてたもんですから、知り合う切っ掛けを掴んだ時は、ああやったな、とか思ってたんですよね。甘い事に。


 で、実際会ってみたら―――もう地獄絵図に投げ込まれた気分でしたよ。


 当時のあいつは常にピリピリしていて、もう寄らば斬る! ていう空気を纏って、手負いの猛獣の方がまだマシだって言えるような状態でした。もうその時点で泣きそうに………、いえ何でも無いです。

 まあ、その第一印象が正しいものだったって分かったのは出会った1分後でしたね。いきなり殴りかかられたと思ったら、拳一閃でぶっ飛ばしてましたから。………あいつが殴りかかられたんですよ。いや、よく殺人にならなかったなと今でも感心してる出来事だな、アレは。


 ………はい。話を戻します。

 あいつに頼まれた仕事っていうのが、まあ周知の通り『厄介な依頼を持ってくる』っていうものだったんですよ。労力とかじゃなく、純粋に解決の目処がつかないとか、難事件とか、曰くつきとか。

 緊急性の高い依頼ものは弾かれたが、それ以外は大概OKでしたねぇ。ああ、でも偶に気紛れみたいに受けた時もあったな………。


 明らかに胡散クセえのもあったが、本人は気にした素振りも見せずズバズバ切り捨てるみてえに解決していったな。………後日、色々噂になったのもあったがそれは割愛させてくれ。俺は何も関わって無い。




 しばらくして距離感とか掴めて来て大体2年たったぐらいか。

 ………いや、長いとか言わないで下さいよ。

 え? 敬語使わないなら使わなくていい? んじゃあお言葉に甘えて―――んで、続きなんだがな。


 まあさっきも話した通り、何でも屋は手負いの猛獣以上に厄介でな、何時でもどこでも不機嫌で、依頼主と顔合わせする時ぐらいしか鳴りを潜めなかったんだ。それも2年たって大分落ち着いてきて―――まあ、なんとか馴染む事が出来た訳だ。


 それから時々様子を見に行ってみたんだが………アイツの〝日常生活〟とやらは、俺にもよく分からん。

 何と言うか、生活臭というか、人間臭さというか………そういう類のもんが嗅ぎ取れ無いんだよ。

 時々あの野郎実ははアンドロイドじゃねえかって思うんだよな。べらぼうに強いし、アホみてえに頑丈だし。銃にこめかみゼロ距離で打ち抜かれて切り傷って可笑しいだろ? 蹴り一発で車大破とか、亜人素手でぶちのめすとか人間業じゃねえだろ、普通に考えて。

 対空ミサイル撃ち込まれても死なねえ気がするわ、アイツ。


 …………? ………これで話は仕舞いかって? ああ、そうだな、俺が言えるのはこれくらいか。




 ―――ああ。

 そういえば、あいつが特に不機嫌になる時があったな。大体半年に一回か、多い時は月一。

 一度、その原因らしき時に居合わせたんだが………―――いや、逃げたよ。速攻で逃げたに決まってんだろ。中見た瞬間ドア閉めて回れ右して全力疾走したって。むざむざ死にに行くような真似するか。


 原因? なんか尋ねてきた奴がいたらしいな。なんか、誰かの代わり、みたいな感じだったが。

 何で知ってるかって? 廊下に響くぐらいの大声で怒鳴り合ってたからな、嫌でも聞こえたんだよ。不用心だねえ、全く。らしくねえと思ったから印象に残ってるよ。

 それに、一度怒鳴ってた嬢ちゃんと口をきいた事もあったしな。


 いや、ホント綺麗な嬢ちゃんだったな。仕草が色っぽいっつうか、アダっぽいつうか。まあアンタほどの美人じゃあなかったな。………はあ、つれないなあアンタも。

 ………そうだよ、確かに振られたさ。その上彼氏とか言う男に殴られて―――ああもう、踏んだり蹴ったりだったぜ!

 ホント良い女だったなァ。名が体を表すって感じで。………聞きたいのか? だったら別料金………ぐ、分かったよ、だから仕舞え!

 はあ………。名前は確か―――






 赴夜 揚羽とかいったけな。






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