17
森は静かになった。
探し物が見つかったのだろう。
冷たい森の空気が僕を冷やしていく。
「あ~るぅ~日、森のなぁかぁ~」
僕の肩にそっと手の感触があり、僕は振り返った。
するとマキの人差し指が僕の頬に突き刺さった。
マキが僕の頬に人差し指を突き刺したまま唇を尖らせている。
「甲斐はバカだよ」
僕はマキの人差し指を頬に刺したまま答える。
「知っているよ」
僕はめげずに息を吸い込んで歌い始める。
「くま~さ~~~んに、でぇあ~あった~~~はい!マキも続けて」
「本当にバカ。早く引越しの準備しないと日が暮れるのに、のんびり散歩なんて」
「いいだろう?最後なんだから…」
「…そうだね」
ある日、森の中で、ナミカに出会うことはもうないだろう。
もしかしたら、彼女は僕たち作りだした幻だったのだろうか。
でも、また会える気がする。
その時はまた3人でコーヒーで乾杯したいな。
肩に置かれた君の手のひらが僕をゆっくりと温める。
だから、僕は安心できるんだ。
ほっとできるんだ。
僕は、僕の肩に置かれたマキの手に、僕の手のひらを重ねた。
「痛いよ。マキ。そろそろ人差し指をどけてくれないか?」
「ばか」
これから、森は冬を迎える
そして、春を迎え、夏を迎え、また、秋を迎える。
森は静かにいくつもの季節を迎えては、送り出していく。
おわり
長い間、お付き合い下さりありがとうございました。
これは、実は、私が既に投稿しているものの番外編的な話です。
「ナミカ」の過去に消化不良を起こされた方はそのお話しを読んでいただければ嬉しいです。
そのお話に、ピンときた方には、きっと明日良いことが起きます。