記憶-KIOKU-
あの戦いの後、鈴ちゃんは私の怪我を詳しく診たり、気絶している間のことを詳しく説明してくれた。
自分も怪我してるくせに人の心配をしちゃう感じ…本当に根っからの善人であることが窺える。
「ロボットに潰されそうになったことは本当にすまなかった。何とか瞬発力を向上させる《隼》でギリギリ潰す前に押し切ることができたが、以後あんなことは起こらないように、君をこの戦いに巻き込まないようにするから、許してくれ」
まっすぐ真剣な表情でそう告げる。
まあ私としては、もちろん死にかけたけど、鈴ちゃんについて行けば退屈しないと気がついちゃったから、連れて行って欲しいんだけどね。
まあ、そんなこんなでバトルはなんとか勝利したけれど、まだ問題がある。
そう、路地裏がボロボロになってしまったのだ。
壁やら室外機やらが、跡形もなく壊れているし、なんならロボットの部品もそこら中に散らばっている。
我々が片付ける?
でも、元はといえばロボットが襲いかかってきたのが原因だし。
そろそろ警察か何かが、先ほどの爆音を聞いてここへ出動して来る頃合いだろう。
そしたら私たちに破壊の容疑がかかってしまう。
そうなる前に逃げた方がいいんじゃ…。
そう思って、路地裏から大通りへ指を指した先に、誰かがいた。
え、目撃者?
まずい下手に人を巻き込むわけには…
オエェェッ!
え?
突然、背後の鈴ちゃんが、うずくまって吐きだした。
「ええっ!鈴ちゃん大丈夫!?やっぱり戦ったせいで具合悪くなってるじゃん!とりあえず私鈴ちゃん診ておくから、おまめちゃんはおねーさんに薬頼んできて!そろそろ仕事から戻って来るはずだから!」
私は混乱して、とりあえず出来ることをやってみようと声をあげて、鈴ちゃんに付き添った。
おまめちゃんもすぐに応じてくれたが、そろそろ警察の人が来るだろう、そうしたら、より厄介になりそうだ。
そう思った時、大通りに立っていた人がまだ残っていることに気がついた。
協力してくれる人かもしれないし、声をかけてみよう。
「ごめんなさい!ちょっとそこの人も水とか持ってませんか?」
そこそこ大きな声をかけたと思う。
しかし、大通りに立っている人は、私が声をかけてもそこから一歩も動こうとしない。
おかしい、この距離なら聞こえているはずだ。
つまり、おそらくあの人は意図的に私たちを放っているのだ。
理由は分からない、というか考えても仕方がない。
そう思って、再び私は看病に戻ろうとした。
が、側に気配がある事を肌で感じた。
どうでも良いはずなのに、どうでも良くない、生物的恐怖を感じる感覚。
恐る恐る気配の正体を探ろうと思い、顔を上げた。
すると、すぐ近くにおそらくさっきの人が、私のすぐそばにいることに気がついた。
それとほぼ同時ほどで、顔に目がいく。
吸い込まれるかの様な美人な女性。
目元はキリッとして、紅い口元はニヤリと笑っていた。
その不気味さに恐れつつ、私は口を開いた。
「何をしに来たの?もしかして、あなたも刀に興味がある人?」
「ええ。」
女は一言、そう答える。
その瞬間、私の視界から女が消えた。
梟。
背後から声が聞こえるのを認識する前に、私は急激な眠気で立っていられなくなってしまった。
バタッ。
---
「ねぇ二人とも、良い加減返事してよ!!」
怒鳴り声に似た、聞き馴染みのある声。
その声に起こされて、ようやく私は立つ事ができた。
だけれど、先ほどの風景と違う。
ここはどうやら、私たちの家らしい。
周りを見渡すと、鈴ちゃんも布団に入れられて項垂れている。
尚のこと、どうやってここまで来たのか見当もつかない。
おねーさんに気になって聞いてみると、どうやらおまめちゃんが家にたどり着くよりも早くに、何者かによってインターホンが鳴らされ、玄関に私たちが届けられたらしい。
誰が来たかは見ていないらしいが、おそらくあの女だろう。
刀だけもらって、私たちは家に帰す、本当に刀や正朱だけが目的のやつらしい。
最低限の考え方を持ったやつなのか…?
だから、路地裏にわざわざ現れたのだろうか。
でも、なんで私たちの家を知っていたんだろう。
「おい、刀はどこだ!」
おねーさんと話していたら、いつの間にか鈴ちゃんが起き上がっていた。
私はとりあえず、鈴ちゃんの様に刀が使える女に盗まれてしまったことを説明した。
「…やっぱりか…。」
それだけ言うと、鈴ちゃんは大股で玄関へ向かって、靴も履かずに飛び出して行った。
慌てて追いかけるが、あっさり振り切られ、アパート外の道路へ行ってしまった。
「まだ休んだ方がいいよ!せめて、どこにいくか教えて!」
私は引き留めたくって、2階から叫ぶ。
けれど、
「もうこれ以上君たちを巻き込めない!絶対についてくるな!」
と言われてしまった。
そんな事を言われて、私が立ち直れるはずがない。
私はギリギリまで追いかけようとしたが、そのまま泣き崩れてしまった。
私は結局何もしてあげられなかった。
もっと頼ってほしかったな…。
もっと、友達でいたかったな…。
---
絶対についてくるななんて、言いたくなかったな。
こんな別れになってしまった事を悔やみつつ、茜の泣き声から逃げる様に、鈴鳴は走ってた。
そして、ある場所へ向かっていた。
ある場所とは、男がどうやってここまで来たかがわかる場所。
要するに、男がここへ来た"手段"。
それを男は先刻、"思い出した"のだ。
記憶-KIOKU- 御終




