プロローグ
真っ白な背景に永遠とドアが永続的に立ち並ぶ空間。そこに彼は立っていた。
大きなシルクハットに裾の長いジャケットを身にまとい、ボストンバッグを手にしている姿はその無機質な空間とひどいミスマッチを起こしているようだった。
長い間見ていれば気が狂いそうにもなるその目の前に広がるドアだけが立ち並ぶ光景も、彼にとってはすっかり見慣れたものである。
「さてさて、今回はどこにしようかな」
彼はゆったりと歩き出すと無数に並ぶドアの中の一つの前で足を止め、首を傾げる
「おや?これは最近開通したのかな?前回ここに来たときには見かけなかったが」
サビのついたドアノブに渦巻いたような紋章、初めて見るその外見に彼はひどく心が惹かれた。
ここで目についたのもなにかの縁だろう。
「今回はここにしようか」
彼はそのドアの前に立ち、呼吸を整えると、その扉を開く瞬間を心の中で待ちわびる。
「荷物よし、服装よし、帽子よし、そして――笑顔よし!」
彼はササッと自分の手荷物を点検し、ゆっくりと口角を上げると、そのドアノブに手をかける。
指先をドアノブに絡ませ、軽く引く。その動きはとても落ち着いたもので、何度も繰り返してきた行動の一部にすぎないのだろう。
だが、その先に広がる世界を頭の中で思い描くことで、少しの好奇心と、ほんのりとした緊張が彼の胸の中で揺らめく。
ドアがゆっくりと開き、薄く漏れた光がただでさえ真っ白な空間を照らしだす。その光は、どこか春のような暖かさを感じさせ、次の冒険への期待感をくすぐる。
彼はその目を少し細める。
「この感じはなんとも、いまだに慣れないものだ」
まるで新天地に訪れる冒険者のように、心の中で少しだけわくわくしながら、ドアの隙間から見える先の世界をのぞき込む。
その世界がどんなものであろうと、彼にとっては「新しい場所」を訪れること自体が楽しみで仕方がないようだ。
「おっと」
僅かな風が彼の目をなでる。
その目線が、すこし挑戦的な光を帯びてくる。手のひらがドアに触れ、軽い力でそれを開けると、今度は完全にドアが開ききり、向こう側の世界が広がった。
ほのかな光に包まれたその先には未知の風景が広がっている。彼は少しだけ息を飲む。
――楽しみだ。一体何があるのか。何を経験できるのか。
彼の胸の中には、今や旅行に出る前の楽しみや期待が込められているようだ。今度は彼はその顔に心からの笑みを浮かべつつ、その大地に足を踏み入れる。
その瞬間、彼の心に広がるのは、未知なる世界に飛び込む興奮だけだ。
ある種の賭け事とも言えるのかもしれない。
静かに歩き出す彼の背中は確かな喜びを感じさせる。
そのドアは彼にとって未知の世界の入り口だった。
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作者は燃え尽き症候群なので、この作品も途中で終わってもいいように短編集をいくつもつなげる感じにしたいと思います。
(更新が止まったらそういうことだと思って心の中で筆者を罵倒してください)直接いわれると豆腐メンタルの筆者は死んでしまいます。
あと、この作品は筆者の語彙力強化用の作品なので間違えている部分があれば「恥ずかしいやつだなこいつ」と生暖かい目線で見守ってください。
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