003話 姉の幻月に生み出された妹はドジッ娘説
この世の中『ドジっ娘』と呼ばれている人物は世界の神に嫌われているのでは無いかと思う位に運に見放されている随一不幸な人物だとこの私、古明地さとりは思う。
何故開幕にこんな感じの理論的な事を言いだしたかと言いますと…
「…うぐぅ。―私はなんで失敗ばかりしてしまうのでしょう…?」
それは、見るも絶えない位に意気消沈してしまった幻月さんの妹の事なんです。
「…こ、これは、え~と、弁明の余地もないかもしれませんねぇ…」
多分、現状が判らないと思いますので、初めから順に説明しますね?
最初にこの妹さんと合ったのは、私が朝から何時も使っているキッチンに何時の間にかいた所からなんですね。
最初、
「幻月姉さんの為なら、朝にご飯を炊く事位しますよ」
と言っていて、それは見事な炊き具合でした。
朝ご飯を任せられると思い協力してやろうと私が言い出したのが運の尽き…
「…えと…此処にあった魚は…??」
「―あ。…その、出来たのですが…この様に真っ黒になりました…」
「―ちょっ!??もう、それ焦げてます!!?もう炭になりかけてます?!食べられませんので、もう捨てて下さい!」
―昨日調達した筈の魚を焼きすぎて炭にしたり…
「食器は何方へ運べば宜しいですか?さとりさん?」
と妹さんは手に私を含めた食器を持って何処に運べばよいのを訊ねてくる。
「えっと、取り敢えず、向こうにある小さなテーブルにでも置いて下さい」
私は、向こうを指さし其処に有るテーブルに置いて欲しいと頼みました。
ですが―
「―判りました。…あっ!??」
言っている傍から滑る筈もない所に躓いた挙句そのままバック宙返りをするかの様に転びその拍子に手に持っていた食器をぶちまけたのです。
「―!??(くっ!、間に合えっ!!)」
私は、流石に見過ごせず間一髪で全ての食器をキャッチ!
バシッ!!
心地いい音が響き渡る。
初めて肝が冷えた感じですね…。
…まぁ、多少は無理をした感じなので若干サードアイの管が切れてしまいましたがね?
…そうです。其処から少量の出血はしてはいましたよ?
―でも、本編の1話を参考に見てくれれば分かる通り凄まじい自己回復力があったので痛くとも、気には留めませんでしたが。
―え?メタい??…そんな話は無視、無視っ!!
「―ふぅ…危うく食事が出来なくなる所でしたよ…えっと、妹さんは大丈夫ですか?」
「…えっと、はい。―大丈夫ですが…その…」
「謝らなくても大丈夫です。貴女の気持ちは読めました。本当に悪気はないようですしね。」
「…取り敢えず、私が朝の準備をしておきますので貴女は幻月さんを起して来て下さい」
「…すみません。後は任せます。―はぁ。」
妹さんは溜息混じりで幻月を起こしにいったのだった。
「―。…さて、私は魚の調理をしなくては…」
そう独り言を呟いてささっと生魚を取り出して焼き始めたのだった。
…そう言えば、幻月には原作では妹がいたのよね?確か双子で名前は夢月。
その作品を知らない人からは夢月の事を『むつき』とか『ゆめつき』とかいうらしいわね。
正しくは『むげつ』。
幻月と書いて『げんげつ』と呼ぶ姉の性格とは真反対の性格。
『二人で一人』という筋書きを持つ双子であって二人が揃えば幻想郷最強の悪魔とも呼ばれる位。
性格は
『人間を毛嫌いしていて、人間を殺す事なんて容易い。人間になんて慈悲は要らない玩具。姉に言われたら躊躇なく人間を狩ってくる位姉に忠実で溺愛している仲』
危険度は幽香と同じ位に極高。
人間友好度は最低である。
でも、意外にも幻月の判定はまた違う。
危険度は幽香と同じ位だが、
人間友好度はまさかの極高。
彼女は人間に好かれやすく、また本人も人間の事を好いているのだ。
この事から人間らしい性格の持ち主だという事が判る。
…だから、色々と頼り有って面倒くさい性格なのだろう。
「…はぇ!?…アナタ…夢月??」
「はい。貴方の妹の夢月ですよ」
「…朝だからか、余り大きな反応できないけど…え~と、何でここに??」
「??…それは、姉さんの為に夢からここへと来たのですけど?」
「…???…あぁ、そういう?…そういう…えと、設定ね??」
「…???幻月姉さん??何をいっていますか??その…せってい…?とはなんのことでしょう?」
「…あ、いいえ。気にしないで!此方の独り言だから!」
「???」
「向こうでは、幻月が起きたみたいね?…うん。丁度良くご飯の用意が出来たようですし…」
其処へよく見た事がある黒と赤色の猫の手が一つ…
「―お燐さん??貴女は何をこっそりとつまみ食いをしようと焼いた魚に手を伸ばしているのでしょうか??」
「(ギクッ!?…や、やだなぁ~♪そんな無粋な事をする訳ないじゃないかぁ~)」
「…では、さっき私が聞いていた貴女の心の声を再現してあげましょうか?」
「(…え!?あの…それは、一体何処の部分を言っているのかねぇ…?)」
「ここですよ。」
と、お燐の頭の中に私がその時に聞いた心の声を映像と共に想起させた。
同時にあるスペルカード風にその想起を発現させた。
「―想起『デフレクションメモリーズ』」
…因みに『今の幻想郷』には『幻想郷』というくくりも、ましてやそれを作った神と呼ばれる『賢者』も、そしてその幻想郷を形作る為の勝負方式『命名決闘条約』すら出来ていないので、単なる『中二病』になりかねないけど…ね?
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「…取り敢えず、私が朝の準備をしておきますので貴女は幻月さんを起して来て下さい」
「(…何やらもめている様だね??)」
「…すみません。後は任せます。―はぁ。」
妹さんは溜息混じりで幻月を起こしにいったのだった。
「(ふ~ん。なら私は、焼き上げた所をこっそりと頂くとしようかね?一つ位減った所でさとりは判らない筈だしね?)」
「―。…さて、私は魚の調理をしなくては…」
そう独り言を呟いてささっと生魚を取り出して焼き始めたのだった。
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「ざっとこんなものですね。…さて、証拠はもう出ましたよ?」
お燐さんの声は訊いてはいたんですけど…あえて無視していましたから。
―なんで?
それは、この状況になった方が面白いからですよ?
慈悲は??フフ。
そんなものありませんよ?だって、私『人間』じゃありませんし?
『妖怪』ですよ?そんなモノとっくに捨てました。
「認めようじゃないか…悪かったよ。」
「…判れば宜しい。…では、お燐さんも向こうの席についてください。朝食を取りますので」
「(了解。―じゃ、先に行っているから何かあったら幻月でも呼ぶさね)」
「はい。では、後程」
そして、今に至る。
「で?夢月??何か言う事あるんじゃないの?」
「―すみません」
「謝れば良いってもんじゃないのよ??さとりに迷惑かけてさ…私を起こしに来てくれたのは良いけど…其処までの道のりで私の食器は綺麗に壊してくれちゃって…。悔やんでも悔やみきれないわよ!!」
そう。私の食器は大丈夫だった。夢月も同じく。でも。
食器を夢月に預けたその瞬間に夢月はうっかり手元から落として真っ二つ。
余程ショックだったのか、はたまたイメージ崩壊してしまったのか…そして今は夢月に幻月から大説教を食らっている状況である。
私は朝食は済んでおり、燐もさっさと済ませて何処かへと行ってしまった。
「―幻月?そろそろ其処までにしておいた方が良いのでは??内心もう夢月の事を許しているのに、其処まで説教したのですか?」
すると、幻月はこう笑いながらこう話した。
「そりゃ~?夢月の反応が可愛いかったからさ…」
「…他の理由もあるのではないですか?少なくとも、貴女の心には実際の所夢月は可愛いという点で3割はそう思って居るようですけど、残りの7割は違う感情からきているようですよ?」
ソコを付いて来たか~と言う顔をした幻月は溜息を一つ吐いた後に、正直に自分の感情について説明が入る。
「…な~んちゃって。でも、あの時の感情だったら半分くらいはそうだよ?なんたって自分の妹だしね?可愛がりたいじゃん?」
「でも、本音は違う。―だって。私は『妖怪』だよ?『人間』になんかじゃないし。そもそも『人間達』に慈悲は無いよ」
「…でも、だからこそ試してみたかったの。人間の心をもった『妖怪』が『感情』的になってもいない状態で、『自分の顔』に『嘘』をついて相手を騙せるかを試したかったの。判るかな?さとりなら判ると思うよ?この気持ちの事」
「…一理ありますね。ですが、今度からは他で遣って欲しい所です。雰囲気が壊れますので」
幻月は空笑いをした後
「ゴメンね?夢月。さて、割れた御茶碗位は能力で戻せるから平気だよ」
言った後、能力を行使して割れた茶碗がまるで逆再生していく様に元に戻っていく…。
「…ようし。これで大丈夫。夢月。失敗しても最終的に出来ればいいよ。その時は私に行って貴女の為なら何度も時間を戻してあげるから。でも…人間関係の様な『友情』は流石に巻き戻せないから注意ね?」
「…はぁ。洒落なのか本気なのか…よくわかりませんね」
「さとりがそれをいっちゃう?」
「―フッ。それもそうですね。」
今宵は騒がしくも丸く収まったので良かったですね。
―さて、そろそろ何かが始まりそうな…そんな予感がしますね。
悪い方向へ転ばなければ良いのですが…
不穏な一つの風が吹きそれはぴたりとやむ。
これが、また波乱を呼ぶ事とはまだ誰も知る由も無かったのであった。