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東方 夢幻界郷  作者: 聖海龍・ラギアクルス
二章.新たな記録と歴史
39/39

32話 地底の奥底に眠る真相【Hard】

気紛れ投稿多分32回目となります。

相変わらずやる気になったときに書いているので、ゆっくりとお待ちください。

暗闇に紛れるのは私は上手いけど、暗闇は嫌い。ううん。嫌いって言うより…怖い。

お姉ちゃんから聞いた…って言うより元々私は人間だったんだよ。…でも、死にかけちゃった。

当時の事は朧げながら断片的に覚えているけど…やっぱり口に出来る程しっかりした記憶は無いんだ。

…それでも、これだけははっきりと覚えている。

お姉ちゃん…古明地さとりさんが私に問いかけた質問。

『人間を辞めてでも生きたいですか?それとも人間として死んで楽になりたいでしょうか?』

…私は生きたかった。

なんで生きたかったのかは全然思い出せないけど、大切な何かの為だったのはたしか。

そうした経緯もあって私は生きている。

…お姉ちゃんの眷属。さとり妖怪として生まれ変わった。…筈だけども幻月お姉ちゃんとかの一部の人からは半人半妖と呼ばれる事があるんだ。


ーーーーーーーーー


肩書 無邪気な半人半妖

名前 古明地こいし

能力 心を読む程度の能力(不安定)

   無意識を操る程度の能力


身体能力

体力 D

耐力 E

筋力 C

妖力 A

速力 B


説明

瀕死の少女がさとり妖怪である古明地さとりの肉を食べ妖怪へと成った存在。ただ、人間の時の記憶や習性も残った為、不完全な状態。

…幻月達含む一部の人物はその状態を半人半妖と呼び、妖怪としても人間としても狭間過ぎる種族として認識しているそうだ。

また、さとりの分身と呼べる程、記憶の一部と能力の一部を引き継いでいる為、一応なりとも他世界の知識や物事にも詳しい。

しかし、こいし自身も把握していない無意識を操る程度の能力がある為、本人が意識していても気が付けば何処かに移動していたり、行動を起こしてしまっていたりする。


ーーーーーーーーーー


幻月お姉ちゃんが言うには身体は妖怪のモノらしいけど精神と本能が人間のそれらしいから人間を辞めきれていない。

……ホントに言い表し辛い程、中途半端な存在なんだって。

最初は意味が判らなかったけど、こうして【意識】して考えてみたらそれに当てはまる事が幾つかあった。その一つがこの暗闇。

妖怪って種族は、この暗闇に対してなんとも思わないのが自然であり、対して怖いって思う事自体が人間を辞めきれていない証拠らしい。

…お姉ちゃん知識の一つに人間の本能って奴があるんだけど、人間は暗い所…視認出来ない程の暗さに居ると自然と恐怖を感じるとか。

本能的に私が妖怪と違う部分があるとしたらこれなんだよなぁ…。


いきなり何の話って感じたかもしれないけど…要するに妖怪のような人外の事を闇の住人には私はなれないって事だよ。

でもね、そんなモノにならなくても仲良くする事は出来ると私は思う。

だからさ…………


「……ねぇ、こいし。そんなに抱きついていると動き辛いから止めてほしいんだけど?」


「いいじゃん。減るものじゃないし」


「まぁ、お気持ちは判ります。深くなると太陽の光が遠ざかっていきますから。必然的に暗くなるのは仕方無いとは思いますけど…こうゆっくりと光が遠ざかると言うのは、精神的に不安を煽られますね」


私達が入って暫くはなんともなかったんだけども、深くなるにつれて周囲が暗くなっていくのを見ている内にだんだんと怖くなってきたんだもん。


だから、少し位私の身体が震えていたとしても何も訊かずに黙っていてくれるはたてに抱きついているんじゃん。



「はたてちゃんはこいしちゃんの事が嫌いなの?」


「…バァッ!?とと…そんな訳無いです。…大体、私なんかよりもよく一緒にいる椛にすれば良いじゃない。よく居る仲柄でしょ?」


「それは、そうだけど…それとこれとは話が違うんだよ。だってさ、いつもの椛だったら判るけど、今みたいな仕事中の椛だったら、正面以外から抱きつくと問答無用で斬られそうなんだもん……」


「いやいやいやいや?!!そんな野蛮じゃないですからぁ!」


本当かなぁ…見た感じ雰囲気的に怖いんだけど…?


「ふむ。…では、椛さん。今の状態から抜刀して見てください」


「…え?……ま、まぁ、それだけなら別に問題無いのでいいですけど…」


そう呟いて椛が刀に手をかける。

その瞬間、目の色が変わる。

氷のような尖った目線を突き刺してくる。


………斬!!


一瞬、風が頬を撫でた。


その瞬間目の前には豊姫さんがおり、目に見えない透明な障壁が椛の刀を防いでいた。

此方の視線に豊姫さんは気がつくと少し微笑み大事はないですか?と一言。

その正面には既に刀を構えている椛が立っていた。

刀の先は真っ直ぐ豊姫さんの首元を指しており、障壁に阻まれ届いては居ないが場所が違えば豊姫さんの…ううん。私の首元に届いていたかもしれない。

…恐らく、こんな椛でも其処まではしないと思うけど、寸止めで首元に触れる位はすると思う。

私じゃ目視出来なかった。速度で言う所のコンマ0.数秒。人が瞬きするのとほぼ同じ…と言うかそれ以上。

全く見えない。それどころかこれを見る事が出来るのって…此処に居る豊姫さんとか紋さんとか…ホントに数えるくらいしかいないんじゃ…?



「…椛ちゃんの剣の腕が上がったのは認めるけど」


「常にこういう事が可能な時点で野蛮じゃないって言うとか…」


「…ホント、説得力無いわね」


そう言われて、ようやく正気に戻ったのか刀を鞘に収めて豊姫さんに謝る椛。

その後、物凄い赤面で此方を睨んできた。

…まぁ、いいや。




「……変わり映えしない景色に飽きてきたし、そろそろこの縦穴が見つかった経緯でも話しましょうか」





終わりが見えない縦穴に飽きたのか、はたての口からそんな話題が飛び出した。



まぁ、私自身も見飽きて来たし丁度いいかな。と生返事を返す。


「是非ともご拝聴致します」


「一応、私も補足とかに回ろうかしら?」


「紋様は一部余計な事を言いそうなので聴くだけでお願いします」


「解ったわ♪」


「…本当にお願いしますよ?」


はたては紋さんの言葉に溜息一つ吐いた後、



「事のきっかけは鬼がこの山を去ってしまった事から始まるわ。それまでは私達天狗の管轄は妖怪の山近辺までであって、その周囲は鬼達が管轄していたと訊いているわ。そして、この縦穴はそんな鬼達の管轄内と言いつつも余所者が入って知らぬふり。また、縄張りだと言う輩も今までいなかった為、正直に言ってこの場所はグレーゾーン。…何の情報も無い未踏の地。けど、そんな場所も天狗の管轄に入ったからには、最低でもこの場所近辺の情報が必要。でもって犬走家…その中のリーダーである楓さんが偵察に出向いた所、偶然にもこの縦穴を見つけたらしいわ」


「此処から先は天魔の友人であるこの私…紋お姉さんがその話の続きを話すわね」


椛と私ははたてに確認の目を向ける。


「…私だってこの先の事は話せれば話したかったわ。でも、残念な事に私よりも紋様の方がこの事情に詳しいの」


…そっか。さっきはたては言っていたもんね。


近辺の情報が欲しいと。


それならば、はたてが話していなくとも予想はつく。


私は詳しくは知らないんだけど、三大天狗同盟っていうのがお姉ちゃんと一緒に椛の家へと行った時に結ばれたモノみたい。


…其処に所属しているのは犬走家、姫海棠家、射命丸家の妖怪の山と言えばの名家達。


紋さんが言うには天魔さんも認める組織みたいで天狗の管轄内を偵察して捜索し、探索する部門として堅牢な盾と技術を持つ犬走家が担当していて、それ以外にも会得した情報を整理して纏める部門として超遠距離念写が可能な能力を持つ姫海棠家が…その素早い身のこなしと神速とも呼べる速さを持って管轄内である妖怪の山近を奔走し自ら情報を集める新聞記者である射命丸家が担当しているんだってさ。



話を戻すけど、その紋さんは射命丸家のリーダーとして管轄となった区域の情報集めるべく奔走しているんだとか。

その過程で集まった情報と天魔さんと同じ地位である事を利用して、こうやって私達に協力するようにと天魔さんから言われたみたい。

まぁ、紋さんが此処までの道中で暇潰しの話で語ってくれたんだけどさ。


そうそう、天魔って人は紋さんの友達みたいで私達に紹介はしてくれたんだけど…よくわかんないし、話している事も理解出来ないからあんまり話さなかったけどさ。



「…それで、忙しいあかねに代わって選ばれたのが、はたてちゃん」


「ち、違うわよっ!?母さんは関係ないわ!私の方が情報収集能力が高い可能性があるから!」



本当にそうなのかが疑問なんだけど……


椛も怪しげな目線で見ているし…



結局、そんな感じではたての事を弄っていたら沸点が低いはたてだったようで拗ねちゃった。

紋さんがなんとか声がけはしたんだけど、そういう感じの弄られる事に慣れていないせいなのか紋さんの声がけすらも悪く捉えられたみたいでますます拗ねて口もきいてくれなくなっちゃった。







「………それにしても、何処まで降りるのかなぁ」



はたてが拗ね始めてから一時間以上経った。


勿論、拗ねている間も下へ下へと降りている筈なんだけど、全然底に着かない。


未だに私の足元は何も見えず暗いまま。下に手を伸ばしても空を切るだけで地面はまだ先だと言うことは判る。


椛は豊姫さんお手製の特殊な松明を使い辺りを見渡しながら警戒を続けている。

紋さんは夜目が利くみたいで明かりをつけずとも周囲に何があるかを椛に教えてくれている。

豊姫さんは熱波圧縮型簡易光源プリズマーズフレア……って言うよく解らない小さな水晶を取り出した。まるで八面サイコロみたいな形をした水晶を豊姫さんは真上に投げると赤色蛍光の様な光を放ち出し一定の速度で回りだし、豊姫さんの辺りを蝋燭の火の様に照らし出す。

豊姫さんは予備を持っていた様で私に使うか訊いてきたけど、やんわりと断っておいた。

私は妖火を作り出し周りを明るく照らし出した。


先程まで拗ねて非協力的だったのによく見ると、周囲の光景を能力で一生懸命に記憶しようとしている。


結局のところ周辺の雰囲気は人の精神に大きく影響されやすい為、皆沈黙している。私もなんだけど…

……豊姫さんはマイペースなのか定期的に私に話しかけてくる。…見た目以上に子供好きなのかな?


まぁ、そんな訳で豊姫さん以外の人達は静かにしている。

そういう時には必然的に周りを意識して見渡してしま……ん?なにこれ?


先程まで気付かなかったであろう、周りの景色に溶け込み気にもしなかったモノが目の前に現れる。


「…えっと、なんだろ…この紐?」


私は何を思ったのか思ってなかったのか、顔の真横辺りまで灯を移動させてみると、今まで影で隠れちゃっていた所に紐のようなモノが真っ直ぐと続いているのが照らし出された。

この紐の上は何処に続いているのか…入り口には無かったはずだから何処かに引っ掛けておく所でもあったのかなぁ…?

…今まででそんなとこ、通った記憶なんて無いんだけど……



私の声に誘われるように皆が集まってくる。


「紐?…本当ですね。…一体なんでしょうか?」


椛が紐を手繰り寄せて揺らしてみる。


掴んでいるところから起こった波が上と下へとふわふわと伝播し、闇の中へと消えていく。



「…何も、起こらないわね」


はたてが少し気落ちした様に話し出す。


「押しても駄目なら引いてみろって言うじゃない。…もっと強く振ってみたらどうかしら?」


「それは……そうですね」


紋の言葉に椛が強く左右に揺らす。それでもかなり抵抗があるのか揺れる速度が遅い。


「何も起こらない物に構っている暇があるなら、さっさと降りなさいよっ!!」



はたてが何も起こらない事に対してとうとう痺れを切らして咎めてくる。


いや、だって仕方ないじゃん。…私もはたてだって気になったからこうして集まったんじゃん。


「はたてちゃん。…幾ら撮れ高が無かったからって、怒んなくてもいいじゃないの」


「…べ、別にそんなんで怒って無いわよ。先程から、ずっと降りているのに変わり映えしない景色にうんざりしてんの。だから急かしているんでしょ?…悪い?」


「ううん。悪くは無いわよ?…でも、そういう所はホントお母さんに似てきたわねぇ〜♪」


「…や、やめてよ!お母さんになんて………!」


紋さんとはたての二人内での論戦が始まってしまったので、私達は引き続き下へと降りる事に。

勿論、謎の紐を辿るようにしつつだけど。


そうして、暫くその紐を大きく揺らしたりしつつも降りていくこと十数分経った。


これは、紐なのか縄なのかはさておいて…それの抵抗が少なくなってきたのが目に見えて判った所。

もうすぐ、先っぽが拝めるのかなぁ?


「もうすぐですね…」


「その言い方だと…語弊が有ると思われます。正しくはこの縄と思わしきモノの先端が何かが判る。……って事ですね」


豊姫さんが補足を入れてくる。

まぁ、気持ちは判るけど…少しでも面白みがなきゃなぁ……


そんなやりとりを聞いていると、ふと違和感を感じる。


私自身、その違和感って奴がなんなのかよく判らないけど……兎に角、さっきと今とでなんかがおかしい。


「…あら?…縄が上に上がっているわね」


「ほ、本当だわっ!…これは、スクープの予感っ!」


先までツンツンしていたのに、急に嬉々しく話し出た。

紋さんも表情こそ、さっきまでとは変わらないモノの言動や声音から感じ取れる程、嬉しさが滲み出ている。


縄が動き始めたほぼ同時に木の軋む音が響き渡る。

…なんだろ?…この音、何処かで聞いた事があるような…?



…………。


………………………。


………………あ!…そうか!!


昔、お姉ちゃんと一緒に遊びに出掛けた時だ!


私達二人が行った先に偶然、幻月お姉ちゃんとエリスが居て……四人で水を運んだんだっけ…。


名前なんだっけ…


えーと………

い〜?…なんちゃら?

…い、い、い〜…?

いいと?…イート…?

それは、幻月お姉ちゃんのボケでぇ…

いと…糸?


それも韻を踏んだ幻月お姉ちゃんボケ。


いと…じゃなく。

でも、な〜んか近い気がする。

い…と…。濁点つけて…

い〜ど…?いど……っ!

いど、井…戸。

そう、井戸だよっ!


井戸にある縄と桶で水を下から上へと組み上げる奴…


お姉ちゃん達はなんて言っていたっけ?

かっしゃ?…滑車を使って簡単に水を組み上げる装置…それの事を巻き上げ?って言っていたっけ?


……あ、そうか。

それを繋げて読むと井戸の巻き上げ機って読むんだよ!


そして、この音はその巻き上げ機で桶を下から上へと上げる時に聞く少し高い音に似ている気がする。



「……下から桶が上がってきてますね」


椛の千里眼が私達よりも早く紐の先を確認したみたい。


それにしても…桶か…。


此処にもあって不思議じゃないとは思うけど…大体、そんな紐を吊るすような場所もなかった気がする。


井戸とも呼べないけど…事実、桶が縄によって上へと上げられているのも本当だから……もう、なにがなんだかなぁ…


でも、こんな深い井戸なんてあったとしてなんの為にあるのかなぁ…なんて思ったりして。


お姉ちゃんの記憶を少しだけ受け継いでいるから、この謎の紐と桶の関係性について朧げだけど…判っている事はある。

……確証が無いから言い切れないんだけどさ。


そんな事を思っていると、私やはたて、紋さんや豊姫さんにも目視出来る位の距離まで桶が見えてきた。



「……なんか、私の記憶の桶とはだいぶイメージが違うんだけど」


「はぁ?…こいし。貴方、この桶を見たことがあると言いたいの?」


「ち、違うよ。…えーと、そう。お姉ちゃん達と一緒に水を汲みに井戸に行った事があるんだけど、その時に見た桶とはだいぶ違うなって思っただけ」


「…ふーん。…ま、そういことにしておいてあげる」


ほっ。


ついつい口に出しちゃったけど、お姉ちゃん達が言うには遥か先の未来の事を口にしたりすると若干なりとも先の関係性とかに悪影響が出ちゃう事が多いんだってさ。

…特に元々この世界に住んでいる人達は特に……らしいよ。


「あら?…桶の中に何か入っているわよ?」


紋さんがそう言うのも束の間。桶の中に入っていた何かは此方に向けて怒気を含んだ声で話しかけてきた。


「ちょっとっ!?気になるのは判るけど、それでも勝手に揺らさないでよぉ!それも定期的にさぁっ!!」



桶の中に入っていたのは小さな子供?みたいなモノ。


何を言っているのか判らないと思うけど、それは私達も判らない。


明らかに幼い外見に髪は緑色。水色と白色の玉が二個付いたゴム留めでツインテールになっている。

…正直に言えばちょっとだけ可愛いかも?


服装は白装束みたいな格好で、お姉ちゃん知識で言う所の日本人が考える幽霊像が着ている服にそっくり。


状況が状況だったら、怖い印象かも……


ただ、今の状態のままだったら怖くはないけど、ちょっと恐い。


…分かり辛いと思うから判りやすく言うよ?


今言ったのは恐怖とか暗くて怖いって書く方の怖いって意味じゃなく…恐れるとか襲われそうで恐いって書く方の恐いだからね。


「……それを自分が受けた時の事を考えているの?ねぇ、どうなのっ!…私、突然と揺らされて正直驚いたけど仕方無いかで済ませたの。済ませたのに」


そんな感じでこの様に私達に向けて物凄く怒ってはいる。………怒ってはいる…んだけどさ?

この子、桶から全く出ようとしないし…怒っているのに全然迫力が無い……多分、引き気味な声しか出せてないから、怒っているフリにしか感じないのかも?


…………。


…なんだかだんだんと気不味くなってくる。



「えいっ!!」


四人共この状況に口出ししたり、ツッコんだり等せずに黙って静観するしか無かった。…私もどうしたらいいか判らないし、かといって何かを言って逆に空気を悪くしちゃ不味いと思って私も口を開けずにいた。……気が付いたら、私は桶を掴んでいた。


「…えっ?な、何する気?!」


「逆バンジーっぽい奴だよ?」


「えぁ?…ぎゃ…ぎゃくばんじー?ってなんn……ぎゃあぁぁあっ!!?」


彼女が何か言う前に桶を180度反転する。

まるで、中身を下に落とす様に鮮やかにひっくり返す。


「いやぁぁっ!!ちょっ!やめ、止めてぇ!お願いだからぁ止めてぇっ!おちぃ、落ちるぅぅっ!!」


重力に逆らうかと思いきや全然逆らわず、落っこちそうになる。かろうじて桶の淵掴めたため、身体は重力に従いプラーンとぶら下がっている。

他にも桶の中から白い棒のようなモノがポロポロと落ちていく。

…大体、アレがなんなのかは想像はつくから遠回しに例えなくても良いんだけどさ。描写がアレじゃん?少し表現キツくなるから言えないだけ。


…え?判るなら話せって?

……判った。…後悔しないでよ?


…アレはね?

…あの子が今までに喰らった人間の骨だよ。

そして、私からの大サービス。


あの子の正体と名前を私は多分判るって言ったじゃん?


だから、教えてあげるよ。

あの子は種族が釣瓶落しでキスメって名前な筈。

…違ったらごめんね?



でさ、話は戻るけど…その白い奴…もぅ面倒だから骨って言うけど。


その骨をさ、桶みたいな狭い所に入れておいたら邪魔な気がするけど?


「…ありゃ、やっぱ落ちちゃうんだ?」


「当然でしょぉおっ!!…早く、早くぅ戻してぇぇっ!!」


凄い泣きながら睨んできた。そんな怖い顔しなくても戻してあげるから……いや、これは命の危機だからしょうがない気も…取り敢えず、ゴメン。


「…せぇのぉ…よいしょっ!!」


勢いをつけて再び桶を反転。

桶の淵に掴まっていた少女の身体が遠心力で軽々と上へと放り投げられ、綺麗に桶の中へと入る。

そのまま桶から顔を出す事も無く……籠っちゃった。


「ちょっと、こいし!?出逢っていきなりなにやってんのよっ!!」


「…いや、ほら、気不味かったじゃん。で、このままじゃいけないって思って…何か無いかなぁ〜なんて考えていた所…気が付いたらもう桶を掴んじゃってた…」


はたてが私の肩を掴んで、勢いよく揺さぶってきた。

……激しく揺さぶるモノだから三半規管が振り回されて…あ、あぁ……。酔ってきちゃった。

…ホント、気持ち悪くなったじゃん。


この感覚はお姉ちゃん記憶で言う所の車に酔うって感覚やつに近いかも……うぅ。


「ごめんなさいね?変な奴のせいで怖い思いさせて…」


まさかの変な奴呼ばわり。多分、引きこもりしているはたてよりは全然マシだと思うけどなぁ?

…まぁ、引きこもっていても一応真面目でしっかりモノなんだし五分五分かな?


って、私は一体何と争っているんだか………



「もう良いよ。別に。…お姉さん達が妖怪って気付かなかった私の落ち度だし。私よりも強そうなのに襲おうとしたのは浅はかだったし……。貴方達を食べようと思った私が馬鹿なだけだったわ…」


な〜んだ。人食い系の妖怪だったか…。

……なんて既に知っていたけどさ。


…あれ、そう言えばそうじゃん。

もし、それで迷惑をかけた対価として私の身体の半分を食べても良いってなったら…抗いようがないじゃん。…どうしよ?今のうちに遺書でも書いておこうかなぁ………



「質問なんですけど…こんな場所にまで来て落ちてくる人間っているのでしょうか?…私の記憶が確かなら此処に至るまでに妖怪なり自然なりが邪魔をして辿り着く事すら出来なかった様な?…そもそもこんな大穴に落ちてくる人間って見たことも無い気が……」


豊姫さんが質問を投げかける。私もどうしてなのか気になっていたし…

普通に歩いていて落ちるならまだしも、こんなに目立つ大穴に落ちるなんて……間抜けにも程があると思うよ。


「……え、と。たまに落ちてくる程度…だよ?どうしてなのかは知らない…けどさ?…それにここが、私の場所…だとか…そういう訳…じゃないしぃ……」


興奮が冷めてきてだんだんと恥ずかしくなってきたのか声が小さくなってくる。元々内気な性格で話したがらない。…種族か釣瓶落しな筈だし、狭い所に入りたがる様な性格なんだね。

穏便に済ませられるならそれで良いんだけど…


「…成る程。確かに先程とは打って変わって内気な性格が見えていますけど…元々の性格はかなり凶暴なようですね」


タイミング良く椛が観察をし終えたみたいだ。

時間にして数秒。…凄いなぁ。


「内気なのに凶暴なの?」


椛の言葉にはたては聞き返した。

一方で桶の中の少女は微かに反応する。

図星だったみたいだね。


「えぇ。例えばなんですが、彼女の種族なんですけど…」


「釣瓶落しでしょ?勿体つけてないで良いよ。私は既に判っていたし」


「勿体ぶっていませんが……と言うより、何時から?」


「う〜ん。そうだなぁ…。あの娘が反転した際に桶からこぼれ落ちた白い棒みたいなやつ。アレをみた瞬間からかなぁ?」


「…成る程。因みに白い棒みたいなやつってやはり?」


「そだね。種族的にもあっていると思うし、これまでにべた人間の遺骨だと思うよ」


「そうでしたか。だとしたなら内気こんな少女みためでも、内面は人間喰きょうぼうなのも頷けます」



「まぁ、この二人は置いておいて。…自己紹介から。…私は姫海棠はたて。よろしくね?」


溜息をついてはたてが私達二人端っこへ押し退ける。抵抗する事も許されずそのまま押し出される。



「あ、え、と……。き、キスメ…だよ?…よろしくね?」


ーーーーーーーーー


肩書 内気な釣瓶落し

名前 キスメ

能力 鬼火を頭の上に落とす程度の能力


身体能力

筋力 F

体力 D

耐力 B

妖力 B

速力 E


説明

地底世界へ続く大穴付近によく出没する釣瓶落し。

性格は、とても内気…ではあるがそれは自分より強い相手の場合、もしくは妖怪だった場合に限る。

種族的にも人喰妖怪なので人間が居るとその凶暴性が現れ、人を食べてしまうらしい。

ただ、本人が言うには食べるにしても人を選んで食べる様で、選り好みまでとはいかないが出来るだけ食す人間の数を減らしているんだとか


ーーーーーーーーー



なんかこっちがお取り込み中だった合間にはたてが抜け駆けしていた。美味しい所だけ持っていく癖はどの鴉天狗も同じなんだね。…仕方無いと言えばそうだけどさ…油断も隙もないよね。ホント。


「えっと…こいし。古明地こいしだよ。さっきはホントごめんね?」


「剣盾自在の番人…。犬走椛と申します。…友達が無礼を働いた事…申し訳ありません……」


「地上の守護者にして月人…。綿月豊姫わたつきのとよひめと申します。今回は宜しくお願い致します」


「天駆ける疾風迅雷…。射命丸紋しゃめいまるあやよ。突然と此処へ訪れた事に関しては謝罪するわ。…ごめんなさい」




無理矢理だけど自己紹介を兼ねて謝る。

キスメは、終始苦笑いしていたけど…大丈夫だよね。


それにしても…最近の自己紹介ってカッコよく名乗る事が流行っているのかなぁ?

確かに印象には残るとは思うけど、恥ずかしいとは思わないの?


私とはたてはその様子を見て小さな溜息を付いた。








「……所でキスメ。この縦穴の底ってどのあたりまで続いているの?」


なんだかんだ言っても結局案内してくれるキスメに尋ねてみる。

出会ってから更に降りているけど……ほんと、どこまで続くのかなぁ…


「…う〜ん。そっちの感覚と私達の感覚じゃ…違うと思うから、断言は出来ないけど…私達からすれば、すぐ着くと思っているけど?」


……それ、五回目だよ?

だんだんと此方の事情を分かり得たのか、答え方が独特な言い方へと変わっていた。


「…多分、同じ返ししかしないから若干呆れていると思うけど、私もそうだから。同じ質問を定期的にされている身にもなってよ」


「それも、そうだね」


「…そもそも、貴方達が私にどの辺だ?って尋ねる位に精神が不安定ならさ…どうして穴の底に行きたいって言うの?…私には理解出来ないよ」


「…そうねぇ。強いて言うなら天狗様の管轄内に入っちゃったこの場所が未開だから……かしら?」


「……ちが…それは大天狗達の勝手よっ!…上の言う事は絶対だし、逆らえない。ましてや母さんから渋々頼まれたからには従う他ないんだけど…。私からすれば迷惑過ぎるわ!」


紋さんの肯定の後に間髪入れずにはたてが反論を返す。


同じ鴉天狗なのにね。こうも意見が違うのは引き篭もり由縁からなのかな?


それにしても、暇だなぁ……。計測の関係でこの速度で降りなきゃいけないなんてさ?

そうそう、下降速度は自転車を普通に漕いだ並だと言えば伝わるかな?


…まぁ、自由落下で落ちる事が出来れば底に着くのは速くて助かるんだけど…


…そんな勝手な事をしたら、色々と問題があると思うし我慢、我慢。


「…そう言えば、案内している貴方はこの穴の底まで行った事が無いんですか?」


「………どうしてそう思うの?」


椛が疑問に思った事をキスメに質問を投げかける。


「…いえ、推論の内なのでどうしてなのかは判りません。ただ、貴女が案内している時の表情が何処か不安気で、まるで底へ向かった事が無いかの様な…そんな気がしましたので」


「……ふぅん。仮にそれがそうだとして、なんでそこまでしないといけないのさ。私はこの穴の事なんて知らないよ。多分、ヤマメならここの事くらい…知っているんじゃないの?」



椛の質問に若干煙に巻きながらも答える。

…それでも判る。本当に知らないみたいだね。




……そんな事より、どさくさに紛れてまだ直接会った事が無い娘の名前を出さないで貰えるかなぁ?

…多分、椛だけがその娘の事を知らないと思うよ。

はたてはうんうんと初めからマウントを取るかの様な感じだし……




知っての通りお姉ちゃん知識から私はヤマメの事に関して一応詳しいつもり。


…まぁ、魚の種類にそういうのがいたと思うけど今回はボケる必要がないからそれ以上の言及はしないよ。


彼女の正式な名前は黒谷くろだにヤマメ。

種族は土蜘蛛で、恐れられている伝承の一つにあらゆる病や菌、ウイルス等をばら撒いて当時の人々を恐怖のドン底へ落としたとされている大妖怪の一匹だと伝えられているんだよ。


さっき言った情報はあくまでも土蜘蛛における伝承の話であって実際の彼女はそんなに凶暴じゃない。寧ろ、その逆。

色んな人々と馴れ合って色んな話をしたり、助けになりたいと思っているとても優しい妖怪みたい。

ただ、自分が持つ程度の能力のせいで触れ合う事が叶わず、結果仕方なく地底で暮らしているんだとか。




「……ヤマメって誰なのですか?」


「私と親しくて人柄も良いお姉さんかな?…下にいるからもうすぐ会えると思うよ」


案の定、椛がヤマメについてキスメに尋ねる。


「と言うより、皆さん?…はたては別としてこいしも紋様、豊姫さんまで…ヤマメについて知っているのですか?」


「そうそう、それ私も思ったわ。どうしてヤマメの事を知っている訳?あれは、私と母さんしか知らない情報なのに…」


「私は天魔と同じ権限を持っているのよ?なら、言わずとも判るんじゃないかしら?」


「…うぐぐ」


はたては紋さんの言葉にハッとして同時に迂闊だったわ…と一言。


「…な〜んてね?実の所。そんな情報は知らないわよ。個人的に調査したから判っているだけ」


「……ホント、趣味悪いわよ。文と似てからかうのは一流なんだから」


はたてはそのまま私達の方に向き直る。


「…コホン。じゃあ、今度は貴女達の番ね?…椛ですら知らない筈の情報をどうして知っているのかしら?」


「う〜ん。強いて言うならお姉ちゃんから聞いたから…かな?それがたまたま実を結んだだけだよ」


「私は…そうですね。…時刻視認鏡タイムリーストレンジャー…私が左目辺りに掛けているモノを使ったから…としか言えませんけどね?」


豊姫さんは左手で顔の横を軽く二、三回叩く。


よく見るとアイパッチの様なレンズを付けていた。


私の視線に気が付くと、微笑んだ後はたてや椛、紋さんに判らない様な小声で話し始める。



「……こいしちゃんは気付いちゃいました?」


「…?…あぁ。豊姫さんのアレ?…うん。大方、私の知る人と同じで元の世界とかなんとかで知ったんでしょ?…私のこの知識もお姉ちゃんのモノだからさ」



「…成る程。では、『今は』そのお話の続きについては今度宜しくお願い致します。私個人で興味がありますので」


豊姫さんは此方の返答を待たずして話を切られる。



「…仮に私達がその情報知っていたとしてさ?…もしも、知らないってなったら…その時は教えてくれるのかな?」


「当然、教える訳無いじゃない!」


そう言うと思った。…まぁ、私達はある程度知っているから問題は無いんだけどさ。


そんな不服そうな顔しないでよ…。

…なんて思ったけど、逆に私達が知らなかったら、邪悪な笑みを溢して如何にも悪役って顔になりそう。


……此方側としては、イラってきそうだけども。



「そう言えば、キスメはこんな暗い所にいて不便じゃないの?」


「いや、別に?……困ったら明かりつければ良いじゃん」


キスメは私の質問に対して不思議そうな顔で返答を返す。


…そうだけどそうじゃないよ。まぁ、質問の意図的には正しいとは思う。でも、私が訊きたかったのはそういうのじゃ…



暫くキスメの後に続いて下っているとキラキラしたモノが下の方に浮かび上がってくる。


よく見ると光を反射している蜘蛛の糸だった。

しかも、かなり大きい。…私が想像していたモノよりもずっとだ。



「…成る程。元・月の者には些か不思議でしたが…蜘蛛とはこの様にして獲物を捕らえるのですね」


「え〜と…気になるのは判るけど触るのは止めたほうが良いよ。その糸、見た目以上に絡まるから…一度でも触れたらくっついて取れなくなるし、気をつけてよ?」



豊姫さんはキスメのその言葉に少しでも触れようとした手を止めて『忠告ありがとうございます』と返事を返した。



よく見ると糸には粘球が付いていた。豊姫さんが興味本位で触れていたらどうなっていたか…




「其処のお姉さん。興味本位で触れなくて良かったねぇ?…危うく大惨事になる所だったよ。そうならなくて良かった良かった」


下の方から声が聴こえてくる。そっちの方に視線を向ければ弾幕をチカチカと点滅させながら上がってきた。


白に近い黄色い光…弾幕の色って意外と種族とか自らのイメージに左右されることが多くてある程度種族を見極めることが出来るのだとか椛が言っていたなぁ……



因みに幻月お姉ちゃんの出す弾幕は白っぽいピンクで破壊光線の様なレーザー弾幕の色は薄紫っぽい白色。

夢月は青白くて、お燐は赤く、エリスは黄色っぽい橙色。……神騎さんは赤白い弾幕を撃ち出して、私は黄色っぽい緑色でお姉ちゃんは桃色っぽい青だったかな?


そんな事を思っていたら、ようやく視認できる程度にまで近付いてきた。



金髪のポニーテールに茶色の大きなリボン。服装は黒くふっくらした上着の上に、焦茶色のジャンパースカートを着ている。

…ただ、私の知識には無い姿をしてはいる。

ドレスを纏っている様な少し長いスカートになっており、其処から黄色いベルトの様なモノをクロスさせて何重にも巻いて裾を絞った不思議な衣装をしている。端から見ると龍宮城に居る乙姫の様な格好の様に見えてしまってなんとも言えない感覚を覚える。

ましてや大陸系でもないし…なんだろう?


そんな彼女の茶色の瞳が私達を冷たく見通してくる。ちょっとだけ…いや、かなり警戒されちゃっている。

…まぁ、当然か。初対面な筈なのに緊張も畏怖も感じないどころか平然としているんだもん。相手側としては不自然過ぎて逆に怪しく見えちゃうよ。

まぁ、それでも姿を見せたと言う事は好奇心が勝ったと見て良いかな。


「……成る程。貴女がヤマメさんでしたか」


「へぇ?よく判ったじゃん。なに?キスメから聞いていた感じ?」

思った以上に親しげに話しだすヤマメ。

…と言うより、表情から見ても特に驚いた様子もなく事実を肯定。…少しだけ棘が残っている感じは否めないけど…ううん、訂正。棘と言う言い方より若干なり此方を煽ってる言い方…挑発気味な感じがする。



「私は名前だけですが…」


「「「私は詳細まで知っているよ(わね)」」」



私を含めた三人は既に情報は得ている為、濁さずそのまま答える。


その言葉を聞いたヤマメは若干引き気味な表情を浮かべた。


「は?…え?……一応、訊くけど私の種族は?」


「決まっているじゃん。土蜘蛛でしょ?」


嘘言う訳ないじゃん。……あれ?

ヤマメの顔的に私達が謀っていたと思っていたみたいで、目を見開いて驚いていた。


「嘘じゃないみたいだね。…偶然当てたにしては、ちょっと出来すぎている位だと思うし」


ヤマメは私達の事を見据えながら、はぁ。と一つ溜息を吐く。


「…良いよ。認めてやる。私達地底に住む妖怪は大体が地上に住む人間やら妖怪達とは違うのさ。居るだけで……いや何でもないよ」


ヤマメは何か言いかけるも途中で何かを悟ったのか止めた。


「その反応をするという事は他人の事を想いやれる性格なのでしょう?」


豊姫さんはヤマメに対して核心を突く様な話を口にする。


「…どういうことだい?」


「私から説明するとね?昔はヤマメも地上に暮らしていたのよ。彼女の性格は物凄く明るくてね?力仕事でも頼りになるし、お喋りでも人を寄せ集める位に人気者の妖怪だったの。…でも、そんな平和な日々が長くは続かなかったの」


「……………」


紋さんはヤマメの過去を語るかの様に、私達に向けて話し出す。ヤマメは止めることも口出しすることもせず、ただ静かに話を聞いていた。


「最初は里の人間がいつもより少ない事から始まった。彼女は少し心配したけど、里の人から体調を少し悪くしたから休むと告げられた事で安堵した」


「でもね、次の日にはその体調を崩したと伝えた人すら体調を崩してしまった。…何かがおかしい事に気付いた彼女はすぐに原因を究明するべく奔走したんだけど…それが裏目に出てしまった」


「……紋。此処からは私が話すよ」


唐突にヤマメが口を開く。

というか、あれ?

紋さんってヤマメと知り合いな感じ?


「大丈夫?…貴女、自分の口で過去を遠回しに話すの苦手だったでしょう?」


「あれから変わったんだよ。私も君もね?…だから、任せて頂戴」


「…そう。なら、任せるわね」


そう言い、ヤマメに会話の主導権を渡す。


渡された彼女はコホンと咳払いをし、続く様に話し出す。


「私が走り回って一人一人、尋ねて訊いたんだけど……皆から何も得られないどころか明らかに私を避けてる様に感じた」


ヤマメは心底嫌そうな顔をしつつも話を続ける。


「……嫌な予感がした。…皆、私を見るなりまるで殺人鬼が居るかの様に静かに遠ざかろうとする人ばかりで溢れていた」


「………既に判っていた事だった。自分でもこれについては納得出来ていた事だった。…それでも希望は持ちたかった。…逃げる里の人を私の蜘蛛の糸で無理矢理捕まえて私からどうして逃げるのかを直接訊いたわ」


「………。結果は分かりきっていた。…私と直接会った人間は皆病に苦しんで、長時間触れ合った人間は全員重症で今も苦しんでいる人が居たとね」


「…蜘蛛の糸で捕まえた人間を私自らの手で解いてあげた後に、これ以上病が広まる事を防ぐ為に私は、消える様にあの場所を去った。暫く放浪した後にこの地底へと辿り着いた訳」


淡々と話すヤマメの目は諦めと悲哀に満ちていた。

何を思ったのか紋さんはヤマメに話しかけようとしたのだが、ヤマメはそれを見てゆっくりと首を横に振った。


「…あんた達の推測は合っている。私は何処まで言ってもお人好し。誰彼構わず歓迎しちゃう。…それが昔からの性であって私自身の個性だ」


フッと鼻で笑うヤマメ。

口元を見ると先程まで下がっていたのにいつの間にか上がっていた。


「…興が乗ったし、さっき言おうとして言わず仕舞いだった言葉を教えてやる。私達、地底の妖怪ってのは、その場にいるだけで周囲の人間達や妖怪達に害を成す存在なのさ。私だったら病気にする。キスメだったら誰彼構わず襲って喰らう…みたいにね」


「他にも事情があって地上に住めない妖怪達は沢山居るが…。そんな感じで地底には訳ありの妖怪達が住んでいるんだ。…他所の所から来た奴に冷たくするのは嫌われ者が行う当然の行為であり、直そうにも直せないモノなのさ。…あんた達にも何かと冷たく当たった事は詫びるよ。…悪かったね」



「…話は変わりますがヤマメさんの話を聞く所によると能力は病を操る力でしょうか?」


椛はやっと話が終わったかと言わないばかりに彼女に向けて話を切り出した。


「そうだね。改めて名乗らせて貰うとしよう。…私は黒谷ヤマメ。種族は土蜘蛛さ。能力は語った通り、病を操る力を持ってる。昔は自分で能力を制御出来なかったが…最近、私の姿が変わってから能力を自在に操れる様になったんだ」

「…理由は不明だが、この際だし存分に利用させて貰うさ。兎に角、宜しくお願いするよ」


ーーーーーーーーーー


肩書 地底洞の明るい網

名前 黒谷ヤマメ

能力 菌やウイルス等を自在に操る程度の能力


身体能力

筋力 A+

体力 S+

耐力 SS+

妖力 A+

速力 B+


説明

地底世界で生きる妖怪の一人であり、主に菌やウイルス等の病気を引き起こす微生物系統を操れる力を持つ。

性格はかなり明るくお人好し。友好度は高く誰に対してでも積極的に触れ合える等、地上で暮らしていた時から人気の高かった妖怪ではあるが自分では制御が難しい能力のせいで里の皆から嫌われ、時を見て自分から遠ざかったとされる。

現在は身体が大きくなり、能力制御が容易になった他、その応用として対象の病の原因をいち早く突き止め、元凶である細菌やウイルスに菌等を操り、自壊させて病気を完治させる事が可能になった。 

(逆に感染させる事も可能でもある)


ーーーーーーーー


話の流れについていけていないキスメとはたての事は置いておこう。なんたって、ヤマメと話し始めてからずっとポカーンとしていて今から話の筋を話した所で理解出来る筈がないもの。


そんな事より、何処までも続く縦穴に飽きちゃった。……そろそろ、自由落下して落ちても良いよね?

許可してくれたら、すぐにでも降りるよ。

…だって、私はお姉ちゃんと違ってのんびり屋なんかじゃないからね。

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