015話 《人間》達の宴会
こいしの誕生会の夕食後。
私は、皆が風呂に入って行くのを見届けながらあることを考えていた。
ゆっくりとモノを考えることすらも出来ない切羽詰まった状況が日常だったのが裏目に出て久しぶりの暇が逆に歯痒くなってしまった。
この夜の時間ですらも今までだと何かにおわれている事が多く気がつけば…みたいな状況だったのだ。
こうして暇が出来てしまったからには、何で暇を潰そうか考えてしまう。
…神綺さんとカナ。
どちらも原作では決して邂逅しない筈の存在ですね。
神綺さんは東方原作では旧作と呼ばれている場所にて待ち受けるボスであり、魔界の神様。
魔法の原初。魔法を創った、魔力というものを創ったとされる産みの親ともされる偉大な存在ですね。
二次創作では誰でも甘やかす慈愛の母親。
アリスに対してはアリスすらも呆れるほどの親バカっぷりを見せる。
威厳ある神様なのに神様らしからぬ言動や日常におけるあらゆる所に疎く鈍い。
ポンコツで無能のせいで従者である夢子にまで呆れられて叱られる場面が多い。
…様は物凄くギャップ萌えされやすい存在ではある。
…が力は折り紙つき。
魔法に関しては産みの親であるからに無限に等しい容量を持っている。また、体が頑丈であり攻撃を受けても傷一つもつかない。
しかし、その反面で体力…語弊が無いように訳しますが、スタミナ的なモノは備えておらず敵の攻撃を全て食らってしまう程に持久力は無いに等しいだとか。
更には反射神経も無いに等しいため咄嗟の行動が出来ないらしい。
…ですが、これらを差し引いても圧倒的に強いのがわかるでしょう。
原作ではこれらを倒す主人公組の霊夢達が一番恐ろしいのではと私は思いますね。
次にカナさんです。
フルネームがカナ・アナベラル。
彼女も旧作にしか登場しておらず、立ち位置的には博麗神社に憑く地縛霊って言われていますね。
…ですが、最新の原作には登場はしてはいませんね。
噂によれば博麗神社の何処かでまだいるとか…いないとか?
それはおいておきまして…話を続けますね。
カナは原作でプレイアブルキャラ…。
あ、判りやすく言えば主人公としても操作も出来るキャラクターの一人って意味ですね。
二次創作で描写されやすいのは紫のスキマを使える事…。
あ、そうそう、伝え忘れていましたけど、紫って書いてそのままむらさきって読みませんよ。
正しくは紫って書いて、ゆかりって読むんです。
…判りました?
…こほん。
…話を戻しましょう。
カナというキャラクターを描写する時によく描かれやすいのは、紫というキャラが持つ能力の一つ、スキマの様なモノを扱えるという事なんです。
スキマからは現実世界にあるような看板とかの標識を呼び出して武器とかに使う。…って事が多いでしょう。
…えぇ、そうね。
そのスキマについても一応教えておきましょうか。
【スキマ】って言っても簡単に一纏まりに言葉には出来ないんですが…。
ですけど、このスキマを私なりに判りやすく纏めて言葉にするのならば、【限定的などこでもドア】って、言えば伝わりやすいでしょう。
それを扱えるのが紫。幻想郷の賢者とも呼ばれる存在の能力なんです。
…ですが、カナの持つスキマはそんな万能なモノではなくてですね?
モノを遠隔で移動出来るモノとして特化したスキマと思ってください。
すると、自分は出入りは出来ないと思える筈です。
簡単に故意に遠くのモノとかの移動が自分の意思で移動が出来る。
…例えによってしまえば、騷霊…ようはポルターガイスト的な見たいなモノの上位互換を使える…と言えばそれまでですが。
纏めますよ?
そのカナが使える能力は、【ポルターガイストを何処からでも引き起こせる】程度の能力って言うことになりますね。
……………。
……………………………。
……ふぅ。
やっぱり、私は暇の使い方が良く判りません。
本当ならこの時間を使って頭を休めたり何も考えない様にするべきでしょうけど…。
どうにも上手くいきません。
下手するとさっきみたく深く考え込んでしまいます。
なにか考えないと!!
……と私は急かしても実際なにか暇を潰せるものも考えも浮かばないので、必死に考えている時間は無駄になるだけでどんどんと過ぎてしまう。
どうやって暇を潰そうかとそう思いに耽っていると、いつの間にか誰かがやってきていたようでして…私が気が付いた頃には既に私の左肩を二回優しく叩かれて…
「……っ!??…だ、誰ですっ?!」
気が付けば私は声を上げて後ろを振り向いていた。
其処に居たのは…
「きゃぁぁっ?!ぁぅっ……。もぅ…。さとりがそんなに驚くなんて思っていなかったから…思わず私も声上げて驚いちゃったじゃんっ!どうしてくれるのぉっ!」
誰かと思えば幻月でしたか。
考えに耽っていて全く気づきませんでした…。
…思えば幻月の悲鳴…今初めて聴きました。
乙女な所があるのですね…。
……ではなくて。
「……す、すみません。少し考え事をしてまして…気付きませんでした。それと、ホント…すみません。えと…所で幻月さん。…なにか用事でしょうか?」
幻月はその様子の私を見つめて溜め息を吐いた。
「…。まぁ、良いけど。運良く私の悲鳴を聞いたのは、さとりだけだったし。許すよ…。…で、だよ。さとり。お風呂って、既に浸かった??」
「え?いえ。まだ、ですが…」
私がそう言うと幻月は顔をパァッと明るくする。
「そう。じゃ、丁度良かった。今からお風呂、入ろ?一緒にさ」
「う~ん。そうですね。心遣いはありがたいですが、私は最後でも構いませんので先に…」
「はいはい。問答無用!こういう時、さとりは最後まで入らず終いで終わるからね。それに、考え事って言っても暇なんでしょ?…寧ろ、久しぶりすぎる暇の使い方をどう使うか無駄に悩んでいるんでしょ?そうでしょっ?!」
私の言葉を遮るかのように上乗せで幻月は声を張る。
同時に私の手首を掴んだ後に突然と私の腕を引っ張る。突然の事で対応が出来ず、私の体は強制的に幻月の元に引き寄せられる。その上私の顔を窺うかのように幻月は顔を近付けてくる。
「っ。…ちょ、顔、近いですよ…もう少し距離を…」
私は咄嗟に顔を左に向け、幻月との顔の距離を離す。
「…やっぱり。暇だったんでしょ?顔に書いてあるよ」
「そんな訳ありません。…ただ私は今後の事を…」
「どちらにせよね?…私はさとりを…暇でも、暇じゃなくても…どちらでも良かったんだよ。今日くらいは私がさとりを休ませてあげようと思って声をかけたんだよ」
…これは、何を言っても無駄なようですね。
こうなった幻月さんは止められませんし、私では力及ばずで従う他ありません。
でも、幻月さんの提案してくるモノは信用なりますし、きっと善意で心配してくれているからですし。
今日くらいは甘えましょうか。
「…判りました。幻月さん。私の敗けです。…今日だけですよ?」
その言葉を聞いた幻月は、安堵した様で
「うん。ありがとうね?…因みに、こいし、お燐、ルーミアに夢月は先にお風呂に浸かった様だよ。こいしちゃんやルーミアはもう寝ているし、お燐はこいしの面倒を見ているってさ、夢月は夕飯の片付けと朝の仕込みだよ」
「そうなんですね、ありがとうございます。…それではお風呂に行きますか」
私は久しぶりの幻月との風呂を楽しみに浴場へ向かうのだった。
浴場へ向かう際に思い出した事を訊いた。
「そう言えば、例の大浴場。どうなりました?」
「んぅ~?あぁ!大丈夫、大丈夫だよ。それはもう済んだから。お燐やこいしが思い切り入れるようなそんな大きさや間取りをだったらしいから」
「そうですか。それは楽しみです」
……。
…………。
…大浴場計画。
それは、神綺さんがやってきて間もなくの事。
その日の夕食のアイディアを出している時にふと神綺さんに尋ねてみたんです。
「話は変わりますけど、神綺さんって無からモノを創ることも可能なんですよね?」
「えぇ。そうね。イメージ出来るものがあるなら時間はかかるけど想像通りのモノをそのまま造ることは可能よ。でも、どうしたの?なにかあったの?」
心配そうに訪ねてくる神綺さん。
仕方無いので私は断られる事を視野にいれてこう話す。
「…いえ、なにかあった訳じゃありませんけど、強いて言うならこいしという家族が増えましたし…。家のお風呂、サイズが少し小さくてですね。気楽にのびのびと入れないんですよ。…なので、いつか大きいお風呂でもあれば良いなと。…そうすれば、今後、あの娘でも気軽に入れる。…そう思いました。なので神綺さんにさっきの質問をしたんです」
「…。そう」
神綺さんはなにかを思い悩む素振りを見せる。
「あ、別に無理しなくても良いです。聞いてみただけですので…」
私が次の言葉を言った後に話を戻そうかとした所。
「…良いわよ。別に減るわけじゃ無し。寧ろ、大歓迎よ!協力させて頂戴。…でも、ちょっと時間が掛かっちゃうわね…でも、貴女の望みのモノを好きなだけ創ってあげる。…ただね?…夕食の材料のイメージとかもあるから。同時進行してでも早くても夜の九時とか…遅くても夜の十時になっちゃうの。それでも大丈夫かしら?」
「…えぇ。ありがとうございます。神綺さん。それではお願い出来ますか?…私が思う間取りと部屋の大きさに色材、どのような浴場なのか…」
そうして私は神綺さんに想う通りの大浴場のイメージを細かく伝えていったのだった。
そうして、神綺さんは同時進行しながらも食材のイメージをしていくのだった。
……………。
……………………。
話を戻しますが…あの時の神綺さんの言葉が正しいなら今の時刻は概ね九時か十時前後でしょう。
その予想が本当に正しいのなら、あの日以来久しぶりの幻月とのお風呂となりますね。
と期待を胸にその大浴場へと向かったのだった。
「…おぉ。これは、す、凄いですね…」
圧巻してしまった。
まだ着替えスペースを見ただけだが、凄いの一言しか思いつかない。
まさに現実世界にある温泉のような…銭湯を想起させるかのような…そんな雰囲気とスペースは確保できている。
まさにここのスペースだけでものびのびと着替えが出来そうだ。
「…さとり~。早く着替えなよ~?私は先に入っているからさ~!」
そう私が感慨に耽っている間に幻月は着替え終わり、風呂場へと向かっていた。
いや、早すぎですよ。
「…着替えますか」
何時までも想いに浸っている訳にはいかない。
ここで幻月を心配させては二の舞ですしね。
さっさと着替えて浴室も見ないと……それにこの景色だけでもお腹一杯なのに、浴場があるときました。
胸の内にあるドキドキ。
…楽しみが止まらないとは、このことを言うのでしょうね。
ガララッ…。
風呂場に繋がるガラスの様なドアを開けるとその先は大きな温泉のようなお風呂が…。
所々熱気に包まれており朧気に見える所もある。
天然温泉の様にあちこちでお湯が無限に流れ、溢れ続けている音も聞こえてくる。
天井は透明なモノになっており外の景色が丸見えである。
その上、透明な天井は外からだと木造のような外観となっており決して外からは見えない造りになっているとか。
シャワーも見る限り十以上はありそうですね。
本当に銭湯って感じが凄いしますが、あくまでもこれが私の想像する大浴場なんです。
そうして私が少しの間、入り口に立っていると、後ろから知っている声が聞こえた。
「…さとりちゃん?入り口に立っていると次の人の邪魔になるよ~?」
高く少し幼い声音で聞こえる声。
その他後ろから複数の気配がする。
「…あ、すみません。…て、あれ?エリスさん?それに…」
其処にはエリスさんと神綺さん。そして…
「フフッ。初めまして…よね?…私はスターサファイア。妖精なの。神綺さんに誘われてきちゃいましたっ♪」
と元気良く答えるは、あの時とは雰囲気がまるで違う光の妖精のスターサファイアであった。
・・・・・・・・・・・・・
スターのステータス
肩書き 絶対観測の流星
名前 スターサファイア
能力 未知数を観測する程度の能力
特殊能力 軌道修正
・予測の未来を完璧に言い当てることが可能であり、未来予知に等しい予測も正確に言い当てられる。また、気配も正確に探り当てる事も可能な他、自分の気配を操り他者と誤認させる事も可能。別名、未来視とも呼べる能力である。
…ただし、この能力は【口で直接言わない】と未来が確定しないらしい。まさしく不安定と呼べる能力である。ある能力の補助によってこの能力の本質が成立しているらしい。因みにある能力を使用しない場合は、半分の確率で外れてしまうとか?
特殊能力.二 言霊使い
・言霊というモノを扱え、自分が口で言った通りの現象をそのまま引き起こす事が出来る。…が全く制御する事が出来ない。その為、十割中八割は自分の発言で勝手に自滅する事が多い。
因みに大きすぎる現象と物理的現象は引き起こせない。
(例.隕石落下、火山噴火、大地震、地割れ等の世界破壊が印象的な大災害及び自然現象や宇宙侵略、火事、強盗、殺人等の様な他者が起因して起こる事象や現象)
身体能力一覧
耐久力 F-
筋力 E+
防御力 D-
魔力 E-
速力 D+
・・・・・・・・・・・
「……えっと?初めて、ではない気がしますけど…」
「…んぅ~?そうなの?…少なくとも私は初めてお会いするし、神綺さんからもエリスさんからも私達と同じって言われて共感してくれましたよ?」
同じ?って言いますと…
「…雰囲気?」
「なに、そこで話しているのさとり。それにエリスと神綺さん。ほらほらっ!行くよっ!!さとりっ♪」
幻月は私の腕を掴み引っ張ろうとする。
「ちょっ!?幻月さん?!痛ぁ…。もぅ、いきなり引っ張らなくても…。それに今からいきますからそんなに急かさないでください」
「……あ、ごめん。さとり。…じゃ、私はお風呂に漬かっているから早めに来てね?神綺さんもエリスも…そして…。スター。待っているから」
幻月はゆっくりとした足取りで再び湯気の中に消えていった。
「随分と忙しない方なのね?」
「…え、えぇ。まぁ。慣れたものです。幻月と私はいわば、運命共同体みたいなものです。…どちらか片方が居なければ落ち着きません。今となっては半身みたいな感じですかね」
私はスターに私達の関係を少し話した。
話している途中、神綺が催促した。続きはお風呂に入ってからで良いんじゃないの?
それもそうですね。と返して私達は幻月が待っている風呂場へと歩むのだった。
歩いて向かっている途中スターが此方に語りかける。
「さっきの話の続きなんだけど、其処までの付き合いなら貴女の気持ちも幻月に真っ直ぐに伝えれば良いだけなんじゃない?…さとりさんは何を躊躇っているんですか?」
ちょ、直線的ですね…。
気持ちは判らなくも無いですし私自身もそうしたいんです。ですけど…
「…さとりさんは幻月様に対して心から信頼に値する人物だとは思っているのでしょう。…ですけど、やはり心の内の何処かで微量ながら不信感を抱いているんです。そのせいで本心を語られず、自らの悩みも抱えてしまったんです。その結果、前の月との戦いの際に幻月様と一悶着合ったんですよ。…判りましたか?」
エリスは私の事情をちゃんと理解した上にスターに判りやすく説明をする。
その説明を聞いたスターはふぅんと言いながら頷く。
「…さとりさんと幻月さんにそんな事があったんですね。その様な関係性、羨ましいです」
「羨ましい?」
「はい。知っての通り、私は光の三妖精の一人。スターサファイア。……ですが、今は光の妖精。つまりは私一人だけなんです。…幻想郷が出来た時に居たという事実はあるんですが、今のこの時代に居たという記録は残っていないんです」
「…つまり、スターさんはこの時代に生きていた人じゃなくて私や幻月、エリスに神綺さんに続く五人目の転生者って所でしょうか?」
私はそう訊ねると頷きを一回返してから口を開ける。
「そうね。まとめて言えばそうなるわ。転生者って言うのは…まぁ、今でも信じられないけど、目の前に広がる光景を実感出来ている時点で信じないといけないのは苦なんだけど……これでもあっちでは裕福だったから」
…。スターの中身は見た目に反して輝夜に似て非なるお嬢様って所でしょう。決定的に輝夜と違うのは頭が少し悪い所と世間知らずって所ですかね。
…妖精の悪いところとかも内側の性格すらも完全に影響されて、《スター》という存在に引っ張られているんじゃないんでしょうか?
そう言われると今の私の存在も此方に引っ張られている…?
いえ、そう考えるのならそもそもこんな関係性すらも持ちませんよ。あくまでもこれは私の意思で紡いできた絆と縁です。誰のものでも無いんです。
…いずれ《此方側の私》となるとしてもこの私が造ってきた《意思》だけは誰にも渡しませんよ。
………。
…………………。
そうこう話している内に幻月が入っている風呂場へと付く。
ついてそうそう幻月は
「さとり、それに皆。入ってよ。この湯加減はのぼせるに値しないからさ」
のぼせるに値しないとは??
入りすぎればのぼせるのは当たり前なのでは?
と思っていましたが…
チャプン…
つ、冷たっ!?…じゃない、ほのかに暖かい。
これは、お湯ってよりぬるま湯。
確かにこれはのぼせることは滅多に無いですね。
ただ、ちょっとふやけるかもしれませんが。
「うっ!?…こ、この湯加減。…確かにのぼせはしませんね…。微温湯って言うかこれは水風呂みたいなものですかね?」
「…ひゃん!?…温水プール擬きって奴に似ていませんか?!この湯加減は…」
想像とは全く違うお湯の温度に思わず声をあげたエリス。
「…う~ん。期待していた湯加減はでは無いけれど、この湯加減ならば…冷たくも逆に熱くも無いからのぼせるって事は無いかもね~。幻月の言う二次宴会も出来そうね~」
溜め息混じりで笑みを溢す神綺さんは私すら聞いていない二次宴会をやる気満々だ…ってなんですか?その二次宴会って…。
もしかしなくても、これは二次会の亜種なんですか?!
「ね、ねぇ、今のこの身長じゃ確実に頭まで浸かっちゃうわよっ!?ど、どうするのぉっ!?」
スターは入るなり身長的に自分の頭まで浸かってしまうと悟り声を上げる。
「…あ、スターは…どうしようか…適当に浮き輪でも持ってきて浮かべよっか??」
幻月はまともなのかそうじゃなくふざけているのか…笑いながら迷言を提案する。
「…お風呂場に浮き輪ってガラでも有りませんよ。それにここはプールじゃありませんしなにかを持ってくるとしてもあり得ません」
「そうねぇ~。じゃ、私が身長が小さい子用に座れる足場でも創りましょう」
と神綺さんは右手の中指と親指を合わせたかと思うとそれを勢いよく擦るようにして弾いた。
所謂、指パッチンである。
パチンッ!と気持ちが良い音がした後に微温湯の中に
スターの様な身長でも座れる足場のような椅子が現れる。
「は、早いですね…。こ、これでスターも座れますよね?」
「うん。ありがと。神綺さん」
スターはその足場に座ると
「ふーん。ま、まぁまぁの湯加減ね」
と、苦笑いで感想を述べた。
あの表情、概ね私達が考えている感情と同じですね。
…本音はこの湯加減…中途半端過ぎて疲れが取れないじゃん。
ですかね。
ん?待ってください。
そもそも、なんでこんな湯加減のお風呂に入るんです?
のぼせないためってなんのために??
すると、幻月は私達の方を向いて口を開ける。
「さて、今日は二次会もとい二次宴会。なをば人間達の裸の付き合いと夜通しの大宴会を始めるよ~!!」
…え?……は?
その、状況が飲み込めないですけど…どういう??
「幻月様~っ!待っていましたよぉ~!!」
「やっぱ、盛り上がりに掛けていたと思っていたのよねぇ~♪」
「よ~しっ♪お母さんも張り切っちゃうわよぉ~♪」
皆が盛り上がっている所で申し訳ないのですけど…私だけ仲間外れな件について…
「あ、さとり。ごめんね。私達で盛り上がっちゃって…」
全くですよ。ホント。なんて言葉にはしない。
「…いいんですよ。ただ、この勢いにはついていけないもので…つい」
「ううん。いいよいいよ。私達が計画していたヤツだから、さとりだけに伝えてなかった私が悪かったの」
「…まぁまぁ、幻月様。…こほん。…さとりさん。今日は、元人間達がこのくらい集まっているのは珍しい運命の事だと思うから、この際に私達が情報交換もとい今日の宴会で親睦を深めようという事なんです」
…要は今日の集まりは元人間達が集まって、持っている情報とかを交換しながらお風呂やら食事とかを楽しむ。
…そんな感じですか。
「ふむ。そうでしたか。まぁ、今日くらいは許してあげます。…せっかくの日に説教から始まるなんて縁起でも無いですからね」
幻月はこほんと咳払いを1つした後に口を開いた。
「そうだよね。じゃ、改めて。皆、多分知っていると思うけど最初は自己紹介から始めよっか?」
どうして自己紹介なんか…なんて思うけど、これが流儀なんです。
…今日会う人の中には知らない人もいるかもしれません。なので改めて自己紹介をする流れになるのは当然なんですよね。
「…では、私からいきましょう。…私の名前は古明地さとり。種族がさとり妖怪です。生まれた場所が、山の奥のよくわからない建物の中でして、その中に埋められていました」
次に幻月が口を動かす。
「私の名前は幻月。さとりと同じ所に生まれたの。種族は悪魔。で、持っている能力が理を操る程度の能力って所かな?……あ、さとりは話していないけど二人とも元人間なんだよ」
そして、皆は次々と自己紹介を続けていく。
「私はエリスです。出身は魔界ではあるんですが、元人間です。種族は悪魔で能力は真似をする程度の能力ですよ♪」
「私は神綺。種族は神様で出身は魔界ね?…って、言いたい所だけれど、実は魔界じゃなくてこの世界の山の奥にて生まれちゃったみたいなの。これでも元人間ではあるわ。持っている能力は、無から魔が付くもの全てを創造出来る程度の能力かしら。宜しくね?」
「私の名前はスターサファイア。種族は見ての通り妖精で能力は未知数を観測する程度の能力よ。口で言ったことは殆んど確実に実現しちゃうからあんまり喋んないとは思うけど…妖精の癖で喋っちゃうかもだから…そこは気をつけて欲しいな。…あ、忘れていたけど私も元人間よ。宜しくお願いします」
皆の自己紹介が終わる。
「さぁて、そろそろ皆でのお風呂は終わりにして二次会の夜食でも食べようか?」
と幻月は声を上げる。
「……程ほどにしてくださいよ?」
「解っているって。じゃ、夜食の準備をお願いするね~♪」
「いや、あんたもやるんだよっ?!」
と鋭いツッコミがエリスさんから響き渡った。
その後と言うものの五人で有意義な時間を過ごしたそうな…。
夜食を食べた後の事……。
「ふぅ~。食べた食べたぁ~♪」
「幻月?行儀が悪いですよ?」
私は幻月の元へと赴き外で月を眺めていた。
「いいじゃん。久しぶりにゆっくりと見る月なんだしさ。…それにいいお酒も手に入っていたし?」
幻月の手元をみるとあの日の光景が想起される。
初めて村へと降りた後に家を建てて、其処で一服した時に飲んだあのお酒。たしか…月見夜桜…じゃないですね。影彌夜桜でしたね。
あれは格別でしたが今回もちゃんと何かを用意しているようですね。
「そのお酒は…月幻燈彗!?最も珍しいお酒ですよね?!どうやって手にいれたんです?」
月幻燈彗。読み方もその存在も珍しいお酒である。何もかもが真逆な言葉ながらの味は今までのお酒とは違い、アルコール度数が60を越える異常な逸品でありながらもそのお酒では絶対に酔わない。また、何杯でもイケると噂されている伝説のお酒でありジュースみたく甘い。
その瓶から出るお酒は無尽蔵に産み出されるらしく手にいれる事が出来ればお酒に困る事がないとか言われている。
その伝説のお酒を何処で…。
ん?待ってください。もしかしなくても…
「神綺さんの能力で造ったんですよね?」
「…うん。正解。…時間はかなりかかっちゃったけど、造って良かったと思ったよ」
と言っている合間に幻月はガラスコップを二つ手に取っていた。
「ほら、久しぶりの月見酒だよ。コップ、いるでしょ?」
「…え、えぇ。ありがとうございます。幻月さん」
と私はコップを1つ受け取った。
その後、幻月は酒瓶を自分のコップにつぎ、1つ飲む。
「……んく。…ぷぁは~!美味しいぃ~!!…さとり。ほらついであげるから、コップを…」
私は、右手に持つコップを幻月にへと渡す。
すかさず幻月は瓶を傾けコップへと注ぐ。
甘く良い匂いが漂う。
私は恐る恐るコップを近付け、お酒が入ったコップを傾け口へと通す。
甘く幸せになる気持ちへとなる。
これがアルコール度数が60あるお酒ですか…確かに酔うと言えば酔いますが……。
何故か酔わず意識がハッキリとしています。
勿論、気持ち悪くなったりもせず。
ただ気持ちよさだけがあるお酒の良いところだけ取った様なモノですね。
「…確かに、凄いですね。…所で、これの、二日酔いの可能性は…?」
「…あ。…そ、そういえば、その要素があったね…」
…ちょ、このままじゃズブズブとお酒の沼へと落ちます!?
こう見えてもメンタルが弱くて、精神もかなり脆いんです。お酒の良いところを見せられたら振り切れませんよ…?!
「あの、ですねぇ…。今はなんともないとは思いますが…これからがあるんです…から…」
「…ん。…ん?…どうしたの?続きを濁らせて…思うところでもあったの?」
幻月は私の先程の言葉のつまりを不安に思ったのか此方に聞いてくる。
「…いえ。大したことじゃありませんけど…。このまま話さないのは貴女の決めた約束を破ることになりますので話します」
「…この後の事ですよ。…私自身、この後の事を考えていなかったな。って」
「んくっ。…ん、ふぅ。…確かにね?さとりの計画性的にあの時までって感じはしていたけどね?」
皮肉ですか?それ。
「…あぁ。ごめんごめん。嫌みを言うつもりは無かったんだよ。ただ、1つの事に一所懸命なさとりな事だからこの後の事を考えていさなそうだと思っただけだよ」
「それを嫌みって言うんですよ?」
「…でも、まぁ、そうですね。どうしましょうか。…今、私達は妖怪の山にいますが…未だ、妖怪の山の上司達や天狗達には報告はしていないんですよね。…楓さんには既に知られているかもしれませんけど…」
楓さんは犬走家唯一の末裔。
故あって強さも桁違い。ただ心を許した相手を守るためなら何処までも尽くす温情深い父親的存在だと私は思う。
「ならさ、明日か明後日辺りにさ報告しに行こうよ。ほら、こいしの話とかあの月からの追手の話とかさ?」
幻月は、話をしながらも瓶からコップへとお酒をついでそれを口へと持っていく。
「……幻月さん、せめて二日酔いだけはやめてくださいよ?…貴女が倒れてはパートナーとして元も子もないですから」
「…ううん。大丈夫だよ…。と言っても無駄なんだよね?仕方無いなぁ…。ちょっと待っててね?…ふぅ」
幻月は、飲むのを一時的に止めてなにかを心のなかで念じるかのように目を瞑った。
その後、1つ息を吐いた後に此方を見据えた。
「…これでよしっと」
「……えーと。何をしたんですか?」
「え?アハハ。そんな大したことはしてないよ~。ただ体の中にあるアルコールという毒を解毒しただけだよ」
「十分大したことだとは思いますが…」
此方の反応をみて幻月は軽く笑った後
「そ、そんな私の事よりも今の事だよ。どうすんの?明日、明後日辺りに妖怪の山へこいしを連れて行こうよ」
「…はいはい。判りましたよ。…さてと、ん?」
私は一瞬、誰かに見られている気配がした。
その感覚には見覚えがあった。
「…楓さん?」
と私が呟くと物陰から一人出てくる。
「…ん?あれ?楓さん?どしたの?」
幻月は気さくに物陰から出てきた楓さんに話しかけた。
失礼ですよ。ホント。
「幻月さん!?…すみません。夜遅くに。何かあったんですか?」
「良い。もう馴れたものだ。そんな事より貴殿こそ災息であったか?…最近、見なくなった…。と思っていたらいきなり此処に現れて月見をして…心配したんだぞ。…久しぶりの再会なんだ。友人に声をかけねば失礼というモノだろう?」
「そうなんですね?それは心配をお掛けしました。それで、此処へ何しに?ただ挨拶するだけでしたか?」
楓さんは、首を横へと静かに降った後に口を開ける。
「いや…。む。…そうだな。そうだと言えばそうだがな。…お前たちに1つ伝えないと行けない事があっただけだ」
「折角帰ってきたんだ。明日でも明後日でもいい。私達の上司…鬼達に顔を見せてはどうだ?鬼達も私達と同じように心配している筈だ」
確かに、あの一件の騒ぎは凄かったですからね。
知りたいって妖怪の山に住む全員は思っているでしょうね。
「そうですね。その話は先程幻月さんと話をしていたところですね。なので、明日か明後日辺りに妖怪の山の皆さんに挨拶しに回ろうと思います」
私がこう話すと楓さんは小さく首を縦に降った後に此方を見据える。
「そうだな。そうしてくれるとありがたい。時に1つ訊ねるが…あの一件は大丈夫だったのか?…いや、今訊くのは野暮だったか。…話してくれる時にお願いしても良いか?」
と質問をするもその質問を取り止めてしまう。
「…そうですね。楓さんが良いならば」
と私が返すとふむ。と呟く。
「…そうか。…ではな。さとり達。今日の良い夜を楽しんでくれ。…それと去る前にもう1つだ」
と楓さんが後ろを向きながらも喋り続ける。
「…お前さん達の妹さんが輪に入りたがっている様だが?…気にして上げるのだぞ?」
「えっ?」
私は後ろを振り向く。
その間に楓さんは闇へと飛び去った音が聞こえる。
私が向いた方向にはこいしと夢月がいた。
「………」
「姉さん。ここにいたんですね?探しましたよ」
と呆れながら夢月がゆっくりと歩いてくる。その側にはこいしがくっつくように付き添っていた。
「…こいし?…どうしたんです?」
私は夢月の側のこいしに優しく声をかけた。
「あ、その、お姉ちゃん。……。えっと、ね?」
とこいしがもじもじと話しかけてくる。
その様子をみた幻月笑いながら此方に歩み寄ってくる。
「アハハッ!さとり。こいしに付き添ってあげなよ。私は夢月と一緒に飲んでいるし、もう少ししたら部屋に戻って寝るからさ」
「え?…それは、ありがたいですけど…」
「さとりさん。…行ってあげたら?…姉さんのことは妹である私が判っているモノですから。貴女も姉なのでしょう?…つべこべ言わずにこいしに付き合ってあげてください」
と夢月から強制的に帰れと促されてしまった。
仕方ないので私はこいしの手を繋ぎ家の中へと入った。
途中、こいしは此方の方を向いて話してくる。
「ね、ねぇ、お姉ちゃん。その、ね?」
「…トイレですか?」
と変わらずもじもじして話す様子をみてトイレかと思って返す。
「ち、違うよっ!?…た、ただね?一緒に寝てほしいなぁって…」
すると、こいしは顔を赤くして少し大きな声で反論を返した。
その声は若干震えており、此処まで来るまで、半ば震えて歩いて来た事を容易に想像が出来た。
「…もしかして、怖かったんですか?」
暗闇が怖いのは生物の深層心理に焼き付いた特徴だ。
暗闇というのは自分のおかれている状況すらわからなくして人間の意識にかなり強い揺さぶりをかける。言ってしまえば、わからないものに恐怖したり嫌悪感を感じたり理解できないものを崇めたり排斥したりするものに共通している意識だったりする。
「こ、怖いっていうか…ちょっと苦手で……その、ダメ…かな?」
「いえいえ、全然構いませんよ。寧ろ、言ってくれれば最初から相手して上げたのに…」
「なんか…言い出せなくて…。それに夢月さんの事なんだけど。…私の心を読み取ってくれたみたいで、私が近くに寄っただけでお姉ちゃん達を探してくれたんだ…」
「恥ずかしがらなくてもいいのに…。こいし。後で夢月にお礼を言いにいきましょ?…今は取り敢えず、一緒に寝る。良いわね?」
私達は、こいしの部屋へと赴く。
其処には、こいしが寂しさあまりに布団からでた形跡が残っていた。
こいしはその布団に潜った。
そこから顔を出したこいしがこっちを見つめてくる。
まるで行かないでって急かすように。
なにも何処にもいかないし…
ゆっくりと私はこいしの隣に入るように布団へと体を潜らせた。
「えへへ……。あったかい」
「そうね…」
「やっぱり、二人の方が気持ちいい……」
なんとなくこいしの頭を撫でた。
こいしもそれを望んでいたようで頭を私の肩あたりに乗せてきて目を細めて嬉しい顔になる。
最初はもぞもぞしていたこいしもいつの間にか静かな寝息を立て始めていた。
上体を起こしてこいしの顔を覗き込む。
未だに幼さが色濃く残る寝顔。
無防備すぎるその姿に一瞬だけ意識が引っ張られる。
この子を守れるのでしょうか?
少なくともこの子が悲しい目に合うのだけは止めたい。
いずれ知ってしまう現実を…少なくとも…私が生きている合間だけは味会わせたくない。…私自身も味わいたくはない。……ですけど。
「過保護過ぎるのかなぁ…」
私の考えていることに呆れてしまう。
こいしの都合も考えないで守るだなんて…虫が良すぎますよね…。
この子は私の勝手なエゴの妖怪になってしまった。
そう思っているとふと馴染みの気配が…
「……さとり自身がそんな事を思うんじゃないよ」
「幻月。居たんですね?」
其処には当然のように幻月が月光に照らされて私の部屋の隅の柱に寄りかかるように立っていた。
「うん。居たよ。…さっきのさとりの独り言。心を勝手に読ませて貰ったよ」
「…趣味が悪いですね?」
「ごめんって。…でもね?そのくらい私は貴女を心配しているんだよ。だから気負う必要なんてないんだよ」
「気負う必要なんてない…ですか。ありがとうございます。幻月。少し楽になりました」
「ふふっ。良いんだよ別に」
幻月は渡しの言葉に照れながらも此方とは逆の方を向いて照れ隠しをする。
「それより、幻月。貴女、月見はもういいんですか?」
と私が訪ねるとアハハと言いながら溜め息をつく。
「いやね?夢月から説教食らっちゃってさ?…その性で興も冷めちゃって。いい加減寝ようかなぁって思ってここを通ったら、たまたま、さとりの独り言が聞こえてきたから思わず聞き耳立てちゃって現在に至るって感じかな?」
そうですか。夢月は以外と身内に関しては真面目に対応する様ですね。妹と姉思いの良い妹だと改めて思いましたよ。
「…ですけど、勝手に私の部屋に入ってくるなんて…こいしが起きたらどうするのですか?」
「だから、ごめんって。…いい加減私も寝るよ。じゃ、じゃ、さとり。良い夜を」
「あ、ちょっ!幻月っ!話はまだ…おわっ…。…はぁ。全く。言いたいことを言って帰るなんて…。好き勝手過ぎますよ」
…ですけど。
「…心配している。…ですか。…そうですよね。あのときに意気投合した相棒ですよね…判りました」
私は少しだけ覚悟を決めた。
そうして、小声で私の思う気持ちをこいしに向けて優しく話しかけた。
「……こいし。幻月にも言われちゃったけど、貴女の事が凄く大切なの。だから…って訳じゃないけど、これから先、私の我が儘に振り回しちゃうかもしれないけど…」
「……許してね?」
私の言葉が聞こえたのか定かではないが、こいしが私の体に抱きついてきた。
……暫く抜けられそうにないわね。
あのときに幻月を追う形で出ればよかったかしら?
いえ、そんなことしたらそれでこいしが起きてしまうかもしれないじゃない。
………。
私は体を再び寝かせて瞳を閉じる。
そして、意識を暗闇へと落とした。
…抱きつきているこいしの鼓動が感じられる。
ゆっくりと確実に打たれる命の鼓動。
私は…この命を守るためなら…悪魔にでも魂を売るつもりだ…。
あ、いえ。フフフ。
とっくに悪魔に魂を売ってしまったかもしれないわね?
…幻月。貴女の事もこれからもっと頼りにさせてもらうかもしれないけど…よろしくお願いね?
…でも、あの幻月だし、もしもそれが地獄へと落ちるモノだったら…ううん。関係無いわ。私はとっくに決めている幻月と私は一心同体。私が地獄へと落ちるなら幻月も地獄へと落ちる。でもって天国に行く資格は幻月と共に行動しているときからとっくに捨てている。
ただ、幻月と一緒に地獄へと落ちるならこいしもついてきそうね…それだけは嫌だなぁ…。
次の日、朝起きるとルーミアとお燐が円卓の前にぶっ倒れているのを発見した。
幻月は、嫌予感はしていたけど、まさか私の特注のお酒を飲める分だけがぶ飲みしたなぁ~?ホントバカでしょ?
と呆れ半分、怒り半分の独り言を呟いていた。
一方で神綺はこの家に住む事にしたらしく今日の朝は、この二人の看病で付きっきりになっていたそうな。
エリスは何事ですかとパニックに陥ったようでそれを夢月がなだめている様子はなんともシュールであった。
「ねぇねぇ。あの二人はどうしたの?」
「幻月さん特注で作って貰ったお酒を二人で隠れながらがぶ飲みしたせいで二人とも二日酔いで苦しんでいるだけですよ」
正直、私はこいしにこの状況を説明したくはない。
私の友人と従者が何をやってんだか。
ホント、がぶ飲みする位美味しいのは私も承知のうえですけど、どのくらい飲んだら朝まで苦しむような二日酔いになるんでしょう?
……語彙力無くなるけど、ホントこの二人は何をやっているんだか。




