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東方 夢幻界郷  作者: 聖海龍・ラギアクルス
一章.出会う二人と動き出す運命~紡ぐ絆と縁~
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012話 さとり物語の終わりと幻想少女

……。


輝夜と幻月。従者さんに先程の騒動のお陰で夢月とエリス、ルーミアにお燐が集合する形になる筈だったのですが…。


「あれ?ルーミアさんは?」


「…あぁ。ルーミアならアタイらを逃がすためとかいって囮になったよ。…多分、大丈夫だとは思うけど、心配だねぇ」

と、お燐がそう溜め息混じりで伝えてくる。


そんな大渋滞している所を冷たい視線で一閃したのは、名乗らずとも輝夜の護衛の従者さんであった。


「それで、貴女達は一体何?さとりと幻月の事は予め聞いていたから判っているつもりだけど、その他の人物は聞いていないわよ。もしも、危害を加える気があるのなら……」


左手に弓を構え私や幻月以外の人物が一歩でも近付いたその瞬間に矢で撃ち穿たんと、警戒していた。


「《その場で消滅させますよ》…ですか。…大丈夫ですよ。永琳さん。…あ」


私の事は知ってある筈では…?


と思い、つい目の前の女性の名前を呼んでしまう。

しかし、それは逆に警戒心を高めてしまう言動であった。


「…私はまだ、名乗ってもいないんだけど?…どう言う事なのかしら???」


と遂には友人である私にまで警戒を持たれてしまった。

こりゃ、手強いですよ。何があろうが姫が第一優先。

交流や私情すらも持ち込まず姫の防衛にしか眼中にない。

下手をしたら…話しかけようとしただけで私もろとも消し飛ばす所存だ。


「…はぁ。…永琳?さっきも言ったけど、私の友人やその友人に手を出さないで頂戴。素性は知らないけど、皆私の協力者よ。…それにこれからの事を考えると、この子達と友好的に接した方が良いのよ。…判ったかしら?」


「…えぇ。姫がそう言うなら。それに従います。…さとり。それに、幻月。その他の仲間達。無礼な真似を許してくれるかしら」


「いえいえ、別に気にしてはいませんよ。私だって、貴女の立場からして見れば、素性の知らない人から私の名を知っている様な素振りを見せたら警戒して当然ですし。…それこそ護る人がいるなら尚更です」


従者さんの永琳さんは、こほんと咳払いを一つすると、此方を見据え口を開くのだった。


「さとりに幻月。…多分、知っていると思うけど私からの口で改めて自己紹介するわ」


「私は永琳。…あくまでもこの土地、この地上での名前ね。フルネームが、八意永琳。苗字が八の意見の意。で八意と書いてやごころ。名前が永遠の永に光琳の琳と書いてえいりん。…そして、私の苗字名前共にこの地上では発言できない言葉で名乗っていたの。貴女達に多分、聞き取れないとは思うけど…一応月での名前を貴女達に教えるわね。私が月で名乗っていた名前は…Ⅶ฿”฿/%€£¥ね。…地上で生きる貴女達には由縁がないから判らないのも当然ね。…長くなったけど、取りあえず姫共々、宜しくね」


……。

確かに難しい言葉ですね。


ただ、先程の言葉ならなんとなく理解できました。


『やごころえいりん』


そう言っている感じですね。


…なんで判るか?

なんで皆さんは判らないのですか?


はぁ、判りました。では、皆さんが判るように…理解できる様にしてあげます。


それでも…あれって実は単純な紐解きで解るものなんですよ。


解きやすくするためにヒントを与えてあげましょうか。



貴女達の手元にあるか判りませんが、キーボードの文字配置をよく見てください。

先程永琳さんが話した言葉をよく思い出してくださいよ。


そもそも、あのままじゃ難しいですし、一部をキーボードローマ字表記のどれかにに戻す事が必然的に必要でしょうね。






え?

…難しい?


もっと簡単にして?


…はぁ。


仕方ありませんね。



出血大サービスですからね。






……なら、私が紐解いたキーボードローマ字表記を教えます。

既に私は永琳さんが話した文字列順に並べておりますので。


そのまま考えてください。





『6B"B-%ELY』





この文字配置からどうやって私は答えを導きだしたのでしょうか?



これでもう判ったと思うわよね?

答えは自分で探す事。



あなた達に出す最初の謎解きとなります。

答えがわかったらコメントとかで答えて頂戴ね?

待っていますよ。



答え方?

そうてすね。答えは謎解きの方法。


どうやったら私が導きだした答えの『やごころえいりん』となるのかを書いてほしいです。


……では、話を戻すわね。





「えぇ。宜しくお願いします。永琳さん」


と私は一つ挨拶を交わすと、お燐が言っていたルーミアさんの安否を確認しに向かおうとした所。


「…。危険よ?貴女は判っているの?」


永琳は通り過ぎる私を背に警告をする。


「…はい。たとえ私が危険に晒されても、私は…これ以上、仲間にが傷付く所を見るのも、見過ごす事も、嫌なんです」


「…貴女がそれで死ぬとしても?…もしかしたら、貴女の言う仲間の元に行けたとしても其処で追い詰められて死ぬかもしれないとしても?」


「…それは断言して違います。…死にませんよ。私は。これでも地上で死線を潜り抜けて来ていますから。窮地に陥ろうとも、必ず生きて帰ります」


その言葉を聞いて永琳は、溜め息を一つ。

そのあとに見開いたその眼は先程とは違い、まるで輝夜の事を見ているかのようだった。


「それでも行くのなら、気を付けなさい。月の兵は、目的を達成するためなら何たってするわ」


「…もしも、輝夜を月へ還す計画が達成出来ないと判断してしまったなら…恐らく、共倒れを狙ったなにかを仕掛けてくるかもしれないわ。…くれぐれも油断しない事。判ったかしら?」


その言葉を最後まで聞いた後、私はそのままルーミアさんを探しに向かった。









さとりはほんと自分勝手だよ。


誰も傷付くのを見たくないからって単独で向かうなんて…そんな事、私が許すとでも?

貴女は私。半身の様な存在なの。

なら、私も貴女の痛みを分かち合いたいの。


…ごめん。皆。


勝手に居なくなる事を、許してほしい。



私にとっては、さとりは無くてならない存在。

勝手に死なれては困るの。


「…さとり。待っていて。勝手ながら、一緒に、何処までも、付いていくから」


…私は、皆がさとりを見送っている一瞬の隙を付いて、さとりとは違う方向で合流する事にした。












「…ほら、輝夜さんと永琳さん。さっさと逃げるよ」


お燐はさとりの指示で、輝夜さんと永琳さんを避難させるように動こうとする。


「……良いの?止めなくても。あの子は貴女の主人でしょ??死なせたく無いんじゃないの?」


輝夜はその行動を目にし、驚く。


「そりゃ勿論。あたいだって止めたいさ。ただ。…アタイは信じてる。生きてかえってくるって。勝手に死ぬ筈ない。そう信じているのさ」


「そう。判ったわ。じゃ、行きましょう。貴女の主人。さとりが生きてかえってくるって祈りながら…ね?」


輝夜は、さとりの身になにかをないことを祈りつつさとりの向かう方向とは真逆の方へ、お燐の後についていくのだった。


「……はぁ。皆は気付いて居ませんでしたが…。あの幻月も居ないわ。…幻月なりの、優しさでしょうが……全く。借りは後で返してもらうわよ。…さとりを護ってやりなさい。幻月」



永琳は、いつの間にかいない幻月に気付くも、幻月の気持ちに勘づいて、誰にも教えることなく見守ったのであった。



「幻月様…。無事でいてください」


「姉さん。…死なないで下さいよ」


夢月とエリスは幻月がいないことを既に判っており、小さな声で無事を祈るのだった。






………。


………………。








「さて、ルーミアさんは何処にいるのかしら…っと」


私は、皆と別れた後にルーミアさんを最後に見たと言われる場所にいた。


「…はぁ。私と言う存在を忘れて、貴女一人で行くなんて…。らしいっちゃ、らしいけど。そんな遠慮は無用だよ。ね?」


後ろから幻月さんの声が聞こえ振り返る。

其処には、月の光に照らされて映る不満な顔をした幻月さんがいた。



「幻月さん?…どうして?…そもそも、どうやって?」


「さとりには失礼だけど、貴女に気付かれない裏ルートから追いかけたんだよ。…全く。私が気付かないと思ったの?」


幻月の表情は、不満と安堵の両方が含まれていた。


「いえ。…貴女には迷惑をかけられませんので。例え、友人でも危険な目に合わせたくないんです」


「前も言ったけど、貴女は私と運命共同体。貴女が勝手に居なくなって勝手に死んだら困るの。判る??」


幻月は多少怒り気味に訴える。


「…解りますよ。ですけど…これは私自身のエゴなんです。そんなエゴに貴女を付き合わせた結果…貴女が危険な目にあったとしても…全部、貴女の自己責任になるのですよ。私はそれで心を潰したくないしそれが何よりも重荷なんです」


私は正直に胸の内を話した。


「何を言っている訳??私はあの時、さとりと初めて会った時から今日までの付き合いだよ?貴女の我が儘だろうが、エゴだろうが関係ないよ。親友として、旧友として、相棒として…。最後までついていくだけなんだよ」


いつにも増して真剣な表情で私と面を向かって口を開く。


「…私には、貴女の相棒として、こんな我が儘を言って協力させるような…そんな資格はないと。…そう思いました。なので、あえて声をかけなかったんです。貴女には…背負わせたくなかったので」


そう。

この問題は私の身内の問題。

貴女には既に慕う仲間と妹がおり、どちらも聞き分けが良い人物です。


逆に私の身内は、少し変わった方が多いんです。

ルーミアさんはその内の一人。

それに、付き合わせる資格は無いです。


幻月は、溜め息を付いた後、口を開いた。


「ばーか。…そんな単純な友情だけで私が此処までくるお人好しかと思ったの??…そうだったら、正真正銘の大馬鹿じゃん」


「…そうだったら、私なら見捨てるね。正直に言えば私にはメリットがないね。…安い友情一つで貴女の我が儘を聞いて、私になにか利益になると思うの?」


「…私は、貴女を心の底から信頼しているの。だから、此処まで追いかけてきたの。…判る?…貴女の覚悟も、想いも、全部とはいかないけど、背負いたいの」


衝撃的だった。

見捨てたいなら見捨てれば良いのに。

何を根拠に…!


「…ですがっ!?貴女に責任を負わせるわけにはっ!」


…つい、私は幻月に胸の内の一つをぶつけてしまった。

それを聞いた幻月は、嬉しそうにその言葉に答える。


「…ばーか。…頭固すぎだよ。さとり」


…パチンッ!

突然、幻月は右手を私の顔の方に近づけたかと思いきやデコピンを丁度私の眉間の間へと弾いた。


「…痛っ!?」


勿論、避ける事が出来ず綺麗に吸い込まれ…

刹那、痛覚として痛みを感じた。

「ちょっ!?な、何をするんですか?!」


私の表情を少し楽しんだ後、笑顔で


「…少しは柔らかくして考えてみれば?さとり。…貴女は色々と深く考え過ぎているんだよ?」


意を決したかのように私に心の思いを伝えてくる。

「……本当に私を思っているならさ?私も一緒に連れていくべきだよ」


…ですけど…貴女を失いたくないんです。


私がこんな事を思っている事を悟ったのか勘づいたのけ定かではないが、幻月は目を閉じて言葉を紡ぐ。


「それとさ、さっきのさとりの想い。本気…だったんだよね?…私は嬉しかったよ、心の内をぶつけてきてくれて、私を思ってくれていたんだね?…ありがと」


目を開き幻月は此方に歩み寄る。

そして、私の右手を手に取り、話が続く。

「…でもね。私だってさとりと同じ気持ちなんだよ。貴女を危険な目に合わせたくないの。私の知らない間に貴女を失ったら…きっと多分、後悔する」


…まるで、私の心境を聞いているかの様に幻月の言葉が胸にスッと入ってくる。



…あぁ。

これを『一心同体』もしくは『気持ちが通じあっている』って言うのですね。



「…だから、私は後悔しない選択の為なら、例え貴女が嫌がってもついていくつもりだから。判った?」


…フフ。そういうことでしたか。

あの時、偶然出会ったその時から決まっていたんですね。

一生における永遠の相棒が。


幻月の言葉は後半辺りには頭に入っていなかった。

ただ、話を聞いていなくても出す答えは変わらない。



「…フフッ。やはり幻月さんにはかないませんね。完敗です。…判りました。一緒にルーミアさんを探してくれますか?」


幻月は、その言葉を待ち望んだかの様に笑顔で答える。


「ん。…。…りょーかいっ!」


その幻月に降り注ぐ月の光はまるで祝福をしている様だった。




……。



「…といった感じで、お燐さんが最後にみた場所で探してみます。幻月さんはどうします?」


私は協力してくれる幻月に今まで聞いた話とお燐が見掛けた場所、その二つの話を私なりに纏めて話した。

その上で私が捜索する予定の場所も話しておいた。


「う~ん。さとりの話を聞いた所だと…単独で探しても効率が良くないかな。探す対象がルーミアなら、そんなに離れていなさそうだし。…取り敢えず、例の場所まで一緒に行くことにするよ」



幻月の推測はやはり的を射ている。

確かにルーミアさんはフラフラと放浪する癖があってその場に留まる事は余程の事が無い限りありえない。

…ただし、それはあくまでも予測であり、ルーミアさんの性格上、標的が居るなら相手が生き絶えるまでしつこくつきまとうのが特徴の彼女である。

…もしかしたら、既に相手がこの場を離れていたならそれを追っている可能性がある為その場合はこの作戦は愚策である。



ただ、現状では把握できないものの行動しなけば判るものも判らない。

だから、これは一種の賭けだ。幻月の勘を信じて突き進むしかない。


暫く、月の光に照らされて突き進むと微かだが、

私の心を読む程度の能力と気配の力を感じ取った。

「……見つけました」


私がそう呟いた後と同時に幻月が口を動かす。


「居たよっ!彼処。夜の戸張とルーミアさんの闇のせいで見えづらいと思うけど、ほらっ!」


幻月さんは人差し指を前に出す。

その方向には真っ黒い球体が。


目を凝らして見ると其処にはルーミアさんが宇宙船の上部で寝っ転がっていた。


私は溜め息一つ吐いた。


心配したのに…期待を裏切るかのようにルーミアさんは何事もなく気持ち良く寝て…



…。

……今は、この状況における怒りなんて余裕の無い状況では沸いてこなかった。


私と幻月さんはルーミアさんに近付く。


「私達が心配しているのを余所に…もぅ」


幻月の顔を見ると安堵した表情だった。


私は呆れて重たい口を動かす。


「…ルーミアさん??…起きてください」


反応は無し。…と。

幻月は此方をみて解っているよね?っとアイコンタクトを取る。


この時のアイコンタクトを私は寝ているだけだから、乱暴な起こし方でも大丈夫。思い切りやって。って伝わっていた。


なので、私は至近距離まで近付く。

其処で幻月さんのアイコンタクトの意味が判った。

別にたたき起こせって言ってた訳じゃなかった。

…妙に血生臭い。真っ黒い球体のせいで解りづらいが、こうやって寝ていたのも負傷してしまったから。…無理して体力を減らすよりもこうして寝ていた方が体力の回復に良い筈。


だが、こうしている間に次の敵が現れたら本当に一網打尽になってしまう。此処まで敵がいないのは奇跡と言って違いない。

その奇跡が続いている間に私達が取れる選択はというと…。


「……よいしょ」

意識が無いルーミアさんの身体を担ぎ上げる事だけだ。

その様子を心配した幻月は近寄って私に声をかける。

「さとり。…変わろうか??」


「…大丈夫です。この子は私が…」


と、私が断るとシュンとなり、苦笑いで一言。


「…そう。確かに、私、少し過保護だったかな?」


その言葉にゆっくりと左右に首を振った後に、私は口を動かす。


「…いえ。違いますよ。貴女の心遣いは有りがたいですし、助け合ってこその仲間ですから。…ですけど、頼りきりってのは申し訳ないと思いました。だから…借しだと思って下さい。私に何かあったら今度こそ助けて貰いますからね?」


その言葉を聞いた幻月は、少し目を瞑った後に言葉を紡ぎだした。

「うん。判った。…じゃあ、誰も居ない内にささっと戻ろ……っ!?」


突然として幻月の言葉を遮るかの様に激しい振動が身体を襲う。

その振動の強さはまるで地震の様で違う激しい揺れだった。


「きゃっ!?」


思わずバランスを崩しそのまま船体から落下。


幻月に下で受け止められる勿論ルーミアさんも一緒にだ。


「大丈夫?」


「えぇ。大丈夫です。それよりも、と、突然何が…?」


「判らないよ。突然震動したと思ったらさとりが投げ飛ばされるように落下するんだもん。咄嗟に下で構えて正解だったよ」


貴女は、私の親か何かですか?なんて今は冗談を言っている暇なんてない。

突然起きた異常事態だ。


浮上なんて珍しいことではない筈。


なのに、異常なのはまるで勝てない敵がいるかのような…一人無双して負け戦と知って緊急撤退をしているかのような慌ただしさであった。

それも、地上にまだ月の兵士がいるのにだ。これではまるで、見殺しにしてまで逃げ延びたいと言っている様なモノだ。


「はぁ。…流石に、ルーミアさんを抱えて飛ぶのは疲労も重なって疲れますね」


「…一旦、地上に降りようか」


「そうですね」


幻月と私はルーミアさんを担いで飛ぶのは、無理があると感じ地上に降下する。


その途中、生き残っている人達が何かを叫んでいる。


刹那、幻月が突然と血相を変えて、私に大声で叫ぶ。


「…さとりっ!!!今からで良いから全力で逃げるよっ!!」


「…い、今からですかっ!?ど、どうして…!」


「文句は後から聞くからっ!!…こればかりは私でも無理っ!!共倒れしたくないから言ってんのっ!!!ホラッ!!」


今まで見たことがない幻月の焦り。その焦りが重なり不穏が漂う。


途端、宇宙船の下部ハッチが開く。


其処から筒状の何かが切り離される。



幻月さんの言っていた事はこれですかっ!?

余りにも突然。

…あれは、ここの昔に住んでいた地上の人達には余りすぎる危険な最新兵器であった。


その筒状の者が投下されたその瞬間月の兵士やら人間やら妖怪やら皆全てが逃げるように離れ逃げだした。



「逃げろっ!!」


誰かがそう叫んだ気がした。

その声で生き残っていた月の兵士が一斉に逃げたした。



宇宙船で見たサイズよりも明らかに大きくなっていませんかっ!?

全長は12メートル程あろうかと思われる巨大な爆弾が迫ってくる。



「ここを…吹き飛ばすつもりですか!?」


ここで逃げても…飛んで逃げても…どちらも巻き込まれるのはもう目に見えている。


先に逃げた幻月さんには申し訳有りませんが私は此処で、耐える事にします。


流石にルーミアさんを抱いた状態で幻月の様に逃げられるなんて夢物語でした。


焼石に水なのかもしれないが…咄嗟にルーミアさんを地面に開いた窪みに押し込み上から覆い被さるように伏せた。


これが戦車の砲撃で空いたものなのか、永琳の攻撃で空いたのかは今は関係ない。生き残れるならなんでも利用するのが今の私ができる最善の策。


効果があるかどうかは判らないが結界の様な感じに残っている妖力で壁を作った。


先程も言いましたが、生き残れるかどうかは判らないでも、なにもしないよりは良い。

これでダメなら…。最後に言った言葉が幻月にとっての最期の言葉になりますね。

…せめて最期の言葉のさよなら位、残したかったです。


『……さとりぃぃぃぃっ!!!!』


そう思った直後世界が真っ白に染まる。


須臾に近い時間、突如として幻月の必死に叫ぶ声が、響き渡る。

そして音が、空気が消えた。
















「…………あ、久しぶり~」


また、声が聞こえる。だが、幻月とは違う声。

前に夢で聞いた事がある馴染み深い声であった。

…相変わらず視界は仕事をしない。感覚も無い。


「いや~。派手にやったね。周辺に何もなくなっちゃったよ~」


なんでそんなことが判るんですかね。……不思議です。

予想としては私の身体を乗っ取って歩いているんだか…はたまた、別の理由でか…


「あ、気にしなくて良いよ~。私が勝手に予想しているだけだから」



事実じゃないじゃないんですか?…え?何?…不安にさせているだけなんですか??……えーと?なんて言えばいいんでしたっけ?


「そうだね~?まぁ、お姉ちゃんの呼びやすい名前で良いよ~」


あーはいはい。そうでしたねー。最近あっていないから忘れていました。

というか、考えている事を共有しているんじゃ、色々と面倒なんですよね。…嫌では無いですが…


「さとり妖怪なのにそんな事考えるんだね?」


私は元々人間ですよ?さとり妖怪をやってますが…ん?あれ?矛盾かなー?


「矛盾どころか、凄い滅茶苦茶だよ?それは。無意識の私が言うのもなんだけど……さ?…お姉ちゃんって、色々とおかしいよね?…相方の方も似ているけどさ?」


それって『私』自身ですか?それとも、此処にいる『ワタシ』がですか??

それに相方って幻月さんの事ですね。…意識してはいませんでしたが、確かに言われてみれば私と似た様な奇妙な関係ですよね。


「…う~ん?…それを言うならどっちもかな~?まあそんなことを言い出したら私もその『おかしい』部類に入っちゃうんだけど」



なかなか難しいものです。私自身、常識の範囲で動いているつもりなんですがねー?それとも私の常識がずれていると…?それはそれで厄介極まりない。


「そう言えば私達、何を話そうとしたんだっけ?」


一瞬だけ視界が緑色になる。完全に緑というか…波のような薄いところと濃いところが入り混じったは消えていく。海面を海中から見上げた感じでしょうか?不思議と暖かくて…落ち着きます。



「ああ、そうだった。身体の状況だった」


なんだ、そんな事ですか?どうせ、酷い状況なんでしょう?


「まあまあ、そう言わずに…。話だけでも聞いていきなさいな~」


はいはい。聞くだけ聞いておきますよ。

「それじゃ、何から話そうかな~。酷い傷のところから話そうか」


そうですね。なるべく重症なところを簡単に伝えてください。


「まずは背中かな~。肩から腰にかけて深さ数センチ程が焼け焦げて炭化しちゃっているよ。あと、左腕もかなり損傷しているから使い物にならないかもね~」



え?何それ大丈夫なんですか??どう考えてもダメそうな感じなんだけど。


「全然大丈夫じゃないよ。ただね?貴女の相方…幻月って言ったけ?あの娘が部分的に守ってくれたみたいだね。…あのままだったら右側の肺が潰れて再生が遅かったんだけど…。守ってくれたおかげで、治りが早まったんだよ」



なるほど、幻月さんが助けに……って、おいっ!!

そっちの方が大事でしたよっ!?幻月の容態は!?幻月さんが直撃を…私の代わりに半分食らったんですよね!?本当に大丈夫なんですかっ!??



「あぇ…。う、ちょ…。ど、怒鳴らないでっ…!響いちゃって痛いから!!」


おっとすみません。取り乱しました。


「寧ろさ、幻月さんが助けに来なかったら右側が潰れていたかもしれないんだよ。それにこの爆弾は致死性が凄いのによくそんな傷だけで生き残れたね?普通は跡形もなく消えていた筈なんだよ?流石は私。頑丈さでは定評があるね~。それに加えて人望も多い。誇らしいよ。私」


目の前の少女はまるで自画自賛するかのように胸を此方に見せつけてくる。

『胸』は、無いですがね。


……?

気のせいでしょうか?だんだんと視界が明るくなってきたですが…?


「ありゃりゃ?もう時間みたいだね~」



目の前で少女がくるくると回り出す。

実際は、幻覚の類いかも知らない。


そんな事を考えていたら声は聞こえなくなり、身体に感覚が戻ってくる。





そして、徐々に聞こえなかったであろう幻月の必死に呼び掛ける声が聞こえてくる。


「………さとりっ!聞こえてる!?聞こえるなら返事してよっ!!ねぇっ!!」




「…うっ。き、きこえ、聞こえてますからっ!!…い、痛た…。せ、背中ぁ…がぁ…!…そ、それに、幻月さん!耳元でそんな大声出さないでくださいっ!…痛いのも改まって物凄く痛いですからっ!」




そんな私の声に驚いたのか、幻月は目を見開いて数秒固まった後に状況を理解したのか口を開く。


「…よかった。間に合った。さとりがら途中からついて来なかったからなにかと思って戻ったんだけど、よく考えればルーミアを抱えて早く飛べるはず無かったもんね。ごめん」


幻月は今にも泣きそうな顔になっていた。

私はというと、幻月の膝枕で横になっていた。

「…すみません。幻月さん。私は大丈夫ですから。…今、立ち上がr………ゴハァッ!?」


立ち上がろうと息を吸い込こもうとするも、先程とは違い、空気が上手く吸い込めず逆に負傷した肺に繋がっているだろう気管から血が逆流し幻月さんの横で吐血してしまう。


「何やっているのっ!?さとり。無理に立ち上がろうとするから…。痛っ…!」


と幻月が思わず苦痛の言葉を呟く。

それに驚いて幻月の背中を見るとあの羽が焼けて半分黒くなっていた。

他にも、長かった髪も前より燃えて短くなっていた。服も背中を中心に所々焼けて穴が空いていた。


「げ、幻月…さん。貴女って人は…其処までして…」


「うん。判ってる。でも解ったでしょ?…こう見えて私だってかなり負傷したって。…貴女だけじゃないってね。」


「…もしかして、私が意識を失った後もずっとルーミアさんと私を守るため…??」


幻月はその言葉にコクりと頷き、目を瞑りながら話し出す。


「…えへへ。守るためとは言え…此処まで私の羽が焼けちゃうなんて今までに無かったんだけどね?…当然、飛べなくなったけど貴女が無事ならこれ位は平気だよ」



「いつつぅ…。…ふ、服は無理だけどね?私の体の一部である翼は再生で何とかなるし。焼けてしまった髪だって自然に伸びるからさとりは気にしないでよ。」


時折、幻月が痛みを口に出す。

普段はそんな事は言わないと言う事は私以上に身体に負担をかけて護ったと言うこと。


これは素直に礼を言わなければですね。


「…幻月さん。その。ありがとうごさいます。其処までして守って頂いて」


「ううん。ぜんぜーん気にしな…っう…。気にしないでよ。…もし気にするなら、これは貸しって事にしてくれない?…いつか私を助けないといけない時に遠慮なく使ってよね?」


痛いながらも此方は大丈夫だと見せつけてくる幻月。そんな様子を見て思わず無表情の私に笑みが溢れた。


「…フフッ。痛がっていますよね?そんな様子じゃ気にしないで。…って言うのも無理があるんじゃないんですか?」


「うっ。…き、気にしないでっ!って言ったら気にしないのっ!はい。この話はおしまい!!」


「フフフ。正直に話してくれた方が楽なのに…頑なですね。」


「うるさい!煩い!!そ、そんなことよりもルーミアさんが目を覚ましてずっとさとりを心配していたんだよ」


幻月は全力で話題を逸らす。可愛いと思うのは私ですかね?


「さとりっ!幻月…その、さとりは…大丈夫になったのかっ…?!」


「…うん。こうして会話する位には。…あ、でも気をつけて、まだ、さとりは…」


「さとりぃーっ!!」


「……聞いてないし」


突然とルーミアさんが此方に飛び掛かってくる。

まだ本調子でない私では避けることも受け止める事もままならない。


「…ふぐっ!?」


ルーミアさんが私に飛び付いた衝撃が左側を失った私の身体を襲う。

当然、支えきれずに私の身体は勢い良く地面に仰向けになった。


「あぐぅっ!?…ル、ルーミア、さん!?…わ、私はまだ本調子じゃないんです。そんな、い、勢い良く抱き付かれると体勢が崩れてまだ治っていない箇所にまでダメージが…。グフゥッ!?」


先程の衝撃で体の中の何処かが傷付き、口から勢い良く吐血してしまう。


「…はぁ。全く。ルーミア?さとりはまだ怪我人なの。ほら、左腕を見てよ。欠損しているでしょ??そんな勢い良く飛び付かれると支え切れずに地面に叩きつけて余計に傷を増やすだけだってのにさ…」


「…はっ!?…ご、ゴメン。さとり…。生きていたのに嬉しすぎて飛び付いてしまったのだ…」


ルーミアさんが飛び付いてきた方角から幻月がやれやれとため息をつきながら此方に歩み寄る。

ルーミアさんは、仕方無いと言えばそうですが、吐血した事に驚いたのをきっかけにこの状況を素早く理解し、私に謝ってくる。


「…いえいえ。そんな事よりも…」


意識を失う前とは違う景色が広がっていた。


「…あぁ。ここ場所ね?…爆風が一通り収まった頃にルーミアさんは目が覚めてね?さとりがヤバイと説明したらルーミアさんが運ぶって聞かなくてね?結局は二人で協力して、此処に運んできたんだよ。」


そうなんですね。私ってホント迷惑かけっぱなしですね。

そんな二人に頼るだけじゃ嫌だと思い、私は起き上がろうと上半身を起こした。


「ま、まだ動いちゃダメなのだ~!?私から受けた傷もあるのだ~!だから寝ていてなのだ~」


「…だ、大丈夫ですよ?!る、ルーミアさん?聞いてます??無理矢理寝かせようとしないでください!?逆に私の体を痛めますので~。え、ちょ、ちょ!?まって?!…いた…痛い!…痛いですからぁっ!??」


私が無理矢理寝かされるのを良くない…。

と、思ったのか…幻月はパンパンッ。…と二回両手を叩いた後ルーミアさんに制止をかけた。



「…はいはい。ルーミアさん。さとりが心配なのは判るけど…ひとまず無理矢理寝かせるのはやめてあげようよ。彼女、痛がっているからさ」


「…解ったのだ」


しゅんと落ち込むルーミアさん。

やっと離れてくれたので私は再び上半身を起こした。



刹那、私の背中からなにかがパラパラと崩れ落ちる。

幻月は後ろから、うわぁ…凄いね。これ。と声が聞こえる。

何かとは言いませんし、私自身余りいい感覚ではありませんし、何かとか考えたくは無いです。…後で、幻月さんに『なにか』を聞いておきましょう。…不服ですけど…その好奇心は押さえられませんし。


だけど、その好奇心も何もかもが吹き飛ぶ光景を目の当たりにする。

「うわぁ…。今更ですけど…終末戦争でも起こりました…?」


「…。あのね?月の軍隊対妖怪人間複合連合軍なんて本気でぶつかればこうなるって判らなかったの?」


幻月がこう言うのも一理ありますね。


私達の目の前には一面の焼け野原が広がっていた。

草木や其処にいる生物は燃え、灰となり舞っていた。未だに燃えている地面に、其処の上にある『生き物だったモノ』曰く、ぐちゃぐちゃの塊。それは一つではない。無数に等しい程の数…数えればきりがないが、凡そこの辺で黙視できる数を数えれば百単位で散らばっているに違いない。



圧巻する光景とは別に微かに臭ってくる燃料が燃える独特の匂い。



「……燃料気化爆弾、でしょうか?」


その呟きに理を操る程度の能力を持つ幻月こと、現象に詳しい幻月が口を開く。


「うーん。さとりの推測は半分当たっているかも?…この臭いとあの破壊力は気化爆弾の特徴だけど、それだけならこんなに燃え上がることは無い筈。あれは破壊にだけ特化している爆弾だと思った方が早いかな。…?…燃え上がっている感じは水素が核に?…いや、その理論でいくならある衝撃だけで起爆しても此処まで被害は広がらない筈。…。うん…。…だとするならば、これは燃料気化爆弾と言うより、互いの長所を複合させた爆弾…水素複合式疑似核燃料爆弾って所かな?」


「う、ん?…あの、ちょっと、解らないです」


私の言葉に反応し、苦笑いしながら此方に向いた。


「あ、ゴメン。えーと。あの爆弾は、記憶が正しければ核爆弾に似た爆風と燃え上がりだったけど核の様な空気汚染は無い様だから、あれは擬似的に核爆弾の様な爆風を再現をした最悪な燃料気化爆弾って訳ね?」



成る程。

解りづらいので私が知っている燃料気化爆弾の説明を含めた私なりに纏めた簡単な説明をしようと思いますね。


燃料気化爆弾の破壊力の要締は爆速でも猛度でも高熱でも無い。爆轟圧力の制圧保持時間の長さなんです。判りやすく言えば、TNT…日本語に訳せば物体としての爆薬なんですが、それは一瞬しかない爆風を起こすだけになるんですけど、燃料気化爆弾はそれを凌駕するんです。

…これをもっと簡単にすれば…。

爆風が鎮座する時間が非常に長く、全方位から襲ってくる…そういう爆弾なんです。


話は戻しますが、幻月さんが言う核爆弾は燃料気化爆弾に近い様な特徴を持つ爆弾なんです。

決定的に違うのは爆風が広がる速度が爆速な事と爆風自体が非常に高熱な事なんです。

その熱波は近付くモノやその爆風範囲にあるモノ全てを、悉く焼き尽くし灰塵と化す恐ろしいモノである。


その恐ろしさは焼き尽くすスピードとその後に大地を一瞬にして死の大地にするこの二つである。


ただ、破壊力はそんなに無い為出来るだけ離れている所で頑丈な建物に入っていれば爆風による被害はでないとか。

…勿論、それだけなら苦労しない。先程言った通り、爆風による被害の広がりが早いのは随一。…逃げる暇もなく一瞬にして焼き払う。それが核燃料式爆弾である。


…その特徴と、私の言った燃料気化爆弾の特徴を合わせれば確かに納得が出来る。



「幻月の言う事は一理ありますが…」


「ほんとのところは解らないってね」


「二人とも、難しい話はやめるのだ~。私にも判る話にして欲しいのだ~」


おっとすみません。本当にどうでも良い事を考えておりました。


体力も一応回復はしましたし、生存者でも探しにいきましょうか。


そう思い、立ち上がろうとする。


「…さとり?…もしかして、また彼処に向かう気のか~?」


「…生存者を助けるくらい良いでしょ?」


痛まない様にゆっくりと立ち上がる。身体の動きが重たい。服も背中の部分が無くなっているのか…かなり風通しが良い。というか腕の部分が支えになっているに過ぎない布切れになっていた。


「…………」


幻月はなにも言わずただ私の姿を見ているだけだった。


「…えっ?…さとり!?…無理よっ!その体じゃ…。それに…あの爆風…。流石に忘れていないでしょっ!?」


「…えぇ。忘れていませんよ」


「……なら、判るでしょっ!??あの爆風で生き残っている人がいる。…なんて、夢のまた夢なんだよっ!正気っ??」


「…正気ですよ。たとえ、たとえ誰も生き残っていないとしても…。でも、それでも…行かなくては」


ゆっくりと歩きだす。幸い足は被害が無かったのか普通に歩ける様だ。


「……。…引き留めるのは私のらしくないけど、友人として、相棒としてね?…こう訊くのは無駄だと思うけど…一応ね?……本当に"一人"で行くの??その体では、歩くのもやっとの筈だけど?」


無言で見つめていた幻月が急に私の右腕を掴み、引き留めた。幻月さんの気持ちは痛いほど判る。仮に自分でもこうしてしまうだろう。

…幻月に浮かぶその顔は呆れ半分、心配半分であった。


「…人には、無理とか、無駄だとか…そう分かっていたとしても…やらなければいけない事が…あるんですよ。…これは、私個人の…言うなら勝手な我が儘なんです。これにけりをつけておかないと…いけないもので……嫌なら、ついてこなくても…良いんですよ??」


私はこの言葉に答える。…終始俯いたまま。


幻月に似て凄い頑固だな。と思います。…誰のせいでこうなったんでしょうね?


「…はぁ。正直に言えば良いのに。…貴女が何を言おうとついていくつもりだったしね?」


幻月は観念したかの様に手を離す。


「…で、さとりはこれから何処を探そうと?」


その後、私の側に近寄り今後の提案をしてくる。

「えーと。取りあえず前へ進もうかと思います。生き残っているのなら、無差別に生きている人の心を読んでくれる私のサードアイが反応しますので」


「…確かにそうだね」

幻月が私と話し出した途端、ルーミアさんもゆっくりと歩いてくる。



「…頑固なさとりになったら何を言っても聞かないと思ったわ~。私自身気は乗らないけど…。やっぱり心配だし、さとりだから仕方ないと思う事にするよ~。…それに私も一緒に手伝ってあげるからね~」



ルーミアさんはその様子を見てため息混じりで近寄る。…そして、ふらふらの私にルーミアさんは黙って肩を貸してきた。


幻月さんなら分かりますがなにもルーミアさんまで私の勝手に付き合わなくても良いのに…。


その心情を読んだのか、幻月が私に小声でその考えを教えてくれる。


「…慕っているからこそ見放せないんだよ?…私だってそうだしね。…正真正銘、そんな貴女の事が好……」


「…。心の声は……此方から聞こえますね…」


「…うぅ。聞いていないぃ~。私の本心からの……なのにぃ…」


幻月の話は途中から聞いておらず、私は心の声を頼りに意識を集中して生きている人を探していた。

途中から聞いていなかった私はその事に対して話をする。


「…そう言えば、さっきの幻月が話していた事なんですが…申し訳ないですけど途中からお願いしても…?」


「…何処から聞いてなかったの?」


「…えーと。…慕っているから見放せない…の先からですね」


「~~~っ?!!」


幻月は突然顔を赤く染めてしまう。何か私、変なことを訊いちゃいました?


「…あの。…大丈夫…ですか?……えっとー。その、幻月さん??聞いてますー??」


「…。あ、…え。…い、いや。…なんでも、無い…よ?…大丈夫だから。…その。…たいした話は、してないからさ…あれは忘れて。…あ。…いや、やっぱり忘れないでっ!!」


…幻月さんがついに壊れてしまった。

支離滅裂になり情緒不安定になってしまった。

…どうしてだろう。私がなにかしてしまったには違いないが…身に覚えがない。

…あるとしたら…あの話の続きを話してって私が言ったその瞬間だ。


…今となっては無理な話だが…一応念を押しておこう。


「……はぁ。なら、構いませんけど。…無理に付き合わなくても良いんですからね?…勝手に帰って構いませんから」


「…そ、そんなんじゃないよっ!!…もぅ。…私が最後まで付き合うって決めた以上は破れないもん。相棒として、友人としても、戦友としてもね?…私は何が有ろうと貴女の側で見届けるから。」


と幻月は此方を見据え堂々と宣言する。

私としては少し気恥ずかしい気もしますが…


「…はい。よろしくお願いしますね?」





と言う感じで歩きながら幻月さんと和解するついでに肉や何かが焼ける臭気が立ち込める中をサードアイに反応する声を頼りに歩いていった。







先までボロボロだった体が歩いている間に回復してきたところで不比等さんを見つけてしまう。


…私自身、こうなるだろうとは思っていましたが…。


「…………」


不比等さんのあの姿からこの様に変わり果てた姿を見て、思わず絶句してしまう。

ただ、予想はしていた。

都合良く私の親しい知人だけが生きているなんて…そんな事あるわけないって…。


「…ゴホッ!…さ…さとり、それに、げん、幻月…か」


「…さっきぶりだね。……不比等さん…」


その光景には幻月も言葉にならない。

先程の爆弾でやられたんだろう。…不比等さんは、今の私の様に胴体と頭と足は残っているけど他は欠損。…服は焼け、皮膚は爛れ、無残としか言えない姿になっていた。不比等さんは辛うじてまだ生きている状態。…だが、それも時間の問題だろう。治療もこの傷の深さでは無駄な様です。




不比等さんの心を少し読んだだけで判った。


…ほんと、貴女は、馬鹿過ぎます。自らが殿を務めるなんて…これじゃ勝てない戦で自ら死ににいくようなモノですよ…なのに…アホなんですか???……命が惜しくないんですか?




「……喋らなくても…大丈夫です」


「そう言えば………そうだっ……な…」


隣にいたルーミアさんは、黙ってその場を離れる。私達に配慮しての事だろう。



今の私は、サードアイを出したままにしている。

…だから、喋るのは止めてください。苦しいだけですから


…楽にして欲しい。


…え?


「…ねぇ。不比等さん。…良いの??そんな…」


幻月が言うのも判る。

意外でした。妖怪と…それも妬み嫌われるさとり妖怪に見た目は可愛いが誰に対しても容赦しない悪魔を前にしても罵倒も軽蔑もしないとは…。

どういう神経しているのでしょうか?…それどころか私や幻月の本当の姿を前にしても、…やはり妹紅を頼むですか。


もう不比等さんは喋らない。いや、喋れないのだろう。


「《早くしてくれ》…ですか?…ほんと、最後まで頑固な人です」


「まさか、刀がこんな形で使われることになるなんて…」


一応、持ってきておいた刀を懐から取り出す。


………止めて。


「………んぅ?」



ゆっくりと刀を抜き構える。あの爆撃でも傷付かずに保っていたみたいだ。月明かりで鈍い光を放つ。



………………止めて。



「…あ、…え。ちょ。さ、さとりぃ~?」



胸の場所に刃の先を当てる。狙いは首



……………………それをしたらもう戻れない。…止めて…!



「……き、聞いてない。…あぁ。…もぅっ!!」



勢いをつける為に軽く持ち上げる。

不比等さんの感情と記憶が全てが私の脳内に入ってくる。


……………お願いだからやめて!!!



持ち上げた手を思いっきり振り落とした。




「やめてぇぇぇぇっ!!!」




「……っ」


骨が砕け散る感覚が刀を持った手に響く。

深々と刺さった刀を抜く。


もう、この人は動かない。

そこらへんの死体と同じ状態になってしまった……いえ、してしまった。後に残ったのは、不比等さんから読み取った不比等さんの記憶…忘れてはいけない大事なものだ。


ふと、隣にいた幻月を見ると目を閉じていた。

確かにあの光景は黙視できるものではありませんしね。

私がそう思い一息つこうと前をみたその瞬間、私と幻月さんの反対側にはいつの間にか妹紅さんが見下ろす形で立っていた。

あぁ…どれほど私が不注意をしていたのでしょうか。

その疑問に幻月は答えるかのように呟く。

「…なんで、気付かないの…。私は呼び掛けたのに反応も無いんだもん。…さっきの一部始終は全部見られちゃっていたよ。ほんと、何やってんの…」

と呆れる始末。


仕方ないじゃないですか…。

不比等さんの記憶の整理やらに集中しなければ行けなかったんですし…


「…な、なんで…?……して…?!」


と言い訳を言っても後の祭り。

どうするかを考えねば…



何かを呟く妹紅さんにサードアイの視線を合わせる。


悲しみ、後悔。そしてそれらを飲み込む激しい憎悪。

誰に向けてのものではなく自分自身に向かってのものだ。

それらが一気に私の方に流れ込んでくる。


一瞬、目眩がして倒れそうになる。幻月はそれを見て受け止めようとするも直後立ち直ったのを見て聞こえない程度にホッとする様子が見てとれた。

そんな事よりもこれは危険視する程物凄い憎悪だった。

こんなものを抱えていては心が壊れてしまう。なんとかしないととは思うのだが…

この状態で何か言うのは逆効果。しかも私は彼女の父親に止めを指した妖怪なのだ。

悩んでいても仕方ない。


「……恨むなら、私を…いえ、それを見届けた幻月さんと殺した私を恨んでください」


その途端に怒りの矛先は一気に私の方に向かった。

いや、なんで幻月さんには向かないの?理不尽じゃないの?

脳裏に激しい憎悪の感情が入り込み、私自身を燃やしていく。

「……っ!!」

妹紅さんの姿がぶれる。

瞬間、私は妹紅さんの右腕を顔の前に動かし向かってくる拳を掴もうとするも、それは幻月さんがその拳を掴む。


「げ、幻月さん。その役目は私が…」


「…さっき私の事も言っておきながらそれは無いんじゃないの?…此処は任せてよ」


こんな時だけ良い顔するんですから。全く。


「……で、どうする?…まだやるの?…これは私の独り言だけど…私達が確かに貴女のお父さんを殺しちゃったのは事実。…でもさ、あの状態のお父さんを生かしても…ね?…後は貴女でも判るよね?…優秀なお父さんの娘なんだからさ?」


そう問いかける幻月。

すると、その答えにたどり着いた妹紅さんは戦意喪失したかのように力が抜けたかのように抵抗もしなくなった。それを察した幻月はそっと右腕を離す。


「………。判ってはいるの。…私…は。…っ!!」


妹紅さんは何かを呟き、途端に何処かに走り去ってしまう。…最後を除いて黙りっぱなしか呟く。…いえ、ショックが大きすぎて色々と思考停止していたみたいだ。


最後、認めたいけど認めないという思念がループするかのように回っていた様だ。


…妹紅さんを止められなかった。もしくは説得出来なかった私はゆっくりと立ち上がる。

ルーミアさんは今はいないのでかわりに幻月が代わりとなって私の歩く支えになってくれている。


幻月は私が考え込んでいるのを見て独り言の様に呟いた。


「……。これは、私の独り言だけど。…この結果はさとりがどんなことをしても…私がどれだけ頑張ったとしても変わらなかったと思うよ。…潔くこうなる運命だったと諦めるしかないよ。…正直辛いけど」


…運命。

そうだと言ってしまえばその通りだ。

これはさとり妖怪としての運命。

いずれはこうなり、恨まれる事になるのは変わらないのだ。…なら、いっそのこと…誰とも…。いえ、人間に限りですが、誰とも関わりたく無くなるじゃないですか。





…やめましょう。こんなこと考えてもなにもなりません。


…取りあえず、戻りましょうか。










この惨状から離れたくて歩き出す。空を飛べばどうってことはないがまだそこまで回復はしていない。

焼け焦げた草やボロボロになった地面を踏みしめる。


他に生存者がいないかどうかを確かめるがほとんどが死に絶えているか、逃げてしまったかの二択だ。なので誰もおらずサードアイにも反応はなかった。


突然、幻月が此方に話しかける。


「……ねぇ。…なんか、いない?」


「…………?」


私は、幻月の言葉を頼りに辺りの気配と共にサードアイを使い探す。


すると破壊の後が目立たなくなったところでふと人間の気配を感じた。


「……どう?」


「…えぇ。幻月さんの勘が正しいようです。…ほら、いましたよ」


私が指を指す方向に幻月の視線を向けさせるとそこには一人の少女が倒れていた。黒い短髪、着ている服からして平民でしょう。私とほぼ同い年と言ったところです。


「うわぁ…かなり酷い怪我…見ているだけで可哀想だよ…」


それもそうだ。お腹には刺さった金属の棒のようなものが。


サードアイを使い何があったのかを探る。


…成る程。

どうやら、この戦いをこっそりと見に来た子らしい。こっそりと隠れていたがこの戦いが始まって逃げ遅れてしまった様で、その時、あの爆発の際に砕け散った破片の一部がこの少女のお腹にもろに刺さってしまったらしい。



「……あ…え。…だれ?」



少女が此方に気付いた。



私は倒れている少女を横にしゃがみこみその質問に

答える。

「ただのどうしようもない妖怪風情ですが…」



私が答えると次にその近くにいた幻月にも目を向ける。



「そ…のぉ…。そっちのおねえちゃんは…?」



幻月はゆっくりと、近寄って笑顔で答えた。


「…ん~。と…そっちの妖怪のお姉ちゃんの友達かなぁ~」



そう、幻月も答えると、途端に少女の思考が大きく変わった。

それは異常なまでの生の欲求である。どんな手段を使ってでも生き残りたいという生命が元から……いえ、この世に誕生してから持っているだろう根本的なものだ。

「……其処までして…生き残りたいんですか??」



私はそう問いかけた。助ける方法は幾つかあるが…今、この場で出来る事はたった一つ。それも、特大の禁忌とで呼べるモノである。


「う……ん…」



即答で返ってきた。それにしても不思議な子です…弱っているので全ての記憶を見ることが出来ません。いえ、この際は見なくても良いでしょう。




…この時、幻月は現時点でのこの子の過去を覗き見ていたのだった。ただ、この事は幻月以外に誰も知られることは無かったという。


「なら…人間をやめてでも生き残りたいですか?」


その問いをかけた瞬間、幻月が口を開く。


「……さとり。判っているとは思うけど…その方法は…」


「…皆まで言わずとも判りますよ。…ですけど、仕方ないと思いませんか??…貴女だったらどうするんです?」


幻月に感情をぶつけてしまう。

あ。って思った時には遅かった。


「…そうだね。…確かに。他に方法が無いよね。今の時点で…うん。ごめん」


「…判れば良いんです」


話は戻すが私が問いかけたモノは禁忌の手段である。…さっきも幻月が言ったように、私が思い付いている奴は自然の摂理に反する行いなんです。幻月が反応するのも判る。

…何故かって彼女の存在は、理という枠組み自体を、仕組みすらも良く理解している特殊な存在だからだ。

彼女なら…幻月があの子を助けるならあの少女は、幻月がと同じ種族…同じ悪魔になるのだ。


…ただ彼女は私に助けを求めている。そう考えて捉えるなら、私が助けないといけない。…もし、私がこの子を助けたならこの子もさとり妖怪となってしまう。…それはこの子に死んだ方がマシだと言えるほどの苦痛を与えてしまうかもしれない。


「……やめ……る?……う………ん…。い……いよ…?」


これも即答だった。本当にこの子は過去に何があったのでしょうか。人間を止めてでも生き延びたい理由でも……。

色々と考えてみるがなにも思い浮かばない。…別に知る必要も無いですね。




さて、本人は良いって言っていましたが私自身はまだ迷っています。

他に方法がないのか…出来れば私みたいな存在になって欲しくない。

そんななか珍しい口調で幻月が重い口を動かした。


「…何渋ってんの??……さとり。…あの子は貴女に助けを望んだんでしょ?…なら、覚悟を決めてよ。…あんな事私に言った覚悟があるなら…最後まで貫きなさいよ」


「……そう、ですね。すぅ……。…ふぅぅぅ…」


私は一つ深呼吸をする。

そして、右手に持っていた刀を自分の左腕に向けた。

駄目になっている左腕を切り落としたとしても現在は何の支障もない。


意を決し右手に持っている刀を思い切り左腕に振り落とし切断する。

刃物が食い込み、鈍い痛みが走る。


「っ。つぅ……。ぃ…。…ぇ。これ…で…」



やや重いモノが落ちる音がしてその辺りが真っ赤に染まる。

私の片腕をものともせずに幻月は拾い、私が一番楽な姿勢を保てるようなところに差し出す。


「…ほら。…手伝うから、早く」


「…はいはい。ありがとうごさいます。…よっ。…と」


幻月のサポートのおかげで楽に私の片腕を小さく切り刻める事が出来た。


いや、片腕を切り刻むとか…普通に考えて頭おかしいとおもうが…

いや、今はそんな下らない事を考えている暇なんてない。



さっきは説明しなかったけど…私達があの子の事を同じ種族に…って揉めていたと思う。…貴女達に判りやすく言えば、眷属化…もしくは同族転生。…そしてそのまま言うなら同族化と言います。

よくファンタジーと呼ばれる世界で《眷属》という言葉を聞きませんか?

…眷属と言うのはですね、世界やその場所によるんですが…その殆んどが《元人間》である事。

そして、《眷属》となった人物は《眷属元の種族》に生まれ変わってしまう。

それが眷属という意味ですね。


…そして、私達がやろうとしていることはまさに、あの少女を眷属化をさせようとしている事となにも変わらないんです。


…私がやっているこの行動もちゃんと意味はありますよ。


…人間を妖怪にする方法は二つ。…一つは、赤ちゃんの時から強力な妖怪の元に一緒にいさせることでその妖力を纏わせる事。…これは、時間がかなり必要なものの極めて自然に育って妖怪化する為、自然の摂理にはギリギリだが反しない。もう一つが私がやろうとしている直接妖怪の肉を食べる事である。これは、時間をかけずとも直ぐに妖怪になる為楽ではあるが、問題は、元となる妖怪の肉を食べればその人間も食べられた元の妖怪の種族になってしまうことだ。これは完全に自然の摂理から反しており、種族に関しても逸脱していると言える。


そんな知識を披露したところで細かく食べやすくした私の片腕の原形がない私の肉を彼女の口に押し込む。

少し位は躊躇してもよかったのですが、躊躇しているとまた、幻月さんに渇を入れられそうで申し訳なくなるので、ここは一思いに一気に押し込み楽にさせる。


「…はぅっ!?……あぁっ!?ぐ…ぅう…」


口に押し込んだ肉を飲み込んだ少女は少し苦しそうに唸る。

直後、体に変化が現れ始める。


髪の色が少しずつ変化し刺さっていた棒が逆再生のようにゆっくりと肉体から抜けていく。足首と変色した髪の毛のところから青い管がそれぞれ生えてくる。

それらが胸の真上にきて大きな塊を作った。



因みに妖怪の肉を食べたからって完全に妖怪になる訳ではない。半人半妖となった少女はその反動からか気を失ってしまっていた。


「…どうなるかと思ったけど、無事に成功したし…安心かな」

幻月が見守るなか無事に私と同族化に成功した。


「…そうですね。…取り敢えずはこの子のことも連れて帰らないと…」


そう私が答えると


「…ん~??さとり~?同族作りをしたのか~?」


と空中から声が聞こえる。

見ると黒い塊が浮いていた。もう其処まで回復しているとは…流石です。


「…結局、ただの自己満足ですよ。無責任なんて言うなら、この子が回復してからいくらでも聞きますよ。…なので…今は胸のうちに秘めておいてください」


闇が少しずつなくなり、その場に金髪の女性が現れる。


「いいや。別に文句なんて無いのだ~。さとりはなにも間違っていないのだ~」


間違っていない…ですか。

確かにこの世界正解なんてないですし、何が善くて何が悪いのかなんて、明確な定義が存在する訳無いですからね。


あぁ…憂鬱だ…。




気絶している少女を肩に担ごうと左腕を差し出そうとするも、その手は虚しくも空を切る。

あ、そうだった。自分できり落としたんたった。



「…すみません。ルーミアさん。この子を運んでくれませんか?」


「……う~ん。それも良いけど、今回は幻月に頼むのもいいんじゃない~??」


そうルーミアさんが言うと


「…まぁ、判っていたけどね。その代わりルーミア?…貴女は万全に近い状態なんだから私が辛そうにしていたら、ささっと手助け位はしてよね~?」


幻月はそう言い切り、半妖と化した少女をまるでお姫様抱っこするように持ち上げ、逃げるように走る。


「え、えぇ~っ!??ちょ、それは無いのだぁ~!?」


ルーミアさんは、突然と無理難題を押し付けられた様ですかさず幻月さんを追いかけ始める。


「……フフフ」

私は自然に笑みが溢れていた。


…背丈が私と同じ位の幻月さんが、私の記憶よりも少し大人な女性のルーミアさんをからかって遊んでいる様はいつみても微笑ましいですね。まるで姉妹みたい。


それでも判ることといえば、この世界は残酷。


…ただそれだけである。

《おまけEXエピソード》

【好きという言葉とは…?】


現在の状況…

半妖に、なった少女を連れて帰る道中…

此処までで交代交代で半妖少女を担ぐ側と偵察側に別れてルールに切り替わり現在はルーミアが回りを先に偵察に行った直後である。

その時、さとりと幻月と二人きりになっている状態にあった話


さとり「幻月。ちょっと聞きたいのですが…」

私は、幻月から振られた際に聞いておらず結局切られた話。


私が気になっていたあることを聞いた。


幻月「なに?さとり」


さとり「あの時、私に言いかけた言葉。教えてくれません?

少しでも良いので…」


その言葉を聞いた瞬間やはり顔を赤く染め上げる。

それも今度は沸騰する夜間のごとく湯気が出そうな勢いでだ。


幻月「~~~っ?!!…あ。そ、い、いい、けど…?」


…しかし、今回は、幻月から話を切ることはなくあの話題について話そうと意を決めた様であった。


さとり「ありがとうございます」

素直に礼を言い今度こそ真面目聞こうとする。

幻月「よ、よよ、良く聞いてよ?…私は、貴女の事が…す、好きなの…」


幻月はこう言葉にした後に恥ずかしさのあまりに顔を押さえていた。


…ん?あれ?思った以上に《普通》の事でしたね。


さとり「はい?…それだけ…なのですか?」


幻月「…う、うん。く、くだ…下らなかったでしょ?わた、私の、その、告白は…」


恥ずかしそうにいう幻月を前に私は、正直にその告白の答えを言った。


さとり「……いえいえ、私の事を此処まで好きでいたなんて…。私を慕うお燐やルーミアみたいですね。勿論貴女も好きですよ?」


すると私の言葉を聞いた幻月は、さっきまで赤くしていたのに一気に冷めた様に冷たくなる。


そして何故か怒り始めた。


幻月「……。はぁ。違うなぁ…。もぅ。駄目だ。やめね。やっぱり、同じ性なら…そうなるよね…。…ほんとなんで気づかないかなぁ…この鈍感妖怪はさぁ…」


…えっ?

私、何かやりました?


さとり「???」


そんな混沌とした中でルーミアがなにも知らずに帰ってきた。



ルーミア「帰ってきたのだ~!……ってどうしたのだ?二人とも?何があったのか~??」


雰囲気がルーミアさんが行くときより悪くなっているのを見て不思議そうに訪ねる。



幻月「なんでもない!!ほら、ルーミア。任せたよっ!!」


勢い良く立ち上がり、幻月はルーミアに言葉をかけた後に回復した翼を使い飛び立ってしまった。


「さとり?なにか幻月と、あったのか~??」


さとり「いえ?なにも?強いていうなら好きという告白を受けて、私のお燐とか貴女のようなルーミアさんと同じくらい好きだって伝えただけですが…?」


するとルーミアさんは、思い当たる節を見つけた様であきれため息を一つついて呟く。


ルーミア「…ふぅん。そう。なら、幻月が怒るのも当たり前か~。いつもはカッコいいのに、これに関しては鈍感とか…。さとりが真の意味で好きになった人…御愁傷様だわ~」

と憐れみの目を此方に向ける。

全く訳がわからない私はルーミアさんに聞いた。

さとり「え?ルーミアさん??それって…」


しかし、ルーミアさんはそっぽを向いて私に口を開いた。


ルーミア「知らないなら勝手にすればいいのだ~。そもそもそれは、他人からじゃなくてちゃんと自分から気付ける様にするのだ。…判ったならさっさと行くのだ~」


と、ルーミアさんにも怒られ呆れ、最後には見捨てられる形で移動を再開する始末である。

…うーん。どういうことでしょう。

私はその謎を解き明かせずに帰路についたのだった。

まだまだ、さとりの常識外れにおける苦悩は尽きないのであった…。


…………END

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