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東方 夢幻界郷  作者: 聖海龍・ラギアクルス
一章.出会う二人と動き出す運命~紡ぐ絆と縁~
13/34

010話 さとり物語 決死防衛~始~

煌びやかに部屋へと満ちる月明かり。

私達は妹紅の父親の藤原不比等に帰り道を塞がれ捕らえられると思いきや、いきなり歓迎され招待された。

勿論、断るなんてしたら私達の身がどうなるかなんて解っちゃいないので縦に振らざる得なかったです。えぇ。その後は、幼い頃の妹紅と一緒に遊びましたね。

遊んだ後に私達は流石に燐達が心配で帰ろうと思いましたがそれに釘を刺すかのタイミングで泊まっていけと……これも断れずに流れるまま行くままに、食事をとり、現在時刻おおよそ夜の1時辺りでは有ると思いますが…なにせ時計というものがないので勘と皆の現在行動と月の位置で確かめる他有りませんので。

そうやって時間を浪費しつつこれからの事を考えていました。

…相変わらず親バカの不比等が考えたのか…それとも私の考えすぎなのか…。

私達を挟んでの布団に妹紅が真ん中を陣取って寝ている…えぇ。川の字になって寝ると言って大丈夫ですね。まぁ、状況は何一つも変わりありませんけど。


…眠れない。


私は、ぐっすり寝ている妹紅に悟られない様物音たてずにそっと布団を抜けて月明かりが入ってくる縁側に座りました。


サササッ……

流れる風がすすきのほを軽く撫でるように揺らす。


心地好い風です。では、少しだけ考えにふけりますか…


……。

…………。

………………。



暫く青白く光る月をボーッと見て、ふと考えていました。


……流石にお燐達が心配です。…お腹すかせていないかしら?等…これだから母と呼ばれてしまうのかもしれませんね…。


…そう思いにふけっていた矢先に、月光照らされる縁側からゆっくりと…ある人物が顔を出した。

「…物音がするなぁ…って思っていたけど…なんだ、さとりも起きてたんだね?…おそよう?」

私は目を丸くした。先程まで寝ていた筈なのに。


真相を確かめるべく幻月が今も寝ていると思っていた布団を見た。

流石に夜で良く見えない上、暗がりだったのでじっと目を凝らしてみないといけませんね。


………。


それで、結論を言うともう既に抜け出ていたただの膨らみに違いなかったのだ。


「…いつの間に、と言いたいところですけど今は問いません。そして、今の時間帯はおそようと言うべき時間では有りませんよ。正しくは、”まだ”こんばんは。です」

「えへへ。そうかなぁ?…こほん。冗談抜きにして」

幻月か空咳を一つして本題を口にする。

「さてと。さとりはなんでこんな時間に起きたのかなぁ?」

「…それはですね。…やっぱり気になってしまうのですよ」

「…さとりの事を慕うお燐やルーミアの事で?……ぁ、いや…まぁ、深くは追求はしないよ。私だって私の身内の妹が心配なんだからさ。そりゃ眠れないのも当然だよ」

幻月が今までにない弱音を吐いていた。普段なら笑い飛ばす筈なのに…

……。

何を其処まで、妹の夢月の事すら話にでなかったのに。

さとりは悟ってしまった。

心を読まずとも私は分かってしまう。

さとりには幻月の気持ちが、何となくわかってしまった。

幻月自身が口にしていたが、それ以外の事で眠れない事だと。

「……藤原不比等さんの事ですよね?悩んでいたのは。物語に綴られる人物でありながら幼くして父を無くし未来永劫と輝夜さんを恨み続け生き続ける人間となる。…そんな未来が在るから…出来れば止めて幸せに暮らしてほしいけど、どうすれば…と」

「……」

幻月はこの答えを持っていないようだった。


「…図星ですか」

「…うぐっ」

「…ふふっ。心は読んでいませんよ。ただの私の推測ですから。気になさらず」

私は軽く笑い私の真意を伝えようとする…


「『私もそう悩んでしまって眠れなかったのです。…どうせだったら私と貴女で考えてみません?この暇で静かな時間にてね?』……って、提案しようとしてたでしょ?」

「……なぜ判ったの?」

「アハハッ!ほんとだったの?…良かった。……なら私の勘も捨てたものじゃないね」

「勘?…心を読んだと同じ事をしていますよ。…貴女は紛れもなく。私が言おうと思っていた事を全てそのまま言われちゃいましたから」

幻月の能力は理を操る程度の能力。

常識外れな事象を起こすのも容易く簡単で何よりどんな能力でも、まるで自分の能力だったかの様に完全に使いこなす事も可能であるのだ。


「だーかーらー。心なんて貴女から読むことは不可能なんだって。現に貴女からの干渉は無効化している事だから、それの応用を貴女もやっているでしょ?」

「…はい。否定はしませんよ。私が貴女の心を読む事が出来ないように私だって貴女の能力の干渉を拒否してますし事実その通りですよ」

「だったら、からかわないでよ~」

「すみません。長年の付き合いって事で…」

「…んぅ~。はぁ…しょ~がないなぁ~。親友仲って事で許すよ。不本意だけどね」

「…フフフッ」


心を読まなくても長年の付き合いの勘って言うなら私にもある。例えば先程のふざけあい。相手の冗談に乗ってあげたり、からかってあげたりと…多種多様だけど同じ気持ちが一つだけある。それこそ同じ目的が在るからだ。【平和な日常】それ一つだけが目的である。


………。

……………。


下らない話に花を暫く咲かせた後、幻月が切り出した。




「…ふぅ。んじゃ、本題、いこっか…て言われても、その提案はさとりが行おうと思っていた事だと思うけど…お燐達の様子を見に行きたいんでしょ?」

「えぇ。そうですね。あのまま放置はなりませんから。せめて朝食やら夕食やら、置き手紙位は、しないといけないと思いますから。…私が、もし人間らしく生きていくなら…ですが」

「…。…さとりのそういうところ…正直言って結構好きなんだよね。私」

「茶化さないで下さい!」

「ゴメン。ゴメン。でも、早くしないと夜も更けちゃうよ?いかないの?」

それは一理ありますね。このまま幻月の流れるままの話術に乗っかればあっという間に朝が来てしまいます。

「…全く。話が上手いんですから。行きますよ?幻月。貴女も行くつもりだったんでしょう?」

「流石、旧友は話が判る。…何てね。無駄話している余裕は無いよ。早くしないと妹紅ちゃんにバレちゃうからさ」


妹紅ちゃんって言っていますけど、この時代の妹紅はまだ幼く、無垢で父親も失っていない、小さな女の子をしている方の妹紅ですね。


「…そうですね。…では、行きますか」

意を決した私はそっと立ち上がり、妹紅の父親の屋敷を背に後にした。幻月も同じくゆっくりと私の後に続いて出たのだった…。




…妖怪の山。


…さとりが建てた小さな小屋。


…お燐達が寝ている頃…恐らく午前一時半辺り…。


ようやく私達の家に到着です。夢月さんは…やはりいないですよね。あそこで泊まり込みで華扇さんの修行を受けていますよね…。


……問題は…エリスさんがやっぱりいましたか…幻月さんの帰りを待っていた感じですね…。

…幻月の表情を見ただけで、今、思っているのか一目瞭然ですね…

『空気読んでよ?この馬鹿。煩くしたら承知しないから!!』

…って感じですね。要は今、物凄く呆れています。


「はぁ。もう、仕方無いかぁ…。エリスぅ~。静かに此方来て」

幻月がエリスへ声をかけると

「…っ!幻月様!お帰りなさい!!…!?……ぁあ、すみません。声は静かに!ですね。申し訳ありません~…」


一時はどうなるかと思ったけど、エリスの優秀さは身をもって知り得ます。ただ、狂信みたいな感じなので…たまに暴走して手のつけられない状態になる事が多いですけど…少なくとも私以上に家事全般、前もっての準備や先を読んでの行動がとても上手いので事実頼りになる秘書の様な者だ。


「大丈夫だよ。エリス。今日は私達が帰ってこれないかもしれない事を悟ってお燐達の世話をしていたんだよね?」

「はい。それはもう滞りなく。お燐様達のお世話を陰ながらしておりました。…まぁ、そうしている内に今の時間になってしまった訳なんですけど…」

お燐達が寝ている場所を見ると整理整頓や散らかっている物は毛布以外に無い。食器も綺麗に洗っていて洗濯物も無い。…私達が帰ってきた意味とは……??

「うん。悪くないよ。寧ろ嬉しいよ。私。さとりがさ…心配してた訳なのよ。お燐達の食事や何やらしないと、いずれ大変な事になるし、お燐達も心配して此方まで来るかもってさ」

「…そうなんですね。それは大変でしたね。幻月様。ですけど、幻月様達が帰ってきたのにも、意味あったんですよ。心配しない様に置き手紙するんでしょう?私ではそう筆字を真似るとかだけは誤魔化せませんし?…ではお願いしますね?さとり様」

そうエリスは言うと、手元が暗くならないように、魔力を使い妖火を作り出した。明るくも程々に明るい炎の為、寝ているお燐達を起こさない工夫をしている様だ。

「…エリス。貴女は幻月の事を心酔して信頼しているようですけど…何処がどの様に…って質問しようとしました…でも、さっきの幻月さんに尽くす様子を見ただけで判りました。…貴女に取っての幻月は、先輩であり、家族でもある。その上、完全に一目惚れした大好きな彼女…の様な存在……なんですよね?」


「…はい。さとり様の言う通りです。私の生まれは魔界です。…しかし、同じ存在である筈の幻月様は外の世界の……。それも、類い稀なる能力と実力を兼ね備えて生まれてくると。私にとっては一生に一度の衝撃でした。誠心誠意、真心込めて私の全てをかけて死ぬまでお供致します故。……本人にはまだ早いと、当時言われてしまいましたけどね…?」



それでも、幻月がはっきりと言わない事は凄い事ね。

面倒な事ははっきりと断るし、馬鹿正直に図星をついてくる性格さとその裏が見透かせない程の腹黒さを持っている。それが私の友人の幻月である。

…だから、その時に『まだ早い』ではなく率直に『ついてこなくても良い!』とか、『…ふざけているの?』とか『私は一人で十分だから。…貴女かいると目障りだし戦いの時守らないといけないからかえって邪魔』…と。

…そう言わないって事は、エリスに対して微かな信頼をおいているという事になる。


そうね。一応、エリスと幻月との関係性について触れておきましょうか。


そもそもの話をしましょう。

悪魔はそもそも群れる事はなく単一個体で競いあって弱いものは死に絶え、強いものは伝承として生き続ける存在。判りやすく例えると私達の種族、妖怪がこれに該当します。その存在が妖怪以外の人々に伝わって有る限り、半永久的に生き続ける事が可能な種族なんですよ。まぁ、例外としてその伝承に寿命の概念や人としての概念があると永遠とは生きませんが……。

話を戻しましょう。


悪魔という種族は生まれるにしても妖精とほぼ同じなんです。生まれる条件が整った環境にて自然発生する個体血縁のいない種族と言われているんです。

更には妖精の様に一回休み…(…まぁ簡潔に言えば死んでも暫く日が経てば何事もなく復活する意味ですね。)…という感じでは無い為、死んだら其処までという訳です。で、その代わりに最初から力が強く並大抵の的なら返り討ちにも出来る種族ですが。

当然、力が有るということは仲間意識は無い様で同族を見かけたら殺しあいで生きるか死ぬかの二択しかないが悪魔の日常な筈です。

こういう習性をもつのが『悪魔』という種族ですので、その性格と性質上、殺すに当たって、あらゆる手段を用いて、同族を不意打ちで殺したりするんです。

そうすることで殺した悪魔から力を奪えるので無限に強くなれるんです。

…その習性を端からみれば野蛮と言われても仕方ないですし、言われればそれまでですね。


なのに、エリスと幻月には悪魔なのに人の心という物が備わって生まれた珍しい悪魔である。

(幻月は経緯が私と同じだから判りきっているが、一応だしておくことにする)

…だから、その二人には僅かながら同じ経歴という気配あったのだろう。

あの時に幻月が語ったその物が事実ならそれが結果的に今こうして私達の家族として縁を結べたのだろう。

…こういう感じの関係性を幻月が私に語ったときは衝撃的だった。


あの出来事を私なりに判りやすく語りましょう。






実は、当時のエリスの力は人並みではあった人間相手なら兵士だろうが陰陽師で有ろうが圧勝する程ではあるが、魔界に住む他の悪魔達に勝る力は全くもって無かったそうだ。

(…不確かかだが、あの当時の様子と魔力から察すれば力的には幻月を除いて全て悪魔すら近づくことすら許されないオーラが出ていたのは私でも幻月でもきっと解っただろう)

『エリス』は幻想郷という形というシステム上を良く理解出来ていなかったのでは無いかと私は推測する。原理的にもあっちとこっちでは姿形やイメージが全然違う。力有る悪魔=人型で女性系。更には知性と会話も出来るのに殺戮することしか頭に無い狂人という事が

エリスの心に鋭く刺さったのだろう。

まぁ、前世の記憶的に人を殺める事が出来ない純粋な善人だったのだろう。

殺す所を見る事も理性的に終わっておりたまたまそこを通りかかった幻月へ藁へすがる様な思いで……その上実力も無いと嘘をついてでも此処から逃げたくて必死だったんだろう。


…そこを通りかかった幻月がお馴染みの勘で…そのタイミングで同じく、自分と同じ経歴を持つだろう同族の気配を感じ取り、刹那両者共に振り向いた先にいたのが幻月及びエリスだったという訳だ。



……………。




目と目が合う~♪…その瞬間………♪




…違う違う!?


今の何?!…突然、謎の歌詞が頭の中を掻き回したんですけど!?


…何処かで聞き覚えがある歌だけど今はそれじゃない。


エリスは偶然通りかかった幻月に一目惚れ。このお方なら私を認めてくれる。同じ志を持つだろうから住む家もある筈。だから、一緒に連れていってくれる。

…と、エリスは幻月の胸へと飛び込んだ…っ!



………………。





ender~!year~!!





…じゃなくてね!!?


…だから、何なの!?さっきから!

頭の中を乱して…もぅっ!なんの歌詞!??


さっさと解説しておきたいのにすんごい邪魔!!




…はぁ。はぁ。はぁ。


なんで解説でこんなにも疲れないといけないわけ…。


……。

…………。

………………。



…ふぅ。落ち着きました。

…話を戻しましょう。



胸へと飛び込む勢いで飛んでいったエリスは、幻月に容易く避けられる。

エリスは

「どうしてかわすんですか!?」

と異議を唱える。

幻月が反発して

「出会ったばかりで初手で胸に飛び込む馬鹿はないでしょ!?…切羽詰まっていたとしてもね!考えても今のは行為は貴女が初めてだよっ!!」

と声を荒あげる。

エリスは急に冷静になって「それもそうですよね」と納得。

幻月はこう思った

「…。(なにがしたいの?この悪魔)」

エリスは続けて

「無礼を承知でお訊きしますけど…貴女が好きになりました!付き合ってください!!」

幻月が間髪いれずにこう突っ込んだ

「素直!?というより話の繋げ方下手か!??普通ならそういう好き嫌いの話じゃなく、例えばついていきたいです。とか、少しの間だけでも話を聞いてほしいですとかさ…」

幻月はもうこの時点であぁ。こいつやだぁ。ヤバい奴だ。関わったらろくでもない事になる。そう悟った…が、助けないとという精神が勝った為…


「…はぁ。仕方無い。良いよ。私の所へ来る?」

幻月はため息混じりにOKを出したその瞬間にエリスの目が一瞬にして輝き出す。

「へっ!?い、いい、いいんですかぁ!??ホント!?ホントについていっても??」

「ついてこないなら勝手にしたら?…その代わりついてきたなら私の指示にちゃんと従って貰うからね?」

「はい!精一杯お世話させて貰いますねっ♪」

「私は子供じゃないし!!」

「言葉の文ですよ?真面目に捉えないで下さいな」

「貴女の情緒不安定差に真面目に捉えない様にするのが至難の技だよ……」



…………。

………………。

…………………………。





…という感じの流れでやってきた訳なんですよ。

それからというものエリスさんとは優秀ながら狂信者に。それからというもの…幻月様と呼ぶように。

…幻月からは『常に此処にいないで何処かで修練を積んできて』と言われてからは、エリスさんは何処かにいつも行くので今日この日まで会っていませんでしたが成る程、この辺りの時間帯に帰ってきていた訳なんですね。



「…えーと?…其処の布団で寝ている方は…?」


朝早く、その暗闇の中に見えた私の知らない人物。


ルーミアは以前から居候としてたまに来ることは判っていた。


エリスは、私達が帰って来たのを確認した後に朝食の下ごしらえを行いに向かったのだった。

夢月は、メイド修行から帰って来ていたようで今も眠っていた。

そして、問題の毛布にくるまっている人物。


「…。…さとり、様ぁ~」


寝言で私の名前を…本当に誰なんでしょう?


幻月は何かに気付いた様で


「あ。さとり。…アレって…」


そう指を指す方向を見ると…


彼女は全身裸で眠っていた。




「…うわ、痴女…」



と、ボソッと言ってしまいました。


それを聞いていていた幻月は


「…その気持ちは理解できるけど…。今は其処じゃないよ。そもそも、私が指し示したのは、そういうことじゃなくて、布団の隅っ!!…ほら、気付かないの?」


え?どういうことでしょう。

布団の隅って言われても…見えるのは裸…



「ねぇ、さとりって鈍感なの?それともそういうキャラ演じてる??…言わないと判らないかなぁ…。この娘、お燐だよ。…ほら、二又の尻尾が布団から出ているじゃん」


…え。


……。

ぁあ。判りました。幻月の指の先をよく見てみるとその先は布団の端、見え隠れする尻尾を差していました。


そう。

幻月に促されたのは裸じゃなく布団の隅で揺れ動く尻尾の様なものだったのだ。


確かに、尻尾の形と色はお燐ですよね。


「…ほら、お燐。起きてください」


私は声をかけているお燐だと思う人に起きるように揺する。


「うぅん。…もう少し、だけぇ…」



焦れったいですね。


でも、こういう感じで朝が苦手な所こそお燐である証拠なんですよね。



一体何時から…?



そんな疑問が後を立たないが…。


「はぁ。仕方ありません。起きないなら…布団を剥がして…」



…バサッ!!


お燐の布団を剥がすと裸で有ることが丸見えである。


お燐は、剥がされても動じることなく、目を開けこちらを見ると欠伸を一つ。


「おはよう…。さとりぃ…」


寝惚けているのがなんとなく判る。


まだ眠いのか頭の先の耳がペタンとしている。


「えーと。その。起きた所で申し訳ないのですけど…その。…服、着ませんと…。目のやり場が…」


裸なのは理解はしていたが、こうも間近でそれを見ると逆に疲れる。



「…ぇ。…あれ?…あたい。何時から人の姿に…??」


戸惑っているお燐。

その声に反応したのか、眠っていた筈のルーミアや夢月が起きる。

また、作業していたエリスもその声に釣られて集まってきた。



「んぁ……?朝からなんなのだ…??」


お燐の隣で寝ていた彼女は、何時も通りの通常運転の嘆きから始まった。彼女を覆っていた闇が段々と晴れていき、寝癖で金髪の髪が布団から起きあがった。


その姿を見た私は思わず


「◯子!??」


「ルーミアよ~っ!?◯子って誰なのだ~!??」


と叫んでしまったがルーミアに即突っ込まれた。

この役目は殆どが幻月さんがやるんだけど今回はルーミアさんの方が早かった見たいね。


「今の時代でも判るネタにした方が良いよ?…私は判るし、エリスもそのネタは判る。でも今を生きる人物には少々判らないネタだと思うよ…?」


…今回は、マジレスで訴えてきた。

幻月さんのこういう所、嫌いじゃないんですよ。



「ふぁ…。…この声…?姉さん?…何時から?」


「あれ?夢月、起きちゃった?…もう少し寝ていてもいいのに…」


私の謎過ぎるネタにマジレスで突っ込んだ声に反応して夢月がゆっくりと起きる。


寝惚けた眼に酷く目立った寝癖一本。


それはまるでアニメのキャラの様な感じであり、感情表現をこなしそうな…。


「いいえ。姉さんと久しぶりに会えたんです。此処で眠ったら後が怖いですしね」


…寝癖の髪が動きました。

どうやら本当に感情につられて動くみたいです。

さっきまで伏せていた寝癖が一気にピンと真っ直ぐにたったところが見えました。


本当に見れば見るほど原作と違いますね。


元々こんなキャラじゃ無い筈ですが…


「後が怖いって…。少しずつ思っていたけど、夢月。…ヤンデレ化してない??」


「……???…その。やんでれ?…って何ですか?…私は何時も通り平常運転ですし、前も今も変わっていないと思いますが…」


「十分変わっているよっ!??じゃあ何!?シスコンっ!?」



…あっちはあっちで苦労しそうですね…。


「どうしました~?…皆さん、何かあったんですか~??」


朝食の仕込みの為にキッチンにいたエリスは、この騒動を心配して駆けつけてきた。



その様子をみたエリスは


「…皆さん、朝から元気ですね~。…異常じゃないと思うので、取りあえず仕込みに戻らせて頂きます。…皆さん、どうかごゆっくり~」




いやいや……。

…明らかに異常だとは思いますが、面倒事はごめんなので黙っておきますね。




エリスは、さっさと仕込みの準備に取り掛かった。





なんやかんやあり、取り敢えずお燐に服を作った。


ゴスロリ風の服を。

黒と深緑をベースにレースのヒラヒラをつけた。


それが似合うも何も。

原作そのままの服装に。

…意図してはいないんだけど。





そんな事はさておいて、私は夢月さんとルーミアさん。そしてお燐さんにあるお願いをするのでした。


「あの。ルーミアさん。お燐さん。そして夢月さん。お願いがあるのですが…聞いてくれませんか?」


「ん?なんだい?そんな改まって。大抵のお前さんの事なら何でも聞いてやるよ」


お燐は、人型になって初めての髪を整えながら此方の話を聞いていた。


「はい。…あ、姉さんからの事情は大体聞いておりますよ。なので、さとりさんの話の内容は大方予想できております。…聞かなくても協力いたします。」


夢月は、幻月から話を聞いていたようで即断で協力してくれるようだ。


「なんなのだ~??面白い事とか美味しい物が食べ足られるなら喜んで協力来てやるのだ~。まぁ、違っても内容によっては何でも協力してやるのだ~。感謝してよ~??」


ルーミアさんは、わりと協力的ではありけど、同時に心配でもあります。


……何でもかんでも食べたがる癖が出てこないか心配です。




「えー。こほん。…改めて、私の我儘に付き合って貰っても良いでしょうか?…月の人が今夜地上に来てかぐや姫を連れていこうとするので…その、その報酬は払いしますので…」


「何いってんだい?さとり。アタイは、お前さん達についていったその時から運命共同体なんだ。今更断るなるざないよ。その月の人がなんだい。さとりがやるってんだ。アタイも腹を括ろうじゃないか」


「……お燐」


「私はとっくに信じているから。…言ったでしょ?貴女は私の半身。二人は一人。…本来は夢月に言う台詞なんだろうけどね。さとり。月人の防衛に付き合ってあげる。感謝してよ~?」


「……幻月」


「姉さんが否定しないなら私も同じく賛成です。そもそも、さとりさんにはお世話になっている身なんです。恩返しの為に私も人肌脱ぎますよ」


「……夢月さん」



「なんだか良くわからないけど、さとり~?私も手伝うのだ~。さとりにはお世話になっているのだ。困っているなら手伝うのは当たり前なのだ。…嫌と言っても着いていってやるのだ~!!」


「……ルーミアさん」



「お話は全部聞かせて貰いました。幻月さんやさとりさんの為。私もお手数ですが、お力になりますね。…役に立つかどうかはわかりませんが、精一杯頑張りますねっ!!」


「……エリスさん」



この場にいる全員が私の我儘を聞いてくれた。

…感謝しかない。



「…皆さん。ありがとうございます。…恩に着ます。…味方が増えた所で早速ですが作戦会議です。私と幻月が知っている月人の特徴と驚異を教えますね」





私は今夜攻めてくるだろう月の人の戦闘技術を出来るだけ教えた。

勿論、輝夜の言っていた知識を含めながら。



「……まぁ、こんな感じですね。月の人の特徴は」


「…凄いなぁ。月の人ってのは」


「感心している場合じゃないって。…この絶望的な戦力差はどうするかを決める話し合いでしょ?」


「いえ、機械ならともかく月人ならなんとかなるかもしれませんよ?」


私は純粋にそう思った。


月に住む人間と地上に住む人間。

元を辿れば、同じ人間。


技術力が凄いが思考は全く変わることがあり得ない月人と、技術力はあんまり凄くない物の発想力の爆発で機転を利かせて窮地を乗り切れる人間。


別に私達には全く問題もない『人間』だから。


「ふぅん。確かにですね。…機械をどうにかしちゃえば、肉体の月人でも私達の攻撃には耐えられないって訳ですね」


エリスがそう訪ねるので私は首を縦に降った。

それを見たルーミアは


「んー?要は月人は人間と同じだから乗っている奴を落とせば食べられるって事?」


「ルーミアさん。その理解で大丈夫何ですが…そもそもその機械って最新を超越したモノなんですよね?…どうしたら良いでしょう?」


夢月の疑問は最もだ。


落とせば勝てる戦いだがそう簡単にはいかないのは現状だ。

下手をしたら此方が負傷だけで住まない傷を受けるかもしれない。


……でも。


「そうですね。…もう、そこは行き当たりばったりでどうにかするしか無いです。最低限言えることは、隙をついてその機械から落とせば勝機はある事と、機械は一つだけじゃない可能性もある。…現にあり得る数値としては百は越えますから」


皆は私が言った言葉に、溜め息を一つつき


「まぁ、さとりの何時も通りの作戦って事だねぇ。やったことない事を指示されるよりはマシってことさね」


「…その方がさとりらしいよ。さて、決戦の為の準備をしよっか。今夜の戦、絶対に勝つぞぉーっ!!」


「「「「おぉぉーっ!!!」」」」



私を差し置いて幻月が掛け声一つをする。


「私の事も忘れないで下さいね。それと、皆、命は大事に、ですよ。危険だと思ったりダメだと思った時点でなりふり構わず逃げてください。それがどんなに大事な親友が死にかけていてもです」



これに、関しては本気だ。

…誰も死にはさせませんし殺されません。

死ぬのを見たくも無いですから。



「…フフッ。それは、お互い様だよ。そっちこそお人好しのせいで庇って死なないでよ??」



幻月から釘を刺されてしまった。


…仕方ないですね。全く。


「…では、輝夜姫のお屋敷に集合です。…あぁ。場所はというと………」





皆に輝夜姫の屋敷の場所を教えた後に解散となった。


集合時間は余裕を見積もりもって日が傾き始める前半辺りに。


真っ暗になって月が現れたら戦いが始まると思ってと言う言葉を付け加えて。





時刻、おおよそ3時。





「……そろそろ、皆が集まる時間ですかね?」


珍しく私一人で輝夜姫の屋敷の入り口で待っていた。


其処へ…


「あ、いたいた。さとりさ~ん!!」


「そんな大声で叫ばなくても聞こえるから。エリス。…さとり。今の時間通り…で、大丈夫だよね?」



黄色く長い髪をしており、其処には星形のヘアピン一つ。顔には赤い星形のペイント。赤と白の服を来ており、悪魔らしい翼を持ったエリスと白い翼を広げた幻月の姿が。


「えぇ。大丈夫ですよ。二人とも。貴女達が最初です」


「良かった。…あ、良かったのは時間通りだったって事ね。時間感覚たまに狂っちゃうからあってないときって在るんだよねー」


エリスと幻月が一番。


次に来たのは珍しい黒い球体。


じゃなく、ルーミアさん。


「ぶはー。来てやったのだ。…で、問題の件は何処なのだ~?」


「いやいや。私、言いましたよね?月の使者が来る前に集合するって…」



「???…聞いていないのだ~?」


「はぁ。まだ、来てません。暗くなってから来ますのでその間暇を潰して下さい……っていったんですけどね」


ルーミアさんは相変わらずですね。


「そーなのかー??でも、来てしまったから、しょうがないのだ。待ってやるのだー」


ルーミアさんが一番遅れるかと思いましたが…まさか来るなんて…。


そう思っていたら。


「お。やっぱり思っている事は同じだったようだねぇ?夢月?」

「…そうですね。…お燐。まさか私と同じタイミングで集合時間につくなんて。それも」


「さとりに暇時間もなんだから、いつも世話してくれるお礼にと饅頭とか、団子とか買ってきたんだが…」

「まさか、私の様に何かを送ろうとするなんて…私は、姉さんの為に煎餅とかビスケットを作っていましたけどね。」


「へぇ?…今度、作り方を、教えて欲しいなぁ。さとりの為にさ」

「良いですよ。ついでにその饅頭とか団子の作り方とかも教えましょうか?」

「いいのかい!?…ありがとう。これでますますさとりに尽くせるってもんさ」

「私も同じく姉さんに尽くせるなんて、光栄ですから」



何やらあっちで盛り上がっていますが、夢月とお燐も無事到着ですね。

それにあの袋。


私は幻月に目を合わせる。

それに気付いた幻月は此方を見た。


それを見てからの夢月達を見るように私の首を夢月達に向けた後幻月に振り向く。


何かを察した幻月は。


「…あはは。何か、私達に対しての好意が何処か違う気がする。…のは気のせいかなぁ…??」

気のせいにすればその通りですが…

「…幻月さんの考え。恐らく合っておりますよ。……これから何処かで妹が生まれるのを考えれば…同情します」


「…こいしね?…貴女には妹が今の所いないようだけど…どうなるんだろうね?……東方原作の歴史は」

「さぁ?知り得ませんよ。行き当たりばったりです。未来なんて予測なんて出来ませんから」

「それもそうだね」


私達が雑談に花を咲かせてると二人が駆け寄ってきて袋の物を此方に手渡してくる。


「仕方ありませんね。ルーミアさんもエリスさんも幻月さんも一緒に食べましょう。私だけでは、食べられそうにありませんので」

「私も同感。…夢月。良いよね?そもそも此処で暇をするから食べて待とうと言う意図だから作ってきたんだよね?…こんな量は食べられそうにないし、一緒に食べようね?」



こんな量、私一人で食べられる訳ないですから。


時間が来る時間まで夢月が作ったきたお菓子とお燐が買ってきたお菓子の両方を味わいながら今後を思うのだった。



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