虚ろな鏡
来なかった。
待ち合わせた君は来なかった。
来れなかったと知るまで君に弄ばれたんだと恨んだ。
恨んだ分、君を恨んだ自分が疎ましかった。
あいたい。
あいたい。あいたい。
約束さえしていなければ君は今も生きていただろうか?
君を恨んだ僕が君に逢いたいと思い続けるなんて僕が許せない。
あいたい。
あいたい。あいたい。
僕の中にのこる君のカタチをひとつに詰めていく。
君の姿を模した二次元に君を詰めていく。
あいたい。
あいたい。あいたい。
虚ろが僕を見る。
僕を嗤う。
おまえじゃない。
あいたい。
あいたい。君にあいたい。
君の顔で嗤うおまえじゃない。
にせものめ。がらくため。
きえろ。
消えろ。消えろ。
消え失せろ。
あいたい。
あいたい。あいたい。
おまえじゃない。
わかっている。理解している。
虚ろな偽物。
僕が詰め込んだ想いの、記憶の残骸。
僕が生み出した偽物。
お前は嗤って『かみさまのおっしゃるとおりに』と消えた。
君の顔で声で『かみさま』と呼ばれるのが苦しかった。
『大好き』も『ちゃんとご飯食べて眠って』と君の会話データを再生した偽物に吐きそうだった。
苦しい。苦しい。
罪深く逃れられない泥沼に沈んでいるのは僕だった。
つくることができたのならもう一度同じものがつくれると僕は思っていた。
僕は歩き出せない。
ただひたすらに君に囚われ、君を縛り付ける愚者。
君を詰めたデータの箱を維持するために深夜バイト。
消えろ。消え失せろと思うのにそのための一歩が踏み出せない。
あいたい。
あえない。
僕は君にふさわしくなく堕ち汚れてしまった。
虚ろが僕を見る。
鏡がそこにある。
誰にも見守られず寂しくおわる。
それは僕にふさわしい。