第7話 転落人生
今回はゼト目線です。
「ここ、どこですか勇者様!」
「多分、森」
「いや森なのは見ればわかるんですけど」
マルホ騎士団の人がきたあと、私たちは騎士団の方々を振り切って大森林の方向へ逃げてきた。
そして絶賛迷子中である。
もう、何が起こっているのかまったくわからない。
訳がわからないですよミサトさん。
「もぉぉぉ、どうして私達がこんな目に……」
「うむむ……あ、そういえばシェリノ……シェリノ? あれ?」
「どうしました?」
勇者様の困惑したような声を聞いて、前をむく。
「あれ?」
シェリノさんがいない。
さっきまでいたはずなのに。
まさかモンスターに?
焦り始めたそのときだった。
ブルルルル、ブルルルル……。
勇者様の通話機が鳴った。
「もしもし? こちら勇者」
「ククク……どうだそっちは?」
通話機の向こうから聞こえてきたのは、邪悪な気配を帯びたエグゼさんの声だった。
勇者様もそれに気づいたのか深刻そうな顔になり、言った。
「誰だお前は……」
どうもこの人は、他人の声を覚えるのが苦手らしい。
「勇者様! エグゼさんですよ!」
「ああ! エグゼか! どうしたの?」
勇者様は納得したようにエグゼさんに話しかけた。
「あ、ああ。ククク……今頃お前は処刑台に送られている頃だろう……」
「いや逃げたけど」
「……まあいい。どちらにしろ俺が自ら痛めつけるつもりだったからな。むしろ好都合だ」
「それより戻ってこいよ。ゴーレムいなくて大変なんだよ」
現状、ゴーレムどころの騒ぎではないと思う。
「それは無理な相談だ、クソ勇者。今から媚びたってもう遅い。お前ら全員、スキル覚醒した俺に殺される運命なんだからな! お前らのその無様な逃亡も俺を怒らせちまったからだ! ざまあみやがれ!」
ブチッ!
……そこで通話は切れた。
確か、エグゼさんの家は王国の有力貴族だと聞いたことがある。
そこのコネを使って私たちを陥れたのだろうか。
スキル覚醒というのは……なんだろう。
先日のガグルとかいう大精霊と何か関係が?
「うーん、どう思います、勇者様?」
「映画だったらアイツこのあと絶対死ぬな」
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逃げ続けて数日。
気がつけば私たちは廃村のようなところへやってきていた。
「なんだろうね、ここ」
「うーん、それより勇者様、何か大事なことを忘れている気がするのですが……」
「忘れるってことは大したことじゃないよ」
「そういうときに限って大したことな気がするんですが」
なんだろう。早く思い出さないと本当に不味い気が……。
とそのとき、近くの草むらからワサワサと大きな音がした。
「なんでしょう、今の音」
「ちょっと待って……あれは……人?」
草むらの方に見えてきたのは、なんと人影だった。
こんな大森林の奥に人が暮らしているとは思えない。
だとすると人型モンスターか?
果たして、その姿は人間によく似ているが、半液体状の体を持ったモンスターだった。
「勇者様、あれは……」
「ゼリー人間だ! タイムマシンは完成していたのか!」
「いや今シュタゲ関係ないでしょ!」
「じゃあなんだ!」
「ヒューマンスライムですよ! スライムの人型の高位種です!」
私たちの前に突如現れたヒューマンスライム!
その本性は一体……!
つづく!
……あれ、そういえばやっぱり何か重要なことを忘れているような……。