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第4話 大精霊のガグルさん

前半はエグゼさん視点です

「許さねぇ……」


 暗い森の奥。

 勇者に捨てられた俺は恨み言を口に出しながら歩いていた。


「殺す……殺す殺す……」


 力を得なければならない。

 どうする?

 考え、進む俺の前に人影が現れた。


「力が欲しいのか」


 誰だ?


「ここの森を管理する大精霊の一人、ガグルだ」


 俺はなにも口に出していないのに会話が成り立っている。

 俺の思考が読めるのか?


「ああ、そんなことは簡単にできる。……それよりもだ。強い殺気を感じた。復讐したい奴がいるんだろう?」


 いる。

 勇者だ。

 できるだけ苦しめて、生まれてきたことを後悔させてやりたい。


「フフフフ……いい、いいぞ……。私はその感情が大好物だ。気に入った。貴様に力をくれてやろう」


 早くよこせ。


「まあ、そう焦るな。すぐにくれてやる」


 ガグルがそういった瞬間、視界が暗転した。

 直後、なにもない空間に投げ出される。

 すると、どこからともなく声が聞こえてきた。


「そこは私の作った亜空間。外と比べて、時間の流れが極めて遅い。……そして実時間で1時間、しかし体感時間では半年、そこから出ることはできない。半年の間は、最強クラスの魔物による蹂躙が行われるだろう。せいぜい耐えてみることだ。耐え切ったとき、お前は力を手にし、最強となる。そのときにまともな精神が残っているかはわからんがな。フフ……フフフフ」


 その言葉を聞いても、俺の心にはもはや迷いや焦り、不安はなかった。

 魔物を倒し、勇者に復讐するという意思だけが俺の体を支配していた。


「ククク……必ずあのクソ勇者の人生を終わらせてやる……」



☆ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー☆



「やばい、終わったかもしれない」


 魔導通話機を耳に当てて、勇者様はそう呟いた。


「どうしたんですか」

「起動しない。やっぱこの前風呂で使ったときに壊れたのかも」

「なにやってるんですか」


 勇者様はうーん、うーんとしばらく唸った後に、指先で通話機をいじり、もう一度耳に当てた。


「お、ついたついた」

「まったく人騒がせな……」


 どうやら何かの魔法を使って修復したようだ。

 直せるなら最初から騒がないで欲しい。


「で、エグゼさんにはなんていうんですか? 戻ってこいと?」

「いや、ゴーレムだけよこせと」

「うーわ、最悪だこの人……」


 しばらくすると通話がつながったようで、勇者様は満足そうに話し出した。


「えーと、もしもしー? こちら勇者です。エグゼですか」


「エグゼはいない。いるのは私、ガグルだけだ」


「…………」


 通話機の向こうから、知らない男の声がした。

 それを聞いた勇者様はしばらく黙り、私の方を向いて言った。


「どうしようゼト、エグゼがゴーストバスターズ に出てきた門の神みたいなこと言ってる」

「誰がわかるんですかそのネタ。それより勇者様、よく聞いてみてください。今の声はエグゼさんじゃないです」

「え? マジで?」


 勇者様が再び通話機に耳を傾ける。


「えーと、ガグルさんでしたっけ? どうしてエグゼの通話機に?」

「いかにも、私は大聖霊が一人ガグルである。エグゼとやらは今……おっと、ちょうど目覚めたようだな」

「は?」

「すぐわかる。楽しみにしているがいい」


「……えーと、はい。今から待ちきれない気分です」

「フフフ……そうか。それはよかっ……」

 ブチッ、ツー、ツー、ツー。


 ガグルさんが話し終わる前に、勇者様は電話を切った。

 そして、言った。


「ゴーレムは無理そう」

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