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第3話 勇者様はプライドがない

勇者パーティの魔法使い、ゼトちゃん視点です

 夜の道を歩く。

 森の中で今にも魔物が襲ってきそうな雰囲気だが、実はこの辺りは見た目の割に安全なことで有名である。

 近くにウシサン王国が仕掛けた結界があるからだ。


 そんな中、横を歩く勇者様を見て私はため息をついた。


「ハァ…………」

「ん? ゼト、どうしたの?」

「いえなんというか……本当に良かったんですか」

「なにが」

「あの人……エグゼさんを追放したことですよ」

「いやぁ……まぁ……」


 私の話を聞いて勇者様は困ったような笑ったような、要するにいつも言い訳をするときの顔をしながら空を見上げ、言った。


「だって、あいつ笑い方キモいし……」

「いやまぁ、それは否定しませんけど」

「言動もキモいし」

「それも否定しませんけど」

「汚いし」

「それも否定しないんですけど! そうじゃなくて、戦力の話ですよ!」

「うーん」

「まったく……」


 ここで一度説明しておくと、私たち「勇者パーティ」は、迫り来る魔王軍や、他国からの侵略に備えて、ウシサン王国が設立したものだ。

 聞いた話によると、他の国には他の国の勇者パーティがあったりなんかもするらしい。

 そんなパーティのメンバーは勇者様と私、それとエグゼさんだったのだが……今回、勇者様はエグゼさんを追放した。

 エグゼさんは小太りの中年男性で、なんか偉い人の息子らしい。

 スキルは「精霊使い」。

 その名の通り精霊を操る力だ。

 精霊魔法まだ研究が進んでいない分野で、基本的にはエグゼさんのスキルは弱いと世間では噂されているのだが。


「勇者様、エグゼさんのスキル使ってだいぶサボってたじゃないですか」


 そう、何を隠そうそのスキルを一番便利に利用していたのは勇者様だ。

 果たして、勇者様の返答は、


「え? ……うん。まぁ……なんとかなるでしょ」

「……そうですかぁ?」


 自信のなさそうな返事に、イヤな予感しかしない。



☆ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー☆



「たのもーーー!!」

「なんで自宅に道場破りしようとしてるんですか……」


 私たちはウシサン王国王都にある勇者様の屋敷に帰ってきていた。


「おかえりなさいませ、勇者様」

「ただいま、シェリノ。相変わらずいい脚をしてるね」

 ……勇者様のセクハラを華麗にスルーしているのは使用人のシェリノさんだ。

 シェリノさんはメガネをかけたクールビューティーで、実家はちょっとした貴族だったりするらしい。

 勇者様と一緒にいると、周りが偉い人ばかりで困る。

「にひひ」

 人のことを言えない笑い方をしながら勇者様は奥の部屋に入っていく。

 私とシェリノさんもそれに続いた。


 部屋の中はそこそこ広い空間に机や椅子が置かれた仕事場で、勇者様は1番奥の机に、私はその横に座った。

 そう、仕事場である。

 この言葉の意味するところは、勇者様の仕事は基本的にここで行われているということだ。

 私たちが座ると、シェリノさんが勇者様に近づいた。

 それを見た勇者様が、ご機嫌そうに聞く。


「シェリノ、この前出した『勇者の時間術 〜時間から自由になる方法〜』の売れ行きはどう?」

「はい、そちらは好調です。近いうちに重版がかかるでしょう。このあとはオンラインサロンの講演ですが……」

「ああ、大丈夫。えっと……今日のゲストは確かカモメポストの……」

「はい、バードルさんです」

「そうだそうだ。かわいい子だといいなぁ」

「バードルさんは男です」


 ……今やっているのは勇者様の出している本についての確認と、この後ある講演についての打ち合わせだ。

 そう、勇者様は現在、ビジネスによって戦わずして大儲けしている。

 では肝心の魔物退治はどうしているのかと言うと、エグゼさんの生成したゴーレムを使っている。

 つまりはエグゼさんが追放された今、勇者様自ら魔物を倒さねばならないわけで……。


「勇者様」

「ん? どうしたのゼト」

「魔物退治はどうするんですか。もうエグゼさんのゴーレムはいませんよ」

「あー」


 私の疑問に対し勇者様は、

「私がやってみよう」

「え?」


「いくぞぉ……。出てこいゴーレム! はあああああっっっ!!」

「え?」

「どりゃぁ!」

「え?」


 勇者様は頑張って魔力を注いでいるが、特に何も起きない。


「……無理だ。よし、エグゼをよぼう」


 勇者様はプライドがない。

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