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生前と変わらぬ世界と愛情表現

ピロロロロロー


なんの声だろう?虫かな鳥かな、兎にも角にもその声で目覚めた。


「今何時だろう?時計がないからわからないな」


とりあえず、住む場所も食べ物も、もう一つ言うなら悠のお下がりの服も、衣食住が揃った!凛は生まれて初めて、衣食住の喜びを知った。人間とは不思議なもので、衣食住が揃うと、気持ちに余裕ができてくる。昨日は気にしなかったことが、だんだん気になってくる。

見た所、感じたところ、時間の流れや、気温は生前の日本そのもの、少し肌寒いので早朝かな?開いた窓からは心地よい風が吹き、コスモスの花を思い出すような、調和の良い青空が広がっていた。二階の部屋のおかげか見晴らしがいい、家の前方には羊や牛、あれは、鶏小屋だろうか?そんなものがあったり、窓の向きである右側にはいくつかの種類の野菜が規則正しく植えられていた、黄緑の丸っこいのはキャベツかな?ネギのような縦に長い緑の葉、あれは多分玉ねぎ。よこにあるサツマイモみたいな葉は、なんだろう?季節を考えればじゃがいもだろうか。


「懐かしいな」


しばし、朝日差し込む畑を眺めながら、おじいちゃん、おばあちゃんに教えてもらった野菜のことを思い出していた、生前、家で栽培してた野菜は今どうなってるんだろう、枯れちゃったかな、多分そうだな、悪いことをしたな。なんて思っていると


バン!


ものすごい勢いでドアが開いた。


「なんだ凛、もう起きてたのか、意外と早起きだな、今日は天気がいいから羊の毛を刈るぞ、夏に向けてな。凛は俺を手伝いな、悠の近くには置いとけねぇ」


そう言うとすぐ、灯は回れ右をして階段を降りていった。降りたあたりで、凛が付いてきていないのに気づくと


「おい、凛、いつまで部屋にいるんだ、早く降りてこい、飯食うぞ!」


と、大きな声で叫ぶ。飯を食うと言うことは、朝ごはんができているってことだから、悠も起きてるんだろう、なら大声出しても大丈夫!自分の部屋を出ると灯に負けない声量で


「すぐ行きます!」


と叫ぶ。途端に奥の部屋が荒々しく開きバン!と音が響く


「お前らうるせーですの!」


ナイトキャップをかぶった闇が、声を張り上げる。すると凛の隣の部屋の扉がまた、バン!と大きな音を立てて開く


「あなたたち、いい加減にしなさい!近所迷惑!家畜もびっくりして起きちゃうでしょ!それに、バン!バン!バン!バン!家が壊れる!もっと静かに閉めなさい!」

「はい、すいませんでした」

「悪かったよ、悠」

「ごめんなさいですの」


灯は気づけばまた、二階に戻ってきていた。

シュンとする三人、でも心の中で、近所に人住んでなくない?家畜はもう起きてるんじゃない?悠だって扉思いっきり開けたよね?バンは三回だったはず。などと、同じことを三人同時に考え、そして、誰一人口に出すことはなかった。


「よろしい、それじゃあ、少し早いけど、朝ごはん作るね」


そう言って、悠は小さくあくびをすると先に降りていった。あくび姿に、これまた、三人同時に可愛いと心の中で叫んだ。

今更だが、悠が起きてないのに灯は一体どうやって朝ごはんを食べるつもりだったんだろう?もしかすると灯が自分で料理作るつもりだったのかな?灯の料理は見たことないが、あまり美味しくなさそう。

聞かれたら、殴られるなと思った。




・・・・・・

結局、朝食をとるまで、闇と灯は。


「お前のせいで怒られたんですの!」

「最初に大声出したのは俺かもしれないけど。闇が大声出した後に悠が怒ったんじゃん、とどめさしたのは闇でしょ」

「なにを、屁理屈を言ってやがるんですか、この低脳!」

「うるせー、チビ!」

「誰がチビですの!」

「お前以外いないだろ?」


などと、言い争っていた、凛に怒りの矛先が向かないのが不思議なぐらいだった。


「料理ができたよ、闇運ぶのお願い」


悠の声がすると、いつから持っていたのか、闇が光った杖を軽く振る。料理が乗せられた皿が空中浮遊して、食卓テーブルに乗せられた。乗せ終わると、闇はいたずらっぽく笑い。


「これで、また悠の役に立ったですの」


と、灯を挑発、また、喧嘩かなと思ったものの。


「幼馴染で、生まれてからずっと一緒にいる私から、闇に助言してあげるよ、悠はそんなことで人を推し量るような人じゃありません」


と、自慢げに話す。そこからはまた口喧嘩だった。こう言う会話を聞いていると、闇と灯はつくづく悠のことが好きなんだな、と思った、思いながら、まるで生前読んでいた百合漫画のようだな、もしかして、この状況は運がいいおかげか?などと考えたりもした。そんな口喧嘩を見ていると


「あの二人、また喧嘩してる、よく飽きないよね」


悠が凛の横に立つと、いきなり悠が現れてビクッとした凛に向かってごめんねと小さく呟いた。


「闇と灯って仲いいんですね」

「うん、いつもああして言い合ってる、あの二人にとってはある種の愛情表現なのかなって思ってるの、私は。そろそろ止めてくるね、朝ごはん食べよ」


良い話だな、なんて、しみじみするのもつかの間、灯から、早く食えと、急かされた。


コスモス(桜色)の花言葉は調和、乙女の純真


凛たちの住む家の扉はめっちゃ頑丈、部屋の位置関係は言葉で説明しづらいが、二階は廊下につながる形で手前から闇、灯、悠、凛である、階段は闇の部屋が一番近い。


ナイトキャップ闇は普段より少しかわいい

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