表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/50

悠と濁音

日も傾きかけてきた頃。凛は一階のリビングらしき部屋でもてなされていた。といっても、緑の棒状の野菜だけ。皿を置くと美少女は対面して席に座る。


「まだ自己紹介してなかったね、私はゆう、この家で、今は出かけている2人と一緒に暮らしているの、少ないけど家畜とかもいる、私は畑担当だけどね。どう、凛?少しは落ち着いた?」

「うん、ありがとう、さっきはみっともない所を見せてごめん」

「みっともない?なんのこと?怖い思いして泣くのは当然のことだと私は思うよ、何も恥ずかしがることなんてないよ」


そう言いながら優しく微笑みかける。凛はもう一度抱きしめたい衝動に駆られた。


「凛は野菜好きかな?これ、私が育てたやつなんだけど、良かったら食べて、嫌いだったら無理して食べなくてもいいから」


幸いなことに、凛は特に嫌いな食べものはないので、ありがたくいただくことにした。


「美味しい」


味は明らかにアスパラガス、オイスターソースか何かで味付けをしてあるような味だった。


「そう、それは良かった、これはアスハラカスって言う野菜なんだけど知ってるかな?今が旬なの。今はこれで我慢してね、もう少ししたら2人が帰ってくるから、そしたら晩ご飯にしましょう」


アスハラカス?なんだその、丸と点々取った名前は。


「まだ聞いてなかったけどあなたどこから来たの?」

「えーっとそれは、なんというか、地球ってわかりますか?それの日本って国から来たんですけど」


悠が不思議な顔をする、そりゃそうだ、この星は異世界なのだろうから。


「ちきゅう?ちぎゅう、の言い間違いじゃなくて?にほん、というのは、にぼん、のこと?」


何を言っているんだ、悠は。さっきから濁点と半濁点がめちゃくちゃなような。


「えっと、ちぎゅう、って何ですか」

「ちぎゅうは、この星の名前、にぼん、は、昔あった国の名前」

「えーっと、アメリカ、ロシア、イギリス、インドって国の名前聞いたことありますか?」

「少し違うけど、アメリガ、ロジア、イキリス、イント、って国なら昔あったはずだよ」


なるほど、と、凛は思った。どうやら、この世界は国名など固有名詞の濁音、半濁音がめちゃくちゃなようだ、昔は、というのも気になるが、まあ、新しい言葉覚えるよりはずっと楽だからいいか、イキリスって、イキってるリスかな?


「すみません、やっぱりどこから来たかわかりません」

「どこか行くあてはあるの?」

「ありません」

「そう」


少ししょんぼりする凛を見ると悠は机に手をかけ、立ち上がった。


「凛、私たちと一緒に暮らさない?いろいろ手伝ってもらったりもするけど、それに」


悠は凛に近づき手を取ると、微笑みかける


「凛はなんか危なっかしくて心配になる、魔力もないみたいだし、また、狼に襲われたくないでしょう?」


あっ、と気づくと、悠がバツが悪そうな顔をする。


「ごめんなさい、冗談でも言ってはいけないことだった」


凛は手を離すと悠に抱きつく。


「大丈夫です、悠さんのおかげでもう落ち着きました、迷惑かもしれませんが一緒に暮らさせてください」

「もちろん」


耳元で優しく言葉が響いた。二本のバラのような、そんなイメージの匂いが鼻をつついた。

ハデスは最弱は運がいいと言っていた、狼のことは冗談にならないほど怖かったけど、今の状況を思えば、確かに私は世界一の幸運だとも思えた。


濁音とは、ば、が、じ、などの点々、半濁音とは、ぱ、ぷ、ぽ、などの丸


悠が凛の魔力がないことを知っているのは、緑の魔法陣をはつどうさせたときである


二本のバラの意味は、この世界は二人だけ、など


豆知識だがニホンオオカミの最後の目撃は1905年の1月23日とされる



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ