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700年前と青い指輪

どこかで見た様な真っ白な何もない空間。忘れるわけもない、死んで間も無く来た場所とそっくり。違う点といえば目の前にいる筋肉質なマッチョが黒いスーツを着て座っているぐらい。


「久しぶりだね、凛。死んだわけではないよ安心んしてくれ、君にあやまらなくちゃならないことがあってね」


はぁ、と小さくため息をつくハーデース。


「君にかけた呪いが完全に発動してなくてね、修正を加えたことを謝るよ。不便をかけた。何しろ、神の僕としては数千年ぶり、あっちの世界としても700年ぶりの転生者だからね、魔法陣が色々と痛んでてね」


急なことに動揺する凛だったが、死んだわけでないことを理解し思考を立て直す。


「なんで、スーツなんですか?」


表情を強張らせるハーデースだったが、予想外の凛の第一声に笑みをこぼす。


「最初に聞くことがそれなのかい?相変わらずユニークな性格だね、凛。なぜスーツかというと、先ほど神々の会議があってね、いや〜上司のゼウスには散々言われて心が痛いよ、横に座ってる正妻のヘラさんが止めてくれなかったら、あのまま数日は嫌味を聞かないといけなかったね。あんな嫌味ジジイにはふさわしくない美しい方だよ、まったく、あんな浮気ジジイのどこが良いんだか、理解に苦しむよ。まあ、そんなとこさ」


やれやれと肩を落とすと、凛の方に向き直る。


「ある程度説明させてもらう、まず、君は今寝てるよ。夢の中で僕と会ってると思えば良い。それと今までの不具合なんだけど、向こうの世界の言葉を正確に日本語として聞き取れる様にしたよ。いままでは700年前のままになってたからね、昔からある様な国や食べ物の名前なんかが違って聞こえただろうが、これからは大丈夫。それと、呪いについてなんだが、これについても700年前のままになっていた、金属でできた殺傷能力のあるもの、を発動条件にしていたんだが、これからは凛自身が人を傷つけるために武器と認識できるものを持った時、と、変えさせてもらう。先ほどここ数日の出来事を確認したが、確か、凛を拾ってくれたのは悠だったね。となると、牧場や畑を手伝うこともあるだろうから、これからは料理や毛刈りなんかもできるだろう」


確か、凛を拾ってくれたのは悠だったね、という言葉が引っかかる。意図的に落としたのではないのか?もし本当にランダムに落とされたんだとしたらゾッとする。


「私が向こうの世界についた時の場所って、ハーデースさんが決めたんじゃないんですか?」

「違うよ、最初に言っただろう。運を良くしてあげたと、良い人に拾われる様に運をうんとあげたんだよ、運をうんとね・・・ちょっと笑っても良いよ」


しばしの沈黙。


「僕の予想では、楓か、ハデスか、はたまた澪、蘭の所か、現四天王の誰かなんて思ってたけど、悠とはね。良い出会いじゃないか。ある意味闇がいる点、僕の予想は当たっているのか」


一人で、うんうんと頷く。ここ数日のことが頭をめぐり、ハーデースに怒りを覚える。


「大変だったんですよ!向こう着いてすぐ狼に食べられて、闇と灯にはボコボコに言われて!」


目を細め遠くを見つめるハーデース


「いや〜、運も700年前の設定だったせいじゃないかな?」

「700年前はどんだけ幸薄なんですかっ!?」

「幸薄とはひどい、悠にそんなこと言えるのかい?」

「うっ」

「言い返せないほど良い相手に巡り会えてよかったよ、さて、言い合いはやめよう、今回は非があると自負している、本当に申し訳ない」

「本当に思ってるんですか!?」

「本当に申し訳ないと思ってるよ、お詫びに何かプレゼントしてあげよう」


プレゼント、と聞いて凛の眉間がピクッと動く。もしかすると、四次元ポケットみたいな便利アイテムかも?

ハーデースは胸ポケットから白い小さな箱を出す。


「どうぞ」

「どうも」


受け取り、片手に乗せてみる、重くはない。見た目は指輪ケース。


「今開けて良いよ」


少し硬い箱をぱかっと開けてみる、青くキラキラと光る5カラットほどの宝石がハマった指輪が姿を現した。生前のことを思えば、正直、指輪を渡されるぐらいならその金でゲームを買ってくれと思う凛だが、この指輪は一目で凛の心をしっかりと掴んだ。ずっと見ていたくなるような透き通った碧。


「気に入ってくれたかな?夢から覚めてもなくなることはないよ、断っておくが、最初から今回の件のお詫びとして渡すつもりだった指輪だよ。色も君の好きな青だ。盗聴器なんてものも仕掛けてないし、魔法が使える様になるだとか、そんな危険な機能も付いていない。何も怪しくない清楚感あふれる指輪だよ」


予想していたものと比べれば見劣りするものの、よくわからない道具を持ち帰ったとして、闇に見つかりボコボコにされるのが関の山だ。それを思えばいいプレゼント、ただ、常時つけるのは無理だな、しばらくは闇と灯には隠しておこう

指輪を見つめる凛を見て気に入ってもらえたと確信したハーデースは上機嫌だ。


「さて、凛。そろそろ時間だ、名残惜しいがお別れの時間だ、何か聞いときたいことはあるかい?」


はっと、我に返る。何か聞くことがあったか必死に頭を動かす、が、いい質問が頭に浮んんで来ない。


「ハデスにかけてもらった呪術はそのままにしておいたよ、万が一発動しても今まで通りで大丈夫さ、それと、包丁や毛刈りバサミを持てるようになったことは先に悠に話すといい。とはいえ、彼女は僕のことは知らないからね慎重に話すんだよ、心配ならハデスがいるときに話せばいい。闇に聞かれたらまた警戒されるだろうからね。そうだな、あと、これは僕の用事なんだがハデスに会ったら、よく頑張っているな、と伝えてくれ」


凛が右手をあげる。


「一つ聞きたいことが」

「なんだい?」

「呪いってそんなに曖昧なもので良いんですか?直せてしまったり」

「曖昧ではないよ、ハデスがいなきゃ死ぬしね。ただ、そうだなぁ、元々呪いを作った理由があるんだが、700年経ったあの世界ではほとんど意味をなさないしね、詳しく知りたいなら、ハデスに聞くといい。話してくれるかは知らないが」


それは一体どういうことなのか?声になる前に強烈な睡魔が凛を襲う。


「時間切れだね、君が消えゆく世界にどれだけ意味をもたらせるか楽しみにしてるよ」

最後の方、はっきり聞き取ることなく目を閉じた。


ハーデースが凛を転生させた神、ハデスが転生後の世界にいる人物。


魔法陣が治ったことでアスパラガスと聞き取れるようになった凛、今更思うが最初の方の言葉聞き間違えるところ無くても良かったな。



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