新たな家族と誓い
3000年・天災級モンスター、フェニックス出現。
3010年・天災級モンスター、ベルゼブブ出現。楓が女王になる。
3011年・闇が生まれる。
3012年・蒼が生まれ、蘭が親代わりになる。
3016年・蘭が四天王になる。
3017年・天災級モンスター、バハムート出現。
3019年・闇が四天王になる。蒼が聖女になる。
3017年、引き続き
泣き止まない闇を悠は言葉なく膝の上に座らせそっと抱きしめていた。闇が落ち着きを取り戻すと悠が口を開く。
「闇、私と一緒に暮らそう」
「嫌なの!お父さんとお母さんとしか一緒に住まないの」
「私のことは嫌い?」
「悠のことは嫌いじゃないの」
「そっか」
短く言葉を交わすと、闇の背中をさする。
「私ね、聖女を辞めようと思う。どこか人の目が届かないような自然豊かな場所で暮らしたい」
問題発言に、部屋の外で聞き耳をたてて聞いているハデスと蘭はびっくりだった。ハデスはすぐ、扉を開けようとしたが、蘭に止められる。
「元々、私のお母さんが聖女様でね、色々あって使命感で聖女になったの、聖女の候補は数人いるし、今は聞きたくない名前かもしれないけど、蒼ちゃんももう、数年で聖女になれるって話だし」
蒼という名前に闇がまた顔を歪める。
「だからね、闇ちゃん、私と家族になろう、闇ちゃんが笑顔で過ごせるように私、頑張るから」
悠に抱きしめられている感覚は、母親に抱きしめられている安心感、やすらぎを思い出させた。声色は違うものの、悠の声は闇の心に、3日ぶりに、わずかとはいえ、落ち着きを取り戻させた。
返事を返す間も無く闇は眠りに落ちる。
闇が眠ったのを確認すると、ハデスが入ってくるなり、起こさないよう気遣った声量で悠に話し始める。
「悠、聖女をやめると言うのは本当かい?なんでだ?」
「はい、返事はまだもらってないですけど、闇ちゃんのためにもやめます。なんでやめたかと言われたら、言い表すのは難しいですけど、そうですね、疲れました」
そう言って冷たく微笑む悠。
「何が疲れたんだろうか?」
「私に聖女の荷は重すぎます、今回のバハムートの時だけじゃない、どれだけ最善を尽くしても助けることのできる人は少ないです。厄災モンスターや上級モンスターのせいで死ぬことはなくても、腕を失い、足を失った人たち。元に戻すなんて蒼ちゃん以外は不可能です、私でも傷口を塞いだりすることはできます。でも、そうしたら、その後は苦しい生活を強いられる。あの時死んでおけば良かったなんて、言う人もいます。それに、傷口を塞いだりするぐらいなら、私じゃなくてもできます。死んでいく人を見るたび聞くたび、助けた人が死んでおけば、いっそ殺してくれ、と言うたびに、とても辛いんです、自分の中のお母さんから受け取った大切な何かが壊れていくような、そんな気分になる」
聖女の力を持つ強者は10人ほど、だが、その10人に回復に関する強さの上下関係はあまりなかった。だが、魔法の無効化能力については力の差はある。
悠の目から静かに涙が流れた。
「悠、気付いてやれずすまない、僕は聖女のことになると周りがよく見えなくなるようだ、そんなに思い詰めていたとは、本当に申し訳ない」
「いえ、大丈夫です、それより蘭さんの顔色が悪いですね」
入り口で立ったままの蘭は目を潤ませていた。
「どうしよ、闇ちゃんに嫌われてもうた」
「そりゃ、あんな言い方するからだよ、蘭」
「そうですね、あの言い方はないです」
目を潤ます蘭を、二人は静かに、少し嘲笑った。
ハデスは聖女のことになると熱くなる。
聖女は回復力に優れたものと言うよりは、無効化を使い天災級と戦うのがメイン、ただ、魔法の属性的に最も回復に優れていると言うだけ。




