忌み子とハデスの特注ズボン
3000年・天災級モンスター、フェニックス出現。
3010年・天災級モンスター、ベルゼブブ出現。楓が女王になる。
3011年・闇が生まれる。
3012年・蒼が生まれ、蘭が親代わりになる。
3016年・蘭が四天王になる。
3017年・天災級モンスター、バハムート出現。
3019年・闇が四天王になる。蒼が聖女になる。
今回は3012年蒼が生まれたその後の話です
蒼は生後、数分で親を亡くした、どこから噂が広まったのか、声ひとつで人を殺せる赤ん坊がいると、キョウチクトウ村だけでなく、王都にまで知れ渡った。
蒼は超が二つ付くほどの天才だった、魔術は聖属性、聖女たちの持つ無効化の魔法はもちろん、回復魔法に対して驚異の適性を見せていた。蒼の回復魔法、それがチートと言えるほどだった。
回復とは、自己治癒能力を高めたりする一般的なものでなく、怪我をする前の状態に体を魔力で修復できるということである。ただ、いくら聖女とは言え、怪我をする少し前の体の状態に修復するのが精一杯、例えば1年前の状態に戻そうとしても、1年前の体の情報を読み取るのはほぼ不可能であり、身体的障害や、記憶の消滅、など、さまざまな問題が生じる。
それが、蒼の場合、生まれて数分で無意識の中、自分の親とナースを精子、卵子になるまで巻き戻したということで、その事実が、一言で言えないほどの才能を語っていた。
これを知った王都の上層部は蒼を王都の地下で厳重に、多彩な魔術師に結界を張らせ、魔法で眠らせた、蒼をどうするかについては二つの意見に別れる。
一つは、今後、人類の敵になる可能性を考え今すぐ処刑する。蒼の力を考えれば当然の判断だった、生まれてすぐ泣き声ひとつで三人を殺せるほどならば、知恵をつければ、天災級モンスターすら越える存在になるとも考えれた。
もう一つは、道具として使うこと、一人生き残ったナースの話を聞く限り、体が小さい頃に戻ったからといって、記憶が無くなったり、体に障害が起きるということは無かった、つまり、簡単に言えば、若返りを繰り返すことで永遠に生きることができる、と考えれる。
しかし、意見は分かれただけで、どちらにするかは皆、暗黙の了解だった。というのも、小さい頃から無意識に魔力を使う子も稀にいるため、魔力制限のアイテムは存在するものの、蒼ほどの魔力を抑えるアイテムなんて存在しなかった。つまり、枷のない殺人子の面倒を見れる者、制御できる者など誰もいなかった、この時の四天王である、ハデス、茜、澪にも身元引受け人として話は行きかけたが、人類最後の砦である四天王をわざわざ危険に晒すことは出来なかった。たとえ引き受けたとしても、常に気を張って魔力防壁をはるなんてできるわけがなかった。
すでに国民中に蒼のことは知れ渡り、永遠を夢見る者や、蒼を祀る宗教のような団体、反対に悪として殺そうとする団体、すでに、キョウチクトウ村には放火など、異質な活動や、被害が出始めている。
答えは処刑、一択だった。
そんな中、話を耳にした四天王の一人が女王に謁見を求める。王の前へと案内された四天王は上半身裸、青い長ズボンを履いている。名前を言うまでもなくハデスだった。
「やあ、楓、女王の仕事は大変そうだね」
大臣なども多く見ている中で、上半身裸で現れた上、女王に向かって友達のように話しかけるハデスを睨みつける連中もいたが、古参の忠臣はいつものことだと気に止める様子はなかった。
「ハデス、久しぶりだね、仕事はやりがいがあって楽しいぐらいだよ」
周りにいる豪勢な服を着ている大臣たちと比べると、王と名がつく職に就いているとは思えない私服の女王が答えた。髪は短く頭には金に光るティアラをつけている。口の右上には小さなほくろがあり、身長は並の高さより少し高め、豪勢な椅子に腰掛けている、椅子の横には王の杖とされる、ウアスの杖が置かれていた。
「それにしては、最近忙しいようだけど、特に、赤ちゃんの処刑の話とかね」
ハデスの言葉に謁見の間にいる者達が表情を変える。
「ハデス殿、そのような物言いは、いかにあなたと言えども些かひどいですな」
楓の横に立つ一番偉そうな老人が不機嫌そうな表情を浮かべ、ハデスを睨む。
「構わない、言ってることは間違っていない、それで、ハデス、君ともあろうものがわざわざ私に嫌味を言いに来たのか?言いたいことがあれば言ってくれ」
楓はハデスの考えを見透かしたように、誰一人笑っていないこの場で少し挑発気味に笑った。ハデスも呼応して表情を少し崩した。
「ひとつ確認だ、蒼という子の魔力を制御できる魔法アイテムがあればいいんだろ?」
「そうだね、そんなのがもしあれば、ひとまず、赤子を手にかけるようなことをしなくてすむね」
「わかった、1週間時間をくれ」
「君に考えがあるのか?」
「そうだね」
「その考えが何なのか、私にだけでも教えてもらえたりは出来ないかな?」
「君は最高の親友だがそれは無理だ、悪いね楓」
「そうか、まあいいよ、ハデス、君を信じよう」
「ああ、それじゃあ、もう帰るよ、お邪魔したね」
「いやいや、君ならいつでも大歓迎さ」
手を振り部屋を後にするハデス、楓の側に立っている者が耳打ちする。
「ハデス殿を偵察部隊に追わせますか?」
フッ、と楓は息を吐き出しながらあざ笑う
「ハデスを偵察できる部隊なんていないよ、それに、ハデスは友、いや、最高の親友だしね、信じるさ」
一息つくと、楓はすぐ王としての仕事に戻った。
聖属性の魔法を持つ者は、ほぼ全てが無効化魔法を使える、ただし、回復魔法についてはバラバラで、現状蒼の次に秀でている者でも、切れた腕をくっつけたり、手を片方復元する程度。
この時の四天王は、前の天災級ベルゼブブ戦で、女王が亡くなり、四天王であった楓が即位したあと補充されていないため、一人足りない。
ハデスに、一番信頼している存在は?と聞いたとしたら、強いて言うなら楓、と答えるだろう
楓とモミジは、言い方は違うが、同じカエデ科カエデ属、色の良し悪しでどちらで呼ぶか変える、和菓子店だと違いはかなり重要だとか、また、カエデの由来は、カエルの手に似ていることから『かへるで』がなまりカエデとなった。




