悠と闇
1・3000年・天災級モンスター、フェニックス出現。
2・3010年・天災級モンスター、ベルゼブブ出現。楓が女王になる。
3・3011年・闇が生まれる。
4・3012年・蒼が生まれ、蘭が親代わりになる。
5・3016年・蘭が四天王になる。
6・3017年・天災級モンスター、バハムート出現。
7・3019年・闇が四天王になる。蒼が聖女になる。
6番3017年、バハムートが来る半年ほど前です
闇の親は特級の中でも、性格の良さからか人間関係では敵を作らず、王都の護衛任務や学校から指導を頼まれるなど様々に活躍していた。
特に、最年少で聖女になった悠、四天王になりたての蘭、四天王として前からいるハデス、茜澪の五人とはとても仲が良く、何か困りごとがあったら気軽に助け合える仲だった。また、闇が生まれる1年前、天災級ベルゼブブ襲来時、亡くなった最高位職である女王に代わり、現女王になった楓にも気に入られていた。
今日は闇が6歳の誕生日、闇の自宅では闇、正面に闇の母、横の席に用事のなかった悠が3人で誕生日パーティーを行なっていた。
「ハッピバースデー闇!」
「お誕生日おめでとう闇ちゃん」
大好きな母と悠に祝われ、闇は上機嫌だった。
「ありがとうなの」
母はやや小さめなホイップクリームで包まれ、イチコと板状のチョコが乗ったホールケーキを出すと、4頭分に切り分けた、一つは闇のお父さんに残しておくため。
「闇、どれが良い?」
どれにするかと聞かれた闇は、すぐに板状のチョコレートが乗ったブロックを指差した。
「チョコがあるやつがいいの」
母は闇の前に置いてある皿に、指さされたケーキを乗せる。
「悠ちゃんはこれで良い?」
「はい、ありがとうございます」
闇の横の席に座る悠の皿にケーキが置かれる、母も自分の分のケーキを皿に乗せると、残り一つをを箱にしまった。
ケーキを口いっぱい頬張る闇、ポロポロと口からケーキが落ちる。それを悠が手で受け止めた。
「闇ちゃん、口から溢れてるよ、もうちょっとゆっくり食べようね」
「わかったの」
闇は素直に従う。
「悠ちゃんは頼りになるわね、最近、闇ってば親の言うこと全然聞かなくて、怒ってばっかりなの、俗に言うイヤイヤ期ってやつなのかしら」
闇が少しむすっとする。
「そんなことないの、ちゃんと言うこと聞いてるの」
「この前だって、洗濯してなかったから、お気に入りの赤い服じゃなくて青い服着てって言ったら、嫌なの、嫌なの、って怒ってたじゃない」
「あの時はそういう気分だったの!」
「それ以外もあるわよ、悠ちゃん聞いてくれる?」
母の視線が悠にずれると闇が怒り出した。
「やめてなの!余計なこと言わないでなの!お母さんなんて嫌いなの!」
その言葉を聞いた悠が闇をなだめる
「闇ちゃん、お母さんに嫌いなんて言っちゃダメ、謝って」
「嫌なの」
悠は椅子から立ち上がり、かがんで座る闇と目線を合わせる。
「今の闇ちゃんには難しい話かもしれないけど、お母さんっていうのはいてくれるだけで、とっても幸せなことなんだよ?私は、もう、お母さんはいないから、こんなに優しくて強いお母さんをもった闇ちゃんは幸せ者なんだよ」
そう話しながら悠の目は少し潤んだ。
「悠ちゃん、辛いことを思い出させてごめんなさいね」
「いえ、大丈夫です、心配おかけしてすいません」
目を潤ませたまま笑顔を見せる悠。
「悠、泣いてるの、私のせいなの?ごめんなさいなの」
「ううん、泣いてない、大丈夫だよ、それより、お母さんにごめんなさいは?」
「お母さん、ひどいこと言ってごめんなさいなの」
しばらく暗い雰囲気が続いたが、母が冷蔵庫から瓶を持ってくる。こどもビールと書かれていた。
「さあ、このビールで仕切り直ししましょ、せっかくの誕生日なんだし楽しまなきゃ」
泡立つこどもビールは闇の心を鷲掴みにした。
「これすごい面白いの、みんなの分私が入れるの!」
3つのコップにこどもビールを注ぎ、泡立つのを見ては喜ぶ闇、可愛いなぁと、闇が注ぎ終わるまで母と悠は傍観していた。
こうして、幸せな時間はあっという間に過ぎていった。
陽が傾き空が赤くなり、悠が帰る時間になった、玄関で闇が
「バイバイなの」
と挨拶をする。
「闇は、少しお留守番してて、門のあたりまで悠ちゃんを見送ってくるから」
そう言って、玄関を出ると、悠と闇の母の二人きりになった
「今日は闇ちゃんのお誕生会、誘ってくれてありがとうございました」
「いいのよ、気にしないで、こちらこそ、いつも闇を可愛がってくれてありがとうね」
そんな談笑が続いた、そろそろお別れというところで、闇の母が切り出す。
「今日、昔のこと思い出させてごめんね、悠ちゃんのためならいつでも力になるから」
「気にしてないです、でも、ありがとうございます」
「悠ちゃんは本当に良い子ね、闇に見習ってほしいわ」
そう言って闇の母は笑いかけながら話を続ける。
「もし私達両親にに何かあったら、闇のお守りは悠ちゃんに任せようかしら?」
「冗談きついですよ、私は親にはなれません」
お互い表情は笑っていたが、最前線で戦う、特級魔術師、聖女。お互いの立場が死と隣り合わせなのは理解していた。
「もし、何かあればって話よ」
「何かなくても、闇ちゃんのお守りくらいならいつでも喜んでしますよ」
「ありがとう、悠ちゃん」
そう言って闇の母と別れる悠
帰る途中、夕日の紅い光が避難所近くの紫のハナショウブを照らし、黒っぽい色に変色して見えた。
イチコ➡︎イチゴにとても似た果物。
3010年、ベルゼブブ襲来時は、母たちの任地ではない所で戦闘が行われたため、ベルゼブブ戦には闇の親は参加していない。
こどもビール、泡立つのが面白い。味は微妙、好きな人は好きな味(どんな食べ物でもそうだろうけど)
ハナショウブの花言葉、優しい心、あなたを信じる、忍耐、など。個人的に好きな花




