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蒼と恨み

「ねぇ、ねぇ、闇お姉ちゃん、や〜み〜、や〜み〜、無視しないで!あおいのこと無視しないでってば!」


蒼と名乗る幼女は、凛のことなど気にもせず、座っている闇を後ろからハグして喋り続けていた。


「ねぇ、闇お姉ちゃん、今何してるの?釣り?蒼もやりたい、一緒にやろ、ねぇ、聞いてる?」


闇から一度離れると蒼は闇の耳を縦横と、引っ張った。闇は、ずっと沈黙を続け、蒼のことを見ようともしない、耳を引っ張られても怒る気配は無かった。


「ねぇ、闇お姉ちゃん!聞、こ、え、て、ま、す、か!」


今度は耳元で大声を出す蒼、すると、さすがに驚いたのか闇が体をビクつかせる。凛も、急な大声で少し驚いた。


「あー、今、ビクってなった」


闇の無表情な顔を、少し怒気が蝕んだ。闇は片手を自分の顔の前に無言で持ってくる、すると、両耳に蓋をするように青い小さな魔法陣が現れた。


「あー!防音魔法だ、反則〜!もう、いいもん」


蒼はふて腐れると、闇に左側から近づき頰にキスした。凛には聞こえないはずのプチッ、という闇の感情が切れる音が聞こえた気がした。

ドガン!

急な爆発音、風圧に押され、椅子ごと凛が投げ出される、横に吹っ飛んだおかげで湖に落ちることはなかった。煙が巻き上がる。


「いてて、あっ!釣竿手放しちゃった、どうしよう」

「凛、大丈夫ですの?」

「大丈夫、でも、釣竿落としちゃった」

「そのくらい、私が拾うから気にしなくていいですの。カッとなって爆発魔法使ってしまいましたの、凛に大きな怪我がなくて良かったですの」


闇は、いつの間にか自分の杖を握っていた。耳の魔法陣も無くなっている。


「びっくりした〜、いきなり魔法撃たないでよ、今の、蒼じゃなかったら、大怪我だったよ」


闇の爆発魔法を不意打ちで食らった蒼は平然とその場に立っていた、僅かに体が光ってるように見える。相変わらず、闇は蒼を無視する姿勢を崩さない


「凛の椅子は壊れてないですの、でも、私のは壊してしまいましたの、帰って悠に謝らなきゃですの。それに、音で魚が逃げてしまいましたの、凛、今日はここまでにして帰りますの」


そう言うと、杖を振る、湖に落ちた釣竿も含めて、バケツ、椅子など、全てが闇の元に集まった、闇は二人分の釣竿を折りたたみ始める。


「ねぇ、闇お姉ちゃん、もう釣りやめるの?じゃあ、蒼と遊ぼう、蒼が遊ぼう、って誘ってるんだよ」


あどけない顔で蒼がだんだんこっちに歩いてくる


「ねぇ、蒼と遊ぶより、その人と話してる方が楽しいの?」


闇が釣竿を直すと、荷物が空中浮遊し始めた。


「凛、お望み通り、空飛んで帰りますの、手をしっかり握りなさいですの」

「うん、闇の手やわらかいね」

「気持ち悪い奴ですの」

「ねぇ!闇お姉ちゃん!話し聞いてよ、さっきから一人で話してるからさみしいよ、もう、怒った、その気じゃなくても蒼は闇お姉ちゃんと遊ぶ!」


凛の体が空中浮遊し始めた時、蒼の甲高い声があたりにこだまする。

トン、トン

蒼が地面を杖で叩くと、凛の真下につる状の植物が生え、凛の足に絡まった、グイと引っ張られ、凛は闇の手を離してしまった、途端に体は浮力を失い地面に叩きつけられる。


「ぐえっ」


そんなに高くないとはいえ、2メートルほどから顔面を強打した、鼻が折れてないか心配になるほどの激痛。すぐに、自分の鼻を触り、折れてないことを確認した。

闇が地面に降り立つ。


「よくも家族に手を出してくれましたの、お前に家族を殺されるのはもうこりごりですの」


うつ伏せなので闇の表情はよく見えないが、自分の前に立つ闇からは、昨日の自分に向けられた声を思い出すような憤激の声色を放った。正気を失っているようなそんな声。でも、凛のことを家族と言って怒ってくれている闇が、凛は可愛くて嬉しくてどうしようもなかった。同時に、家族を殺される?一体どうゆうことだろう。ハテナマークを浮かべる凛。


「やっと話してくれた、しばらく会ってなかったせいで、蒼の名前忘れたの?蒼の名前はゴミじゃなくて蒼だよ。闇お姉ちゃんの家族を殺したこともないよ?それに、もし、怪我しても治してあげれるよ」

「黙れですの、こっちが黙っていてやれば調子に乗りやがってですの」

「え?どう言うこと?蒼のこと思って黙っててくれたの?蒼は闇お姉ちゃんと話したいから、黙ってもらわなくて平気だよ」

「話が噛み合わないですの」


闇が杖を両手で握る。


「天王付与魔法一式ZERO・REALITY」


闇の腕が手から肘のあたりまで真っ黒に変化する、昨日の自分みたいだ。目はベタ目のように黒に染まり、杖が黒く液体状になり同じく黒い腕に張り付くと、鎧のように液体から固体へと形を変える。額には角が一本生えた。


「闇お姉ちゃん、それは危ないよ、蒼と遊ぶときはそんなに本気じゃなくていいよ」


蒼の言葉に聞く耳を持たず、右手をパーにして突き出すと、手のひらの前に小さな赤い球が生まれた、ウィンウィンと不穏な音を立てながらどんどん大きくなっていく。数秒で直径1メートルほどになると、手から離れ、ものすごい勢いで蒼に向かっていった。


蒼の体がわずかに光っていたのは、防護魔法を発動していたからである。


天王付与魔法とは、一式から四式まである。


ZERO・REALITY、現実味がないというような解釈。

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