釣りと闇の魔法嫌い
朝ごはんを食べ終わるとハデスは
「釣竿は呪いの対象にならないと思うよ、ただ、先の針は触れたらまずいかもしれないね」
と、言い残すと、四人に挨拶をして凛を励ますと、新幹線を彷彿とさせるスピードで走って帰っていった。灯は鶏小屋の方へ、悠は畑に麦わら帽子をかぶって出かけていった。凛はというと、闇に連れられ、初日、狼に襲われた森の先にあるという湖に釣りに出かけていた。正直、もう狼の出る森には近づきたくない。でも、出かける前に闇が
「私が凛を守ってあげるのだから心配しなくて良いですの」
と言ってくれたので、何も恐れることはなかった、それよりも闇に初めてちゃんと名前を呼ばれたことが嬉しくて気が舞い上がっていた。荷物は全部闇が空中浮遊させてもって行ってくれるらしい。
結局、湖に着くまで狼なんかと出会うことはなく見かけたのは可愛い赤っぽい狐ぐらいだった。30分ほど歩くと、湖が見えてくる、予想より、はるかに大きく、直径は30キロメートルほどはある。水も澄んでおり、遠くの方で魚が跳ねるのも見える。凛と闇がいる位置は堤防のようになっており、すぐ下は湖の底が見えないほど深そうだった。
「着きましたの、今日はここで晩ご飯に使う魚を釣りますの」
「魔法で魚とったり出来ないの?」
闇は不満そうな顔を浮かべながら、釣竿を組み立て始めた。
「私をなめないでほしいですの、やろうと思えば、空を飛んで数分でここにくることだって出来たし、魚だって取れますの!」
「ごめん、じゃあ、なんでそうしないの?」
「私は悠と離れている時、常に悠の近くに結界魔法を張り巡らせていますの、つまり、常に魔力を消費し続けているってことですの、だから余計な魔力を使わないために基本的には魔法は使わないんですの」
「でも、数匹魚とったり、二人で空を飛ぶぐらいでそんなに魔力使うの?それにさっき、荷物を空中浮遊させてたよね」
闇が釣竿を組み立てる手を止める、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
「うるさいですの、凛!私が魔法を使いたくない理由を知って凛になんの徳がありますの?それと、釣りは結構好きなんですの。釣りがしたくないなら、そこに突っ立って帰るまで待ってればいいですの」
「ご、ごめん、私も釣りやりたい」
「じゃあ、黙って釣竿組み立てるの待ってなさいですの」
そういうと、闇は慣れた手つきで二人分の釣竿を完成させた。聞いちゃいけないことだったのかな?と凛は内心反省した。
釣竿の作りは地球の時と変わらず、針、おもり、ウキ、と繋がっている、ルアーのついていない投げ竿。餌はオキアミに似たエビ。礼を言い凛は釣竿を受け取る。組み立て式の椅子を二人分並べると、闇と凛は釣りを始めた。
琵琶湖➡︎湖面積. 約674km2. 滋賀県面積の約6分の1. 長軸. 63.49km.
闇は魔法をあまり使いたくないらしいが、悠のためならいくらでも使う
苦虫を噛み潰すと、だいたい、顔の変化の前に吐くことが多い
オキアミに似たエビの名前はオキアミ