手作り料理と凛の決断
凛とハデスは机に置いてあった、悠が作った料理で食事を取っていた、ハデスが魔法であっためてくれたお陰で、電子レンジで温めるよりも出来たてのような暖かさに仕上がっていた。つくづく魔法は便利だ。悠たちはすでに自分の部屋に戻ったようだ。
「これは、悠の手作り料理だね、僕はいつもプロテインと肉を主に摂取しているから、野菜炒めなんて新鮮だよ、ちなみに、この野菜炒めに入っているイノシシの肉だけどね、牛や鳥の肉と違って、脂質は少なく、ビタミンBは豊富、牡丹鍋なんかが有名だけど、焼肉、すき焼き、煮込み料理なんかにしてもとても美味しいんだ」
「そうなんですね」
ハデスは凛を元気付けようとしてくれているのか、無言の時間を作らまい、と、しゃべり続けていた。
「去年の春は、悠の手作りのイノシシ肉の赤ワイン煮込みを振舞ってもらってね、イノシシの肉は煮込めば煮込むほど美味しくなるんだ、それに、よく言われる獣臭さはイノシシの場合、血のせいで臭いがつくことが多いんだが、血抜きは灯が担当でね、灯の血抜きが上手いから全然獣臭くないんだよ、とはいえ、僕は血の味がしても気にしないんだけどね、血は亜鉛など、鉄分が多く含まれてね、朝の目覚めが良くなったり、やる気が出たり、いいことづくしさ、海賊なんかは亀の血をそのまま飲んだりしていたらしいしね。話が逸れてしまったが、とにかく、悠のイノシシ料理は美味しいと言うことさ、君もこの家に住まわせてもらうなら、そのうち食べれるはずさ」
凛が黙り込む、少しずつ食べていた箸も止まってしまった。俯く凛を真剣な眼差しでハデスは確認すると、席を立った。
「何か気に触ることを言ってしまったかな?僕は悠ほど人の心に寄り添うのが上手くなくてね。まあ、悠ほど人に優しくできる人物は悠以外あまり見たことないんだけどね、僕じゃあなるのは夢のまた夢かな。食事中だが少し二階でトイレをしてくるよ、一階でトイレしてもいいんだが、今は二階でトイレをしたい気分なんだ、少し戻るのが遅くなるかもしれない、戻ってきたら、君が何かを言いたそうにしているからそれを聞かせてもらえるかい?」
「えっ?」
そう言うと、ハデスはリビングを出る。
凛が黙り込んだ理由は、先ほどのハデスの言葉が刺さったからだった。
『君もこの家に住まわせてもらうなら、そのうち食べれるはずさ』
「私がこの家にいていいのかな、たった5日、起きてたのは2日ぐらいだけど、灯や闇には私が家に住むことについて快くは思ってくれてないみたいだし、それに、きっと今回のことで、嫌われてるなんてレベルじゃないほど、恨まれてる。私の呪術が他の人に影響を与えない物だと言っても、闇と灯じゃ確かめようがないことを信じてくれるのかな?悠には、沢山迷惑かけてる、きっと私がいるだけで負担になることもある、それに、さっきは私のせいで泣かせてしまったし」
思い詰めれば思い詰めるほど凛の心はしおれていった。それに呼応するように一人だけのリビングは暖かい昨日のリビングの面影はなく、凛を無言で、出て行け、と威圧しているように目に映った。
どれぐらい考え込んでいただろう。パタン、優しく扉を開け、ハデスが戻ってくる。
「いやー、待たせて申し訳ないね、まあ、僕のために食べるのを待ってくれなくてもいいんだけどね、凛は若いんだから、肉をいっぱい食べるといいよ、野菜は僕が全部食べてもいいからね、それに」
「ハデスさん!頼みたいことがあります」
まだまだ続くであろう、ハデスの話を凛が遮った。ハデスは少し驚くと、少し笑みを浮かべそれでいて真剣な空気を作り出た。
イノシシの肉は血抜きを間違えると獣臭が強い
海賊時代は亀は万能の食材とされた、甲羅は盾に、血は栄養豊富な水分、肉は人に欠かせないタンパク質としての食料、余すことなく使える。海でサバイバル、もしくは遭難する人は覚えておくといざという時に助かる
ハデスは上半身、裸である