2.なんということだっ!(父ドレイク視点)
よろしくお願いいたします。
クリスティーナ:お父様、呆けている場合ではございませんわ!
わたしは、アッサム様から渡された転移の札で、屋敷の転移の間へ戻り、執事を呼ぶための鈴を鳴らし、すぐに廊下へ出た。
クリストファーは、学園から転移してきた後、寝室へと運ばれただろう。
きっと、寝室に皆もいるだろうと思い、急いで向かっている途中で、執事と鉢合わせした。
「旦那様!お迎えに上がらず、申し訳ございません。」
「構わん。それで、クリストファーは?こちらに転移させたのだろう?」
わたしは状況を把握したかったので、執事と合流した後、移動しながら、説明を促した。
「アドルフ様から連絡を頂き、私と他の者とでお迎えに。校医とアドルフ様は、『まだ呪いの種類は解らないが、命に別状はない。ただ、これから容態が変わるだろうから、目を離すな』とおっしゃっていました。」
執事の説明がちょうど終わったところで、クリストファーの寝室に着いた。わたしは、ドアを開ける前に執事へ指示をだした。
「そうか…。とりあえず、何かあっても対応出来るよう、医師を呼び寄せ、客間にでも待機していてもらおう。あと、アーサー王子殿下かエリザベス嬢に、ダンジョンでの状況を説明してくれるよう、連絡を。あとは、アドルフが帰るのを待つしかあるまい。」
「畏まりました。」
執事が下がったのを横目で見つつ、わたしはドアをノックした。
ドアを開けたのは、妻のイリサだった。
「ドレイク…。おかえりなさい。仕事は大丈夫なのですか?」
イリサは、わたしが入室出来るよう、脇に避けながら、不安な顔をしながら話しかけてきた。
「大丈夫だ。それより、クリストファーはどうだ?」
寝室へ入ったあと、イリサをエスコートし、クリストファーの傍へ行きながら、わたしはイリサに聞いた。
「今のところ、ただ眠っているだけよ。本当に、呪いにかけられたのかしらって思うくらいだわ。」
「そうか…。ダンジョンで呪いが発動し、かけられてしまった場合、意識が戻るのに1週間近くかかると言われているからな…。」
わたしたちは、ベッドの脇に置かれた長椅子に座り、安らかな寝息をたてているクリストファーを見ながら、話を続けた。
「えぇ…。寝ている間、呪いを体に馴染ませるために時間がかかると…。アドルフからは『クリストファーを見ただけでは、どんな呪いか解らない。解読し判明したら、帰る。』と、使いの者に言ったそうよ。」
イリサは話しをしながら、わたしの肩にもたれ掛かかってきた。
わたしは、左手は手を握り、右手を肩にまわし、安心させるよう、イリサを抱き寄せた。
「あぁ…とりあえず、アドルフが戻らねば、こちらも対処のしようもないしな…。」
「そうね…。どんな呪いなのでしょう?事例としては、髪の毛や瞳の色が変わるとかがあったわね…?」
わたしは、今までの被害事例を思い出しながら、イリサに返事をした。
「まぁ…とても、うん…様々だ。あまり、今後のクリスにとって、障害にならない呪いだといいのだがな…」
眠っているクリストファーを見ながら、イリサと様々な話をし、アドルフの到着を待った。
「父上、遅くなりました。」
そう言いながら、部屋へ入ってきたアドルフに、イリサは詰め寄った。
「アドルフ、おかえりなさい。それで?クリストファーにかけられた呪いは何なの?!」
「は、母上、落ち着いてください。ただの、性転換の呪いなだけでした。やはり、初心者向けのダンジョンなだけあって、変な呪いではなかったようです。」
そう、何でもないような言い方のアドルフに対して、わたしたちは驚いてしまった。
「せ、性転換だとっ?!では、クリスが女になるのか!?なんといことだっ!!」
「まぁ!?クリスが…?クリスは受け入れられるのかしら…」
言葉を失うわたしたちに、アドルフは言った。
「わかりません…。ただ、呪いをかけられたのは事実ですし、解くことはできないのですから、受け入れるしかないですよ、母上。それに、父上。女になるクリスの為に、いろいろと準備が必要かと…。」
確かに…。戸籍の変更や、学園へも話をつけねばなるまい。あとは、元凶となったバーモント伯爵令嬢へも…。
「そうだったな。いろいろと対処せねばならない。とにかく、クリスは1週間ほど目覚めぬ。その間、侍女をつけ、交代でみていてもらう。わたしは1度、学園へ行ってくる。」
「畏まりました。わたくしは、クリスの身の回りの物の準備をしておきますわ。女になり、衣服などが一番困りますもの。ネグリジェは既製品で済ませますが、ドレスは起きてからしたためましょう♪でも…この背丈のまま、女になるのかしら?」
と言いながら、イリサは手を頬に宛てながら、少しだけ嬉しそうにしていた。
「イリサ…。すぐ要りようなものだけを手配すれば良い。目覚めても、すぐには起きれまい。それに、呪いが馴染むまでは、どのような姿になるかは、わからんのだから。」
「そうなのだけど…。呪いにかかってしまったものは、どうしようもないのだとしたら…。クリスが状況を楽しめるようにしておきたいのですわ。それに、わたくし、娘が欲しかったものですから、嬉しくなるのは仕方ありません。」
少し喜んでいたイリサに注意をしたが、反対に言い返されてしまった。
読んでいただき、ありがとうございました。
クリスティーナ:次は、お父様の腕の見せ所ですわね!