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一期一会。  作者: うさブルー
scene
7/9

chapter7

 

 

 これが言うところの“ピロートーク”なんだろう、とやけに低いテンションでわたしは語れるようになった。徐々に鎮まっていく呼吸も、夜も、わたしは好きになれそうもない。

 何だか、終わりがすぐ近くにありそうで、怖くなるのだ。


「梓」

「ん?」


 布団の擦れる音と同じか小さいくらいの声で、葉月が囁く。

 時折窓を叩く夜風よりも、その声にずっと安心した。


「梓は子ども、好き?」

「えっ……」

「変な意味は無い……と言ったら嘘になるけど、そこまで深くはないと思う」

「まぁ、好きかな……」


 控えめに言うけれど、その程度は控えめではなかった。実は、小さい頃の将来の夢が保育士だったし。それがダメならお菓子屋で。

 でも、それを聞くってことは、やっぱり……。


「好き、ですか……。ですよね。そんな気はしていました」

「えっと……ごめん」


 当然、わたしたちの身体では、それはできない。だから子孫がどうとか言われるわけだし、そもそもそういうものじゃないから気持ち悪いって揶揄される。

 覚悟で付き合ってるから、罵倒されるのはどうってことはない。けど、それ以前に、当人たちの気持ちの問題があるのだ。すごく、すごく、難しいことだ。好きと口にするのは、こんなにも簡単なのに。

 だから、そういう問題で別れるのだけは、わたしは嫌だ。別れる時はせめて、ちゃんと嫌われたい。

 けど、今は大好きだから。そういう想いをぐんと伸ばして、わたしは葉月の頭を撫でた。


「ありがとうございます。けど、大丈夫です。私も、好きですから」

「葉月……」

「だから、少し考えたんです。これからのこと」

「これから……ね」


 何だろう。暗い話だと思っていたんだけど、葉月の表情は清々しく透き通っていた。月光に照らされているからか、美肌の湯の効能か、それとも……。

 葉月の微笑みは、葉月の好きな小説で言うところの“新刊”が出た時に似ていた。


 

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