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一期一会。  作者: うさブルー
scene
1/9

chapter1

 


 葉月はづき


 初秋というにはまだ早いと気温が邪魔する梅雨明けの時期。

 近頃わたしが手に入れたものの中で、一番印象に残っているものの名前だった。正確にはものじゃないし、付き合っているというだけで手に入れてもいないけど。

 ないけど、わたしは君の名前を手に入れたと思っている。

 そして、君にわたしの名前をあげたとも思っている。


 藤森葉月(ふじもりはづき)

 藤森葉月と宮川梓(みやかわあずさ)


 なんてことはない、ありふれた女性名のはずなのだけど。

 そうやって君と名前を呼び合うのは、なんだかこそばゆい。アズとかミヤとか、あずにゃんとか。誰かとあだ名を共有(シェア)することはたくさんしたはずなんけど、こんな感覚は初めてかも。

 なんなんだろう。悪い気はしない。

 初婚の夫婦がお互いの呼び名に気を遣うみたいな感覚かな。そんなの知らないけど。

 もっと具体的にすればわかりそう。

 周囲に内緒で結婚した夫婦が、知り合いとか家族にひた隠している時の、お互いの呼び名に気を遣うみたいな感覚かな。なんか物騒になったかもしれない。

 でも、そんな感じ。

 わたしと君は。梓と葉月は。


「葉づ……ごほごほっ。ふ、藤森さん? 今日どう、一緒に帰らない?」

「いいですよ。宮川さん(・・・・)


 人目を気にするという環境で、わたしは途轍もなく弱く。葉月は、途轍もなく強かった。

 それでも、わたしの望んだ関係は、わたしの望まぬ関係(カンケイ)の崩壊とともに。それはまるで、雪解けの雨に流れて零れる、誰かの冷静さのようにも見えて。


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