第零話 ??:??
目を覚ますと、そこにはいつもと変わらない、何の変哲もない天井がある。カチコチに固まってしまっている筋肉や関節をほぐしながら、私は重たい身体をベットから持ち上げる。隣に目を向けると、母がいつものようにすやすやと寝息をたてながら横になっていた。「今日の10分間」は、一番寂しいこの時間らしい。
私はベットで身体を支えながらゆっくりと身体を起こし、母の隣に立つ。今日もこんなに疲れるまで働いてきたのだろうか、服が仕事着のままであった。
母はいつも私が「この時間に起きてしまった」時用に、私に向けて手紙を書いてくれている。毎日欠かさず、だ。今日も大事な10分間を、母の手紙にあてよう。
ふと見ると、母の隣には一つの封筒が一緒に横になっていた。上には大事そうに手紙を抱えている。おかしいな、いつもなら封筒なんてないのに。そう思いながら、私はその封筒を開いてしまった。あぁ、なぜ私は最初に母の手紙から読まなかったのだろう。そうすれば、その封筒の中身は一生見ることはなく、苦しむこともなかっただろうに。
私は生まれて初めて、自分は生きるべき人ではないのではないか、と思った。