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しらばっくれましょう!



 魔物がいたはずの場所には、真っ二つになった小鳥が落ちていました。小鳥さんの無残な姿にちょっと罪悪感が湧いて、つい手を合わせます。

 成仏してください。


「殿下はここにいてください」


 魔物はあと1羽。一番動きが速いようで、オニキスが苦戦しています。風魔法に加え、土魔法が使えるようで、時々、人の頭ほどの岩を落としてきます。


『カーラ、大丈夫だ。離れていろ』


 オニキスの邪魔になってはいけないので、言われた通り離れて様子を伺います。

 ようやく現れた衛兵たちも、見えない何かと戦っている魔物の動きに戸惑って、剣を構えたまま動きません。


 オニキスが十数本の氷の槍を作り、次々に魔物を狙います。

 腹が立つほど優雅に避ける魔物。避ける合間に鎌状の風を放ってきます。

 それを転移を多用して避けるオニキス。


 かっこいい!! オニキスさん!

 薙刀を握りしめて、心の中で黄色い歓声を上げます。ちらりとこちらを見る余裕はあるようですね。

 その隙を突くように、魔物が岩をたくさん落としてきました。難なく避けるオニキス。


 ふむ。土魔法を使う間のみ、動きが止まるようです。

 オニキスと魔物の攻防を観察し、タイミングを計って人差し指で魔物を囲うように円を描きます。


―ゴンッ―


 重たいのもが落ちる音がして、氷漬けの魔物が落ちました。成功です! ウイスキーに浮かべたい、いい感じの球体ですね。

 オニキスが何か言いたそうにこちらを見ましたが、次の瞬間にはすっと隣に転移してきました。必要なくなった薙刀を土に返します。


『なぜ魔法で倒さなかった? 接近戦をするとは。怪我をしたらどうする?』


 あら。薙刀でばっさりを見られていたようです。

 だってこの体、動きやすいんですよ! イメージ通りにスイスイ動けるんです! だから試してみたくて、つい。

 大丈夫、ちゃんと「傷害無効」を付与しましたし。

 自分で言うのもなんですが、美少女がスカートを翻して戦うとか、かっこよくないですか? そもそもこの「バル恋」を手に取ったのも、ジャケットの「戦う美少女」の宣伝文句にやられたからでして。

 じっとり見上げてくるオニキスに、言い訳をします。


「ん?」


 視線を感じて振り返ると、尻もちをついた姿勢のヘンリー殿下が、私と氷漬けの魔物を交互に見て、口をパクパクしていました。私の仕業だとばれましたね。

 表情を消して、ゆっくり殿下に近づきます。しゃがんで目線を合わせ、こっそり殿下の膝に左手で触れて状態異常を解除しました。悪役風に口角を上げて、自分の唇の前に右手人差し指を持っていきます。

 意味することが分かってもらえたようで、殿下が壊れた人形のようにこくこくと頷きます。


 まぁ、言いふらされたところで、現状に変化はないでしょうし。あるとしてもアレクシス・トリステン公爵令息との婚約が、なされないくらいでしょう。願ったりかなったりです。

 ヘンリー殿下だけではなく、衛兵たちも私を疑っているようですし。どこから見ていたのでしょうか。薙刀でばっさり見られたかな。

 あ、父発見!


「お父様!」


 遠巻きに見ていた衛兵たちのその後ろに、走ってくる父を見つけて駆け寄る・・・その前に、水魔法を使って目にいっぱい溜めます。それから両手を広げて父に走り寄りました。


「こわかった!」


 ひしっと抱き着きます。うるうると見上げたら、父が抱きあげてくれました。


「娘が怪我をしたようです。屋敷で手当ていたしますので、これにて失礼させていただきます」


 父が一緒に来たらしい、レイモンド・グランツ・ジスティリア大公閣下に礼をして、足早に庭園を去ります。

 父の頭越しにヘンリー殿下をみると、まだ茫然とこちらを見ていました。殿下を見つけた護衛の方々は、服がぼろぼろの状態の殿下に慌てています。体には傷一つないですけどね。


「カーラ」


 機嫌よく父にしがみついていたら、名前を呼ばれました。少し体を離して父を見ます。


「後で詳しく説明しなさい」


 父が知ってるんだぞと言う目で見つめてきました。水魔法、再び! ぼろぼろと目から水が流れます。


「お父様・・・」

「後で、詳しく、説明、しなさい。」


 ちっ。メンタリストを騙すのは無理でしたか。父は私の規格外に感づいている気がするのですよね。


『この男は面白いな。カーラに恐怖を全く感じていない』


 オニキスが興味深そうに父を見上げています。

 では、怖がらせるのは無駄ということですね。いったい、どこまで話していいものか・・・。


―はあぁ―


 おっと父とため息が被りましたよ。一体、何を思ってのため息なのでしょうか。




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