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精霊の話を聞きましょう!

 さすが王城といった広い庭園。その奥まったところにあった、ベンチに腰掛けます。隣に座ったオニキスにもたれかかり、ほっと一息つきました。


「あぁ、驚いた。詳しく聞いてもいいですか? オニキス」


 オニキスは他の精霊について話すのを嫌っている節があります。無理に聞き出すこともないかとそのままにしていましたが、今回はできれば聞いておきたいです。

 少し逡巡したのち、オニキスが口を開きました。


『あの者に寄生しているのは火の精霊だ。それもかなり大きい・・・力が強い』


 燃えるような深紅の髪ですからね。精霊の属性の色が濃いほど、その力も強いとされています。ゲームでも精霊の加護が強い設定でしたし。

 精霊には、力の強さが大きさで見えるのでしょうか?


『あぁ、そうだ。しかも独占欲の強い精霊のようで、まわりの精霊たちを威圧してまわっていた』


 よほどうるさかったのか、オニキスの眉間にしわが寄ります。


「それは宿主にも影響が?」

『聞くに堪えない言葉で、口汚く罵っていたからな。聞こえているならつらいだろう。周りの人間の精霊たちは萎縮していたし、その宿主にも少なからず忌避感が伝わっていると思うぞ』


 すごくインパクトの強い精霊なのですね。ゲームの主人公は彼を攻略するのですが、彼女の精霊は大丈夫だったのでしょうか?


『あぁ。光の精霊は別格だからな。信奉している精霊も多い』


 あ、そうなんですか。

 そういえばゲームでも、好感度上げる前から、主人公に頻繁に接触してきたような。あれは主人公に近づくと、煩い精霊の声が聞こえなくなるからだったのでしょうか。

 光の精霊は精霊たちにとって、神様なのかな?


『神ではないが・・・それに近い扱いだ』


 オニキスの眉間のしわが深くなります。

 やはりあまり話したくない話題のようですね。十分ですので、ここまでにしましょう。


「ありがとう、オニキス」


 オニキスをぎゅっと抱きしめ、眉間のしわを人差し指でぐりぐり解します。

 ふうぅとオニキスが深いため息をつきました。そして鼻先を頬に押し付けられたので、お返しに目元に口づけをしました。オニキスは嬉しそうに目を細めると、私の膝にゆっくりと頭を乗せます。

 

 そう。誰にだって、話したくないことくらいある。


 膝の上のオニキスの頭を撫でながら、社交シーズンが始まる前の、素晴らしい秋晴れの空を見上げます。

 テトラディル領は南にあるため、年中暖かく、防寒着はいりません。なのに雪は降らないものの、冬の肌寒い時期に王都で過ごすなんて、なんの得になるのか。


 「カーラ・テトラディル」なんてやめて、オニキスとどこか遠くで暮らしたい。

 時々、そう思います。オニキスの力を借りれば可能でしょう。そう決めたなら、セバス兄妹はついてくるのでしょうか。


 でも遅すぎた。

 情が移ってしまった。


 家族とは距離を置いて、なるべくかかわらないようにしていたつもりだったのに。

 私を少し怖がりながらもほほ笑む母に、なんの気負いもなく駆け寄ってくる弟に、嫌われ者の娘を守ろうと尽力する父に。

 結局、私も寂しさに耐えられなかったということでしょうか。


 こわい。


 恐ろしい。


 大切なものができることが。




 今度こそ、


 今度こそ、




 気付くことができるだろうか?


『カーラ? 大丈夫か?』


 思わず身震いした私を、オニキスが見上げました。私の不安を読み取っているでしょうに、何も言わず、慰めるようにすり寄ってきます。それが今はありがたい。


「大丈夫です。最近、夢見が悪くて。少し、思い出してしまっただけですから」


 そう、大丈夫。今の私には力があるのだから。

 これ以上、大切なものを増やさなければ、きっと、大丈夫。





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