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薬屋を経営しましょう!

 なんやかんやでエンディアに店を持ってから3年経ち、私は6歳になりました。


 店は嫌がらせかと思うくらい中心部からも、商業地区からも遠い場所でしたが、タダだったので文句は言いません。

 でも光教会からも遠かったので、そこはよかったです。相変わらず光教会はテトラディル領から避難したままでしたが、時々様子を見に来ていたようなのです。

 これからも目をつけられないよう、目立たないようにしなくてはなりません。


「カーライルさんの薬は効くねぇ。指の関節の痛みが嘘のように消えたよ」


 この方は近所のおばあさんです。刺繍を生業としている方で、職業病なのか関節軟骨の治癒力向上を付与したポーションをあげても、3ヶ月くらいでまた発症してしまうのです。


「残念ながら、完治はしないですからね。痛くなってきたらまたどうぞ」


 おばあさんから、代金をいただきました。

 ポーションは解毒、治癒力向上など、何種類か作り置きして、それぞれ1000モノ、500モノ等、設定してあります。あ、モノはこの国の貨幣単位で、パン一つがだいたい300モノですね。

 先ほどのおばあさんのように、診察のうえに処方した場合は状態によらず、初診は一律3000モノと設定してあります。彼女は再診なので500モノです。

 もっとぼったくろうかと思ったのですが、庶民にも手が出る価格にしてみました。初診が高いのは、気安くカーライルを頼らないように。忙しく対応に追われるのは、前世の経験だけで十分です。

 ちなみに隣国ガンガーラの貨幣単位はガー。なぜかツボにはまって、笑いをこらえたのは内緒です。


 診察は午前のみで、午後は調薬のために既成ポーション販売のみとしています。店の奥で調薬しているふりをして、私は転移で抜け出していますので店には居ませんけど。勿論、店の外にいる監視に、ちゃんと断ってから出かけることもありますよ。

 午後はクラウドかチェリに認識阻害をかけて、売り子としてお留守番をしてもらっています。


 ちなみに現在、兄妹は正式にテトラディル家に雇われています。父とカーライルの初対面から3日後、父がふらりと屋敷に帰ってきたのです。その時、セバス族兄妹に2、3質問をしてじっと見つめると、あっさり採用してしまいました。メンタリストめ、何を見た。


『そろそろ診療終了か』


 一日の平均患者数は15人ほどです。最近は他の町からも人が来るようになりました。忙しくもなく、暇すぎるわけでもなく、ちょうどいい具合です。今のところ全てが順調です。・・・あの人以外は。


「終わりか? ならばカーライル殿、昼食を一緒にどうだ?」


 監視の一環なのでしょうけど、なぜかテトラディル侯爵である父が頻繁に、こうして様子を見に来るのです。勘弁してほしい。


「では店を留守にする準備をしてまいりますので、少しお待ちください」


 店の表に診療終了の札をかけてから、店の奥にある調薬部屋へ入ります。

 もちろん調薬なんてしませんが、それっぽい道具は揃えました。主に調理に使っていますけど。私は料理って、化学実験の類だと思うのですよ。


「クラウド、こちらに来れますか? チェリに昼食はいらないと伝えてください」

 

 オニキスとモリオンがなにかしたようで、私にはモリオンが、クラウドにはオニキスが常時見えるようになりました。チェリの精霊とは相変わらず仲が悪いようで、彼女には見えません。

 そしてオニキスとモリオンを通して、遠話ができるようになりました。


「今、参ります」


 練習の成果か、モリオンは行ったことのある場所ならばどこへでも転移できるようになりました。私は見える範囲と、一度抱きしめて気配を覚えたものの3メートル以内なら転移できます。

 クラウドは私のやり方を参考にしたようで、彼が転移してくるとこうなります。


『主。気配ではなく、感触を追うからそうなるっす』


 今、私はクラウドの腕の中にいます。どさくさに紛れて、頭のにおいを嗅ぐのはやめなさい。

 3年前に感じていたクラウドの妄信的な危うさは、徐々に方向性を変えてきたように感じます。これはこれで居心地が悪いので、やはり手放すことを考えるべきかもしれません。


『いい加減にしないと、カーラ様に捨てられるっすよ!』


 私の邪な感情を読み取ったらしいモリオンが、慌てて言います。クラウドが名残惜しそうに、私から離れました。

 こら。仕える対象にしていい態度じゃないですよ。


『カーラの父を待たせるのは、よくないのではないか?』


 オニキスがクラウドを睨んでいます。確かに言う通りなので、クラウドに留守番を命じて調薬室をでました。





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