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残滓の閨

続いてみた。


 下手をしたらまる1日、目覚めないかもしれないと心配したカーラは、意外なことに半日もしないであっさり目を覚ました。

 ちょうどいつもの起床時間の事である。ただし、彼女の母国において。

 つまり、この「南国りぞぉと(リゾート)」のような島では夜半にあたる。


「ん・・・? あれ? 暗い?」


 寝ぼけ眼を擦りながら起き上がったカーラは、窓の外へ目をやり、その瞳を大きく見開いた。そのまま暫く動きを止めた後、後ろ手に寝具の上を探り始める。やがて私の体を探し当てると、ほっと息をついてから、こちらを振り返った。


「あれからどのくらい経ちましたか?」


 どうやらなんとなく思い出したらしく、カーラが余裕を感じさせる笑みを浮かべて、私の胸元を艶麗な指ですき始める。

 私は瞬時に人化すると、彼女の手を取り、指を絡めた。


『ほんの数時間だ。大陸では今、日の出を少し過ぎた頃になる』

「あぁ・・・それで」


 自分が何故目覚めたのか見当がついたようで、カーラが複雑そうに眉根を寄せた。

 前世でも30歳(三十路)へ近付くにつれて、目覚ましが鳴る前に目が覚めるようになっていった事を思い出しているようだ。老化を感じる体の変化のひとつらしい。

 もう彼女には年齢など無意味なものと化したのだから、気にする必要も無くなったというのに。「乙女心」とは複雑なものだな。

 

『・・・』

「・・・」


 なんとなく沈黙が訪れ、気恥ずかしさが増してくる。目元をほんのり赤く染めたカーラにちらりと視線を向けられて、ただそれだけなのに魂がぎゅっと締め付けられた。


 こ、これは!

 今こそ、いちゃいちゃにもつれ込む時ではないのか?!

 

 私は絡めていた彼女の手を見せつけるように持ち上げ、その指先にキスをする。そして日中、彼女を「悩殺」できた笑顔を浮かべてみた。色気と言うものが可視化できたのなら、しっかり漏れ出ている―――はずだ。

 思惑通りにいったのか、カーラの目元の赤が濃くなり、紫紺の瞳が泳ぐ。しかし羞恥によって絡めた指が解かれることはなく、逆に彼女によって強固に繋がれた。

 

 いける!


 そう思った私はベッドへ寝そべったままだった上半身を起こし、カーラへ顔を寄せる。いきなり口付けたのでは芸がなさすぎる気がしたので、ぎゅっと目を閉じた彼女の額と自分のそれを合わせて、ほうっと熱い息を吐いた。

 ・・・断じて、怖気づいたわけではない。

 

 そのまま暫く、うるさく騒ぐ心臓と荒くなりがちな呼吸を落ち着けていたら、カーラの瞼がほんの少し開き、私の様子を窺い始めた。


 まずい。

 このままではせっかくの「むぅど(ムード)」が台無しになってしまう!


 私は覚悟を決めると、空いている方の手で彼女の顎を掴んで固定し、薄く開いていた唇へ食らいついた。


「んんっ・・・んぅ・・・ふぁ・・・」

 

 焦ったせいで噛みつくようなキスになってしまい、互いの歯が当たってしまった。しかし幸いにもその衝撃でカーラが口を開けたので、その隙間へ舌を差し込む。戸惑いつつも舌を差し出してくれたので、それに絡め、それを吸い、余すところなく撫でさすった。

 

 ―――もの凄く、気持ちがいい。

 

 蕩けきったカーラの頭の中には私しかいなくて、普段は強固な深層への防壁も無意味なほどに緩くなっていて。無意識に送り込んでしまった精神が混ざり合い、表現しがたい快感を生んだ。

 同じような快感を彼女からも感じ取り、それがまた新たな快感を生む。

 

 ぴちゃ、くちゅ、とわざと音を立てて追い立てれば、彼女の羞恥が膨らみ、それに比例して鼓動が早くなってきた。いつの間にか私の服の胸元を掴んでいた彼女の手が、小刻みに震えている。


 この辺りでいったん引くべきだと判断し、名残惜しく感じながらも唇を離した。

 私と彼女の間に、つっと唾液が糸を引く。荒く息を吐いた途端に切れてしまったそれを追って、彼女の口元へ垂れていた唾液ごと舐め上げた。


 息をつめたカーラと目を合わせて、落ち着かせるために微笑んだ。するとどうしたことか、口を引き結んでむっとされた。

 何故だ。


 何か気に障ることをしてしまったのだろうかと動きを止めた私の肩を、カーラが強く押してきた。抵抗する気のない私は仰向けにベッドへ転がり、その上にカーラが馬乗りになってくる。そしてお返しとばかりに、私の唾液も首筋から口角まで順にぺろぺろと舐めとり始めた。

 這い上がるような快感に身をすくませると、カーラが私の肩口で含み笑いを漏らす。そして頭を上げ、勝ち誇った笑顔で私見下ろしてくるカーラに、魂が締め付けられて、軋んで、悲鳴をあげた。

 

『愛してるっ』

「ふんぎゃっ」

 

 カーラと体を入れ替え、組み敷いて、耳の後ろへ片手を差し入れて頭を固定し、顔中にキスの雨を降らせる。状況の急な変化に驚いてはいても、拒絶を感じないことに味を占めて、耳からうなじへ、首から鎖骨へと撫で下ろす。

 いよいよか、と彼女の夜着に手をかけた瞬間、弛緩しきっていた体が強張り、羞恥による軽い拒絶を感じとった。


 私としては服を着ていようが、いまいがカーラの魅力にさして障りないため、どちらでも構わない。

 しかし服を着たまま致す、「着衣えろ(エロ)」とは高度な性癖らしい。裸体を晒すことが恥ずかしいというのだから、それを回避する有効な手段だと思うのだが・・・。

 せぬ。


 まあいい。

 羞恥を感じなくなるほどに、快楽で頭のなかをいっぱいにすれば解決する問題であろう。


『愛しているよ。カーラ』

 

 まずは無様にがっつくのをやめようと、余裕がある様を装い、色気を滲ませて微笑んでみせる。こちらをうっとり見つめ返してくるカーラの艶姿に当てられながらも、落ち着いた声音で愛を囁ききった。

 

「はっ! わ・・・わた、私もあ、あ・・・あー」


 暫くぼんやりしていたカーラは、急に正気に返ると顔を真っ赤にして恥じらい始めた。その視線が私だったり、その他だったりと、忙しなく移動する。

 彼女が何を言いたいのか察した私は、一言一句聞き漏らすまいと耳を澄ませた。

 

「・・・愛し・・・て・・・います」


 精神を混ぜこんでいるため、彼女の私への愛は身をもって感じている。


 しかし、それでも。

 耳から、言葉で伝えられるのはまた、精神生命体であり、体など仮初めでしかないはずの私に、別の快感を覚えさせた。


 体が熱い。

 精神が焼き切れそうだ。

 

 ついさっき落ち着こうと決めたばかりだというのに、衝動的にカーラへ深いキスをしてしまった。


「ふ・・・ぁん・・・オニキスぅ」


 何度も、何度も、角度を変えながら彼女の口内を蹂躙する。それと同時に、無意識にまさぐってしまっていた柔らかい体の、一際柔らかい所へ触れた時、カーラが今までにない艶めいた声を上げた。


『・・・・・・・・・・・・っ!』

「? オニキ・・・すぅー」


 慌ててカーラへ強制的な眠りを付与して、眠ってしまった彼女を見下ろしながら、たった今、起こったばかりの現象について思案する。


 今、私は彼女の・・・その、む、胸に触れた・・・な。触れてみたいと思いつつ、夢の中でも手を出さなかったそこに触れた、な。

 するとどうだ? 私の体はどうなった?


 無意識に触れた時は良かった。あの柔らかくて、とにかく言いえない程に柔らかくて、てのひらに収まらない、吸い付くような、力の加減で形を変えてしまう柔らかさの―――。


 待て待て。

 思い出すのはそこではない。


『・・・』


 私は意を決して、先程の現象を確認すべく、カーラの胸元へ手をのばした。


『・・・っ! ぐぅぅぅぅぅぅっ!!』


 ―――溶けた。

 触れる直前に。私の体が。

 

 どうやら、焦がれ続けたせいなのか。彼女にそういう意図で触れようとすると、精神が焼き切れそうになる・・・らしい。

 そして、焼き切れそうな精神を無理に繋ぎ止めると、実体が維持しきれなくて溶けてしまう・・・ようだ。


 ―――なんたる不覚!


 かと言って、切れた挙句にいろいろやらかして、覚えていないのも面白くない。


 ・・・・・・・・・ま、まぁ、いい。

 まだ2人きりになってから、1日目だ。まだ余裕はある。


 私は精神が一番落ち着く犬の姿へ変化し、カーラの枕元へ体を伏せた。



おかしいな・・・朝チュンさせようと思って書き始めたのに。

予想外にオニキス氏が拗らせてた(笑)


やはり挿し絵欲しさに応募いたしましたネット小説大賞についてですが、残念ながら一次選考通過にとどまりました。

懲りずに頑張ろうと思います。


同情するなら挿し絵をお恵みください。

ファンアートもお待ちしておりますわよ!

|ω・`)チラッ



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