表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/154

残滓の類

閑話です

 カーラが眠ってしまったのを確認して、そっとベッドから降りる。起こしてしまわないように隣室へ移動した。結界は万全なので、離れても彼女の安全面に問題はない。


 今から秘密の特訓タイムだ。

 私の力がいくら万能に近いとはいえ、練習しなければ自在に使えるようにならない。カーラの役に立てるように、いつでも守れるように、努力は惜しまない。


 カーラは転生者だからなのか、自分の命を軽く見ている節がある。さすがにやり直しのきく「げぇむ」だとは思っていないようだが、死ぬときは死ぬと達観しているように感じるのだ。

 それは人間関係にも表れている。来るものは警戒し、去る者は追わず。あまり近づかないよう、一線を引くのだ。そして好かれようと努力はしない。

 彼女の前世の記憶は読めるが、その時の感情は読みづらい。他者に対する警戒心は前世に理由があるか、「しなりお」を意識しているかのどちらかだろう。


 まあ、私には心を開いているようなので、それに関しては問題を感じていない。だが少しでも長く一緒にいるためには、少しでも長く生きてもらわなければならない。


『主の主の黒様』

『モリオンか』


 私と同じ黒だからか、モリオンの気配はわかりづらい。実はかなり驚いたのだが、何でもないよう装う。


『その呼び方はどうにかならないか? 私はお前をモリオンと呼ぶ。お前は私をオニキスと呼べばいい』


 モリオンの耳と尾が力なく垂れた。


『無理っす!』


 力一杯否定された。契約者同士はともかく、その精霊である私たちに上下関係はない。そんなもの必要ない。


『主の主様と、主の主の黒様は恩人っす! 呼び捨てなんて絶対に嫌っす!』


 どういう事かと眉をひそめると、モリオンが腰を下ろしてこちらを見上げた。


『主の妹様を助けてくださらなかったら、たぶん主の精神は崩壊したっす』


 宿主の精神の崩壊。これは精霊にとって特別な意味がある。

 私たち精霊は契約なしに、この世界に直接干渉することはできない。寄生状態では宿主の望むまま、ただ力を差し出すのみ。

 だが例外がある。それは宿主の精神が崩壊したときである。「命」に宿る本来の精神が崩壊したとき、精神体である精霊は「命」を乗っ取ることができるのだ。そしてこの場合は「命」の終わりに引きずられる事なく、元の世界に戻ることができる。

 実はこれを「人」ではない、精神の希薄な「命」で行っている「色彩」どもがいて、それが「魔物」と呼ばれているのだが・・・まあ、別の話だ。


『主の妹様は、主をかばって負傷したっす』


 生きていけるよう教育を施されているとはいえ、精神はまだ子供だ。自分をかばったせいで死んでしまうという罪悪感、身内の死という孤独には耐えられなかっただろう。


『恩を感じているのはわかった。だがもう少し気安く呼んで欲しい』


 モリオンが考え込んだ。


『カーラ様の黒様?』


 あの兄妹といい、モリオンといい・・・なぜ「の」を多用したがるのだ?


『オニキスでいい』

『ではオニキス様で!』


 モリオンが満足げに私の周りを走っている。数少ない、というか私も初めて自分と類を共にするものをみたが・・・こうも騒がしいとは。

 悪くないと思う私もいるが、大部分で煩わしい。

 あぁ。今夜は特訓ができそうにないな。

 


ミスが目立つようになったため、投稿ペースを落とします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ