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7/13

駅伝大会の結末

5月13日、体育祭(駅伝)当日。


僕は「チーム生徒会」のメンバーと共に円陣を組んでいた。


「緊張するなぁ」


そう言ったのは一番手のナイトである。

しかし、ナイトも1か月の訓練で、10キロを走破できるほどの体力は身についていた。

そんな僕はと言うと、妙にすがすがしい気分だった。

緊張はないと言えば嘘になるが、やれるだけのことはした。

はっきり言って、自信はある。

こんな気持ちは生まれて初めてかもしれない。


「皇帝、いい顔してますね」


そう言ったのはポーンだ。


「そ、そうかな?」


ちょっと照れ臭くなり、そう返事をした。


「みんな、自信を持って、絶対に一位を取るのよ。ナイト、ルーク、ポーン、あなたたちで皇帝が有利になるよう、圧倒的リードを作るのよ」


「おうよ!」

「了解!」


ルーク、ポーンが勢いよく返事をする。


「頑張るよ、皇帝」


ちょっと控えめにナイトが答えたが、それでも泣きそうなほど嬉しかった。

そして、僕たちはコースに向かった。


ナイトができるだけ前の方に陣取る。

当然のことだが、後ろにいるより前の方が有利だ。

僕と、他の2人はコースの外でスタートを見守る。

ひしめき合う開始位置。

そして、パアン!と合図が鳴った。


ナイトの懸命の走りもあり、序盤は先頭集団に食らいついた。

作戦では、ここでできるだけ離されないようにし、ルークとポーンで一気に引き離す。

先頭集団は陸上部、野球部、サッカー部といった体育会系集団に占拠されていたが、その中で演劇部のナイトが奮闘するという異例の事態だ。


「頑張れーっ」


僕は思わず声を張っていた。

そして、先頭集団の後方、やや遅れてナイトが戻って来た。


「はあっ、はあっ」


「よくやった!」


とルークがバトンを受け取り、猛スピードで戦闘集団に食い込んでいった。

無駄のないランニングフォームで、一気に追い上げ、追い越す。

先頭から飛び出して、そのまま独走態勢に入った。

しかし、それを機と見て、ペースアップを図る生徒が出てきた。

陸上部の長距離のエース、村上疾風(むらかみはやて)だ。


「出てきやがったか!」


村上とルークはほぼ互角の走りを見せた。

そして、ややルークの方が早く、ポーンにバトンを渡した。


「ぜえっ、ぜえっ」


ルークはゴールすると同時に倒れ込んだ。

ポーンと陸上部が接戦を繰り広げる中、ノーマークのテニス部が追い上げてきた。

そして、3人が一線に並ぶ。

次の走者まであと1キロ程度か。


僕は開始線の前に立った。

そして、隣にいる2人を見た。

ほんとに、誰が仕組んだのだろうか。


霧島がアドレナリン全開で、バトンを待っている。


「こいやあああああああああ!」


そしてもう1人は、柿崎だった。

僕は無意識のうちに霧島を通り越して柿崎の方を見ていた。

向こうも何か言いたげにこちらを見た。


「お前か、張り合いないな」


そんなことを思ってるのかも知れない。

でもこれで勝って対等になるんだ。

そして、あの時言えなかったことを、言ってやる!


バトンが到達したのはほぼ同時だった。

だが僕が一歩前に出た。

ノールックでバトンを受け取り、ロスが生じなかったためだ。


「!?」


他の2人も目を見張る。

こいつにこんなテクが!、と言いたげな感じだ。

霧島が熱くなり、勢いよく前に出る。

だが、長距離は熱くなった方が負けだ。

体力の全てを走ることに回さなければいけない競技のため、ああやって感情を高ぶらせて走ればあっと言う間にバテるだろう。

よって、相手は霧島ではなく、すぐ後ろで機を伺っている柿崎だ。


柿崎は僕のすぐ後ろについている。

僕で風をガードし、ゴール間際で温存した走りで一気に勝負を決めるつもりのようだ。


(スリップストリームだ)


そんな言葉が頭をよぎった。

このままでは柿崎の狙い通りになってしまう。

ピッタリと後ろを走っている。

何か手を打たねば……


僕はペースを上げた。

タフネスで体力が底上げされていることに賭けたのだ。

徐々に差が生まれる。


「ぐっ、はあっ、」


しかし、これは明らかなオーバーペース。

しかもまだ2キロを残している状況だ。


とっくに霧島はリタイアし、僕と柿崎の2人での優勝争いだ。

だが、気持ちが折れるのが先か……

もう走りたくない。

死んじゃうよ……

これ以上走ったら死んじゃう!!


その時だった。


「皇帝!頑張れーーーっ!」


死、という言葉で頭が埋まりそうな時、力が底から沸き起こるような感覚。

ビショップ、ルーク、ナイト、ポーン、

みんなが力をくれた。


「うおおおおおああああああっ」


僕は叫びながら走った。


「はあっ……はあっ……」


僕はゴール地点で仰向けに倒れていた。

横には柿崎もいる。

勝ったのか?……

僕は立ち上がり、柿崎に手を貸した。

柿崎はそれを受け取り、立ち上がる。

そしてこう言った。


「一緒に、帰んない?」

「……おう」









よわむし○ダルみたい?

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