表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/13

エンディング 

7月になり、いよいよ夏休みも近づいてきた。

しかし、一つ気になることがあった。

あれから闇木は学校に来なくなってしまったのである。

このクラスは出席がすべてと言っても過言ではない為、ほぼ100パーセントの生徒が毎日来ている。

唯一、一番後ろの角の席だけが埋まっていなかった。


1時間目の数学の授業。

カカカッとチョークで微分積分の公式が黒板に書きだされていた。

みんなそれをノートに書き写していく。

さっぱり理解できない公式を書きながら、だんだんと頭の働きが鈍っていった。

そのまどろみの中で、僕は無意識に闇木のことを考えていた。


最後にあったのは地下だ。

あいつはみんなを地下に幽閉するつもりだった。

何でそんなことができるのか?

そんなことをして、罪悪感にかられはしないのか、と思った。


闇木は本当に何も感じないやつだったのか?

記憶を遡っていくと、ある出来事が思い出された。

それは、最初に会った時だ。

闇木は窓から飛び降りようとしていて、僕がそれを止めた。

そして、飛び降りようとした理由を聞いた…


その時、僕ははっとした。

闇木は、両親のサイフからお金を盗んだ罪悪感から、飛び降りようとしたんだ。

闇木にも、そういう感情はあったんだ。


それに気づいて思わず僕はガタッ!と席を立ってしまった。


「あったんだ!」


と授業中なのに、一人で叫び声を上げた。


「屑木君、夢の中でワン○ースでも見つけたのかな?」


先生にそう言われ、睨み付けられる。


「す、すみません」


めちゃくちゃ恥ずかしい気持ちで、急いで席に着いた。

周りの生徒たちにも笑われてしまった……

うるせーな屑木、と目を覚ました霧島はそう言って、また眠りについた。











暗く、どんよりと濁った空気の中に、闇木はいた。


(ビビッテンジャネエヨ)


心の中で声がした。

霧島にいじめられてから、心の中に住み着く黒い声。

闇木の手にはカッターナイフが握られていた。


(キリシマヲ、ヤリニイケ)


(嫌だ、やりたくないよ!)


闇木は懸命に自分の中の声に逆らっていた。

しかし、それを拒もうとすると、心臓を握りつぶされるような苦しさに襲われる。

今まで、すべてこの声に従って来た。

逆らったら自分でもどうなるか分からなかったためだ。

助けて、助けて……という声が部屋から漏れだす。

闇木はこの声から逃れるために、手首にカッターナイフを当てがった。

ぐぐ、と肉に刃が食い込む、

闇木は目をつぶり、力を込めた。











ピーンポーン……


(……!)


インターホンのチャイムに反応し、一瞬手が止まった。

だが、関係ない。

一気に引き切ろうとした。


(母さん、ごめん……)


その時、


「リン!お友達が会いに来てくれたわよ!」


下から母親の声がし、思わずカッターを放り投げた。

ガタガタ、と手が震え、体全体が震え出した。

今の声が無かったら、間違いなくやっていた……


「だ、誰が来たの?」


上ずった声で返事をし、下に向かった。

そこにいたのは、屑木だった。











僕は闇木の家に行くことにした。

このままうやむやにしたくないと思ったからだ。

闇木の家の住所を先生から教えてもらい、スマホで場所を検索してここまで来た。

近くの公園のブランコを漕ぎながら、二人で話をした。


「俺は、心の中の黒い声に逆らえなくなってしまった」


闇木は打ち明けてくれた。

正直、それがどんなものかは僕にも分からなかったが、闇木のやつれた顔を見て、苦しんでいたんだということだけは分かった。


最後に、僕はこう言った。


「あの時、君に友達ができればって思ったからネックレスを渡した。生徒会のメンバーと絡めば、自然と友達になれるから」


そして、僕の前の皇帝もぼっちだった僕を見て、ネックレスを渡した。

こいつならいい学校にしてくれるとか、そんな深い意味はなかったんだ。

部活とかでも、自然と友達はできる。

でもそういうのに躊躇してしまう性格って見抜いたから、無理やり託して来たんだ。


「一人で悩んでたら暗くなるだけじゃん。だから、友達って大事だよね」


「……」


闇木は、コクリとうなずいた。


「みんなと一緒なら、多分楽しいよ」


僕は闇木に手を差し出した。

そして、光の中に連れ出した。


終わり







バッドエンドとハッピーエンドを用意してたんですが、やっぱりハッピーエンドの方がいいですよね。ということで、明るい終わり方になりました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ