勝負の行方
僕たちは急いで外に出て、校舎の脇にある階段に向かった。
「あっ!」
そこにはビショップこと、高峰さんが待ち構えていた。
一番戦いたくない相手がここにいるとは思わなかった。
それでも、僕はやらなきゃならない。
「……どいてください」
僕は意を決して、剣を抜いた。
しかし、相手は剣を抜く気配はない。
目には、何かを訴えかけるものがあった。
そして、
「闇木君がこれから何をするのか、分かってしまったの……」
唐突に高峰さんはそう切り出した。
「どういうこと?」
僕は思わず聞き返した。
「しばらく闇木君といて、彼の考え方が分かって来たの。そして、情報処理室に向かうと言ったとき、ある一つの考えがよぎった」
ゴクリ、と唾を飲み込んだ後、高峰さんはこう答えた。
「彼は、私たちをこのゲームの中に閉じ込める気だと思うわ」
「えっ!」
僕は何かひやりとしたものが、肺に押し寄せる感じがした。
閉じ込めて、その後はどうなるんだ……
「あなたにとって、私たちが道を示す灯台の役割だとしたら、闇木君にとって私たちは、暴走を止める制御装置のようなもの。もし私たちがいなくなったら、彼は何をするか分からない」
「どうすれば、いいの?」
「ネックレスを渡したのはあなたでしょ」
そう言って、高峰さんは剣を抜いた。
「すぐにここから脱出して。恐らく今から情報処理室に向かっても遅い。覚悟はいいわね?」
「屑木!」
「屑木君!」
みんなが僕の名前を叫んだ。
グサリ……
僕は高峰さんの剣を胸に受け、そのまま血を吹いて倒れた。
「……があっは!」
僕は目を覚ました。
ガチャリ、と扉を開ける。
それと同時に、プツン……と球体の電源が切れ、モニターなどの光が消えた。
(電源を切ったのか……)
僕はそっと球体から出て、闇木を探した。
闇木は球体に電源を供給している動力盤の前に立っていた。
盤の扉は開かれ、ブレーカーがオフになっている。
気配を察して、闇木は振り向いた。
「……お前か。お前なら生かしておいてもいい。ただし、このことは絶対に秘密ってのが条件だがな」
闇木はそう言った。
「もとに戻せ」
僕は勇気を出し、そう言ったが、闇木は無表情で僕を見つめている。
それが逆に不気味だった。
「俺はお前の闇の部分だ。たまたま俺が今回の被害者だったが、お前もこうなりえた」
「……どういうこと?」
「もしお前が霧島にいじめられていたら、どうなっていたかな?その力を使って、奴を排除しようと思ったはずだ」
話しの意図が読めなかった。
闇木は分かりやすくこう言い換えた。
「お前は俺を助けた。それは、俺とお前が似ていたからだ。違うか?」
確かにそうだ。
放っておけなかった。
「それは認めるよ。でも、僕が君の立場だったとしても……」
その後の言葉がのどで詰まった。
なりえたかも知れない、そう思ってしまったのだ。
霧島のヒドイいじめを受けて、もし心を病んでしまったら。
闇木のように、みんなぶっ殺したい、そんな風に思っていたかもしれない……
そこで皇帝という立場が転がりこんで来たら……
「否定はできない。そうだろう。人間には正しいことをしたいという欲求と、普段は抑えられているが、悪いことをしたいという欲求がある。よく、みんな死ねばいいのに、とか言うやつがいるだろ?そういうやつさ。俺なら、お前のそういう欲求を叶えてやれる」
僕はその話を聞いて、だんだんむかついてきた。
確かに一時的に殺したいとか、思うことはあるだろう。
だけど、もし実際に殺してしまったら、その相手のことを思い出すたびに苦しくなるに違いない。
音楽のテストをさぼった時の罪悪感、恐らくそんなものの比じゃないだろう。
「苦しくないの?」
「は?」
「ここが、痛くないのかって、聞いてるんだ!」
僕は、拳でドンと胸をたたいた。
「悪いことだってわかってんなら、やっちゃダメだろっ」
僕は全力で闇木に殴り掛かった。
あまりにも勢いよく殴りつけたため、闇木はそのまま倒れて意識を失ってしまった。
僕は急いでブレーカーをもとに戻し、再び球体に電気が供給された。
それによってゲームは再開し、皇帝が離脱してから5分以上経過したため、自動的に相手の負けが決まった。
こうして、僕たちは勝者となり、新しい皇帝としてまた新たに生活がスタートした。
ナ○トっぽいですよね?
自覚はあります




