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クイーン登場

「私の名前は小夏みかん。またの名をクイーン」


そう名乗った目の前の女子生徒は、ポーズを決めてそう言った。

ポカーンとして思わず見とれてしまったが、


「あ、あの、今の皇帝を止めたいので、手を貸してもらえませんか?」


と聞いた。

しかし、クイーンは思わぬことを口走った。


「タダで?」


「え?」


「だから、なんでタダで協力しなきゃいけないのかって、いってんの」


「あのお、お金が発生するんですか?」


「なんでお金なのよ。私はそんなもの欲しくない」


お金じゃないなら何が欲しいんだ、と思ったので聞いてみた。

すると、急にクイーンは照れたような素振りをし、モジモジしながらこう言った。


「あ、あの……滝瀬先輩の汗のしみ込んだTシャツ……」


「は?」


「な、何度も言わせないでよ。滝瀬先輩のTシャツで手をうってあげるって言ってるの」


何を言っているのか。


「あの、誰ですか。滝瀬先輩って」


「何で知らないのよ!ボクシング部の、あなたがルークって呼んでる男子よ!」


「あ、ルークって滝瀬っていう苗字だったんだ!」


どうやらクイーンはルークこと滝瀬先輩のファンらしい。

最近ルークとは構内で会っても話をしていない。

そういうルールだからだ。

しかし、滝瀬という名前は収穫である。

これで相手の名前を呼べる。


「分かったよ。ルークのTシャツを貰ってくるから。小夏さんは何年で何組なの?」


「2年2組よ。あと、なっちゃんでいいわ。同い年でしょ」


僕は放課後、ルークがいつも走っている校舎の外の道端に座って待っていた。

30分くらい待っていたら向こうからルークとボクシングのメンバーが走って来た。

ルークは僕を見ないで通り過ぎようとする。


「滝瀬先輩!」


そう叫ぶと、ルークは走るのをやめてこちらに来た。


「なんだ?」


僕は遠回しに、クイーンを見つけたこと。

そして、その交渉材料として、ルークのTシャツが必要ということを告げた。


「……部室で待ってろ」


ルークはそう言って、走り去った。


Tシャツを手に入れ、翌日、なっちゃんのところに向かった。


「こ、これが滝瀬先輩の……!」

目をキラキラさせて、なっちゃんはそれを受け取った。


「ありがとう。家宝にするわ」


なっちゃんって、ちょっと変態だよなあと思いながらも、本題に入った。


「じゃあ、皇帝を止めるのに協力してよ」


「分かったわ。その方法は、決闘(デュエル)を申し込むこと。私がそれを申し込んだら、相手は拒否できない」


僕はその内容の説明を受けた。

校舎の地下に存在する仮想現実シュミレーターを使い、皇帝陣営と女王陣営で戦うのがデュエルとのことだ。


「なんか、ゲームみたいだね」


仮想現実シュミレーターがなんのこっちゃか分からず、そんな返事になった。


「なめない方が良いわよ。ある皇帝が、数年前に学校の予算の大半をつぎ込んで有名企業に開発させたシュミレーターで、まだこれほどリアルなゲームは世に出ていないわ。全部で10台のシュミレーターがこの学校の地下に存在する]


「へ、へえ……」


「あなたゲーセン行かない?ガン○ムのモビルスーツのコックピットをイメージしたやつが置いてあって、その中でゲームをするんだけど、見た目はそれに似てるわね」


そんなゲーム機学校に置いちゃダメだろ、と思ったが、デュエルはそれを使って行われる。

確かに、決闘なんて物騒なことを実際やるわけにもいかないだろう。


こうして、メンバーを揃えて、皇帝にデュエルを申し込む運びとなった。

必要なメンバーは僕となっちゃん、あと3人だ。


僕はまず柿崎を誘った。


「へえ、そんなもんがあるのか。ちょっとやってみたいな」


柿崎は簡単に仲間に加えることができた。

そしてあと2人だが、僕は闇木がああなってしまった原因となる生徒のもとに向かった。


「霧島」


「あ?」


昼休みに霧島に声をかけた。

霧島が退学になろうが、僕の知ったことじゃなかった。

こいつに関しては、同情してやるつもりはない。

だが、闇木のことはほっとけない。

仮にこのまま闇木を倒して、霧島が何食わぬ顔をして学校にいることになったとする。

だがそれは虫が良すぎる。

責任を自分で取らせなければならないと、僕は思った。

だからこいつを誘ったのだ。


「あの野郎……」


霧島は怒りのこもった声を出した。


「協力してやるよ……」


こうして、残るメンバーは一人だ。

適当なメンバーが思いつかなかったので、なっちゃんの友達をメンバーにした。

そして、役割分担を決定した。


クイーンはなっちゃん。

ナイトは柿崎。

ルークが霧島。

ポーンが僕だ。

ビショップは小山田さんというなっちゃんの友達がなった。


決戦当日。

僕らは皇帝室に乗り込んだ。

そこには顔なじみのメンバーが揃っていた。

そして、闇木……


「ようこそ、我が城へ」


闇木が邪悪な笑みを浮かべ、そう言った。


なっちゃんが前に出た。

そして、


「デュエルを申し込むわ」


ネックレスを確認し、クイーンの証明がなされたため、正式にデュエルが行われることとなった。




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