学校の皇帝
僕は学校が嫌いだ。
僕は学校ではヒーローになれない。
勉強もダメ、スポーツも苦手、特に球技はからっきしだ。
人間一つくらい取り柄があるはずなんだけど、僕には何もない。
そんな僕に、突然転機は訪れた……
僕の名前は屑木裕。
私立帝国高校の一年。
季節は2月で、肌寒い日が続く。
校舎の裏側の人気のないところで僕はいつも弁当を食べる。
理由は友達がいないから。
最初の頃は前の席の柿崎ってやつが、話しかけてきてくれてた。
前のやつと仲良くなるのってベタなパターンだとは思うけど、嬉しかった。
人見知りの僕に友達ができたって思ったから。
でも、すぐに僕の方が柿崎を裏切った。
裏切ったっていうか、ある出来事で自信を無くして、話せなくなってしまった。
理由は中間テストだ。
僕は塾に通って、周りより1歩進んだ勉強をしていたハズだったが、結果はどの科目も平均点以下。
そして、前の柿崎はというと、全科目80点オーバー。
テストが帰って来た時は、本当に顔から火が出るんじゃないかってくらい恥ずかしかった。
その日から僕は話ができなくなった。
周りの人間より僕が下に思えたからだ。
柿崎の方も、突然そんな風になった僕を理解できず、話しかけてくれなくなった。
こんな校舎の裏でも、楽しそうな話声は聞こえてくる。
本当は僕だってあの輪に入りたいのに。
今なら全然気にしないで柿崎とも話せると思うけど、もう遅いかな……
「そんなとこで弁当食ってて、おいしいか?」
突然後ろから声をかけられた。
「おわっ!?」
ビクっとなって弁当をひっくり返してしまい、無残にも砂まみれになった。
「あっ!わ、わりい」
僕は、声をかけてきた相手を思いっきり睨んだ。
その相手はどうやら先輩のようだ。
髪は茶色で、首からシルバーのネックレスを下げていて、チャラそうな感じだ。
「何か僕にようですか?」
少しイラだった風に問う。
「俺、今年で卒業でさ。それで、王位を誰かに継承しないといけないんだ」
「なんですかそれ?僕と関係があるんですか?」
「まあ、その、王位を継いでみないか?」
そのセリフを僕は全く理解できず、からかっているのだろうか?と思ったくらいだ。
先輩と思われる男は、まあちょっと話そうぜ、とあぐらをかいて説明を始めた。
その内容はこうである。
この学校には「皇帝制度」というものがあるらしい。
例えば体育祭とか、合唱コンクールとか、そういう行事は強制参加が普通だ。
しかし、この学校では「皇帝」に選ばれた生徒がその行事をやるかやらないか、全然違うことをするか、決定する権利があるとのことだ。
そして、その王位は先輩から後輩へと継承されるらしい。
継承の方法は簡単で、先輩が選んだ後輩にその証のネックレスを渡すだけで済むとのことだ。
「それを何で僕に?」
率直に聞いてみると、先輩はこういった。
「優秀なやつが皇帝をやっても何も変わらないだろ。お前の力でこの学校を楽しくしてみろよ」
先輩はネックレスを外して、こちらに投げた。
とっさに僕はそれを受け取った。
「じゃあ、放課後校長室に行って、先輩からネックレスを受け取りましたって報告してから帰れよ」
先輩はそう言って去っていった。
状況を理解できないまま、僕は先輩を見送った。