002 ギルマスのおっさんがめちゃめちゃ優しかった件。
次の日。
昨日俺はステーキを食べて、フカフカのベットで眠った。
やばい。もしかしたら、この生活から離れられなくなるかもしれない。
まあ、今日新たに297万セルが手に入るんだ暫くは、こんな生活を続けられるのかもしれない。
そんなことを考えつつ俺はギルドに向かった。
ギルドでは、フレミーさんが待っていてくれたみたいだ。
「来ましたね、カワサキさん、此方へ。ギルド長がお待ちです。」
ギルド長?名前からして、ギルドで一番偉い人なのだろうが、その人が一体なんのようだろうか?
疑問に思いつつもとりあえずついていく。
連れて行かれた場所は、いつもの広間さらに奥、本来ならギルド職員しか入れないであろう場所だった。
まあ、流石に大金だ。
その位の配慮はあってもおかしくは無い。
そんな、立ち入り禁止のスペースで、案内されたのは、一番立派な扉のついた、大きな部屋だった。
やばい、もしかして俺、なんかやらかしたのだろうか?
身に覚えは無いが?
その部屋にいたのは筋肉むきむきの、おっさんだった。
この人がギルド長だろうか?
「よう!よく来たな。お前がゴブリンロードを倒したって言う新人か?」
部屋に着くなり、おっさんが俺に話しかけて来た。
とりあえず、頷いて置く。
「あの、どちら様でしょうか?」
怒られないか心配だが、恐る恐る聞く。
「ああ、悪かったな。俺の名は、ブレイド=ウォンツだ。ここのギルド長をやっている。よろしくな。」
「え、ああ、よろしくお願いします。自分はシオン=カワサキです。」
「おう!知ってる。で、お前に単刀直入に聞くが、こいつどうやって、倒したんだ?」
「えっ?」
「いや、実はな。昨日のゴブリンロードなんだがよ。よくよく検査して見たら、変異種だったってことが分かったんだよ。ゴブリンロードまでなら、新人でも倒した例は過去にあるが、変異種となってくると、話は別だ。わかるだろう?」
「いや?あの、すいません。自分は余りものを知らなくて、変異種とは?」
てか、この人、めちゃくちゃ怖い。
多分俺なんか一瞬で殺されるだろう。
それくらいに迫力がある。
「なんだ?そんなことも知らないのか?変異種って言うのはな、通常より強力な個体のことだ。ほら、人間にもたまにいるだろ?普通より、明らかに強い。天才って言うのがよ?」
「ああ、なるほど。ですが、それとこれとはなんの関係が?」
俺がそう聞くと、ブレイドさんは呆れたようにため息をつく。
「だから!お前が昨日倒したのはゴブリンでもゴブリンロードでもなく、ゴブリンロードの変異種だったんだよ。で、ただでさえゴブリンロードはAクラスなのに、その変異種となると、強さはA+からSクラスにもなる。それをランクDのお前がどう倒したのか聞いてんだよ。」
少し勢いを強くして、ブレイドさんが俺に問う。
そんなブレイドさんの迫力に、気圧されながらも、俺は覚えれいる限りのありのままを話した。
「なるほどな、つまりお前がゴブリンに向かって思いっきり叫んだら、ゴブリンが耳から、血を流して死んだと。なるほど信じよう。って信じられるかボケ!!」
俺は正直に答えたのにもかかわらず、ブレイドさんにノリツッコミで怒られました。
理不尽な。
まあ、確かに俺がそんな話を聞いても十中八九信じないけど。
そんな俺にずっと立っていたフレミーさんが助け船を出してくれた。
「あの、ギルド長。おそらくは、カワサキさんの魔法が関係していると思われます。」
そうか、魔法か。
俺も思わず納得する。
そう言えば俺の魔力がトップクラスなのを忘れた。
そんなフレミーさんの言葉にブレイドさんは頷きながら考える。
「そうか、魔法か。それは考えて無かったな。おい小僧。俺にスキルを見せてみろ。」
そう言ってどこからともなく、水晶を出すブレイドさん。
いや、マジでどこから出した?
それはともかく俺は言われたとおり、水晶に手を置く。
すると、昨日と同じように水晶が淡く光る。
しかしまあ、書かれてる内容に余り変化は無い。
いやレベルが1から20になって、DだったステータスがD+になっている。
あれ?レベル上がりすぎじゃね。
そんな俺のステータスを見て、頷くブレイドさん。
「おい、小僧。この指揮魔法ってのと、音響魔法ってのと譜面魔法ってのはどういう魔法だ。」
「いや、自分もわからないんですよね?」
「わからない?なんでお前は自分の魔法がわからないんだよ。」
「実は、使い方がわからないんですよ?」
「はあ?まあそれはともかく、この魔法が原因って言うのは間違いないだろうな。」
そこまで、言うとブレイドさんはフレミーさんと無言の会話を行う。
一体どんな意味があるんだろうか?
そして、話終えると、俺の方に向き直った。
「よし、小僧。お前には今から3つの報酬を与える!」
あれ?なんで3つ?
報酬は、297万セルだけだろ?
まあ増えるに越したことは無いが。
そんな俺の戸惑いに気づいたのかブレイドさんが説明する。
「ああ、説明がまだだったな。実はな、冒険者ギルドには裏ルールみたいなもながあってな、一定以上の活躍をし、なおかつ、その活躍をギルマス認められた冒険者は、その活躍に値する、ランクより1つ低いアンクアまで、アップされることができるんだ。」
おお!つまりは、俺はAランクまで一気にアップできるってことだ。
ありがたい。
これでまた一歩魔王に近づけたことだろう。
「そしてもう一つが800万セルだ。」
「あれ?報酬は三百万のはずじゃ?」
「ああ、そのことだが、今回は今後予想されるはずだった、状況を鑑みて、俺から報酬を追加しておいた。」
「あ、ありがとうございます。」
凄いなこの人、めっちゃ太っ腹だ。
しかし、こんな大金どうやって使おう?
「最後は?」
「ああ、最後はこれだ。」
ブレイズさんは、自分の腰にぶら下がった袋を一つ取ると、俺に向かって投げて来た。
「あの?これは?」
「ああ、それはアイテムボックスだ。自分の魔力量に比例して、許容量が増えていく仕組みだからお前にはピッタリだろう。」
「アイテムボックスですか?でもこれじゃそんな大きなものは入らないですよね?」
「いや?それは生き物と流動物こそ入らねえが、それ意外なら結構な大きさまでは入るぞ?」
マジか。便利すぎる。流石はファンタジーの世界だ。
一体どうゆう仕組みなんだ?
まあ、俺に分かるはずも無いが。
「あ、あとそうだ。お前魔法が使えないんだったよな。じゃあ俺の知り合いの魔導師を紹介してやるよ。」
「え?あ?ありがとうございます。」
やばい。この人優しすぎる。
人は見かけによらないというがどうやらそれは本当だったみたいだ。