1-7 覚醒は負けフラグ
視点が何回か変わるので読みにくかったらごめんなさい
何が起きた?何故俺は殴られた?あのガキは動ける状態じゃなかったはずだ何故だ?
「さぁ、第2幕の始まりだ!」
っと俺を見下ろしながらガキが言い放ってきた。
「何が第2幕だ!お前は俺に会った時点で終幕なんだよ!それに何故動けれる?ただの人間だと既に死んで・・・・・・。」
咄嗟に俺は叫んだが、ガキの目を見た瞬間、先ほどまでの疑問が全て解決した。故に言葉に詰まってしまった。
ガキの目が赤くなってやがる。
そうかそういうことか。
「これは傑作だ、死にかけて力に目覚めるとわ。それで同じ土俵に立てれたから第2幕か?俺を笑い殺す気か?目覚めたばかりのお前に親切心で教えてやる。お前の力じゃ俺には勝てない。何故ならお前のその力はこの世界で最弱のヴァンパイアなんだからな!」
そう、こいつの能力はヴァンパイアだ。それは間違いない、その証拠に血のように真っ赤な目をしてやがる。
ヴァンパイアの力は、普通は強いイメージがあるかもしれないが、そんな事は無い。単に身体能力がただの人より少し高くなって、自然治癒能力が上がり、血を吸った者を眷属に変えることが出来る。ただそれだけだ。
獲物を逃がされたから、こいつはぶち殺してやろうと思っていたが、気が変わった。
「残念だったなぁ、そんなへっぽこな力に目覚めてしまって。だが安心しろお前は俺の糧にしてやるから。能力者を喰うのは初めてだ、ヴァンパイアって美味しいのか?」
そう、俺はこのガキを喰うことにした。
「悪いそんな趣味無いので遠慮だな。」
「なにか勘違いしていないか?俺が言ったのは文字通り食べるってことだぞ?」
それを聞いたガキは目が点になりやがった。面白いからもう少し煽ってやるか。
「人の肉は意外と上手いぞぉ。まぁまだ若い女しか喰ってないけどな。まぁ肉にしか興味ないから持ち物とか服とかはその場に置いて帰るんだが、面白い事に行方不明やら神隠しとか世間では騒がれていたなぁ。おれが食い殺したともしらずにな。笑えるだろう?」
俺が笑いながら言い放つと、おうおう面白いくらい肩を震わせてやがる。怒ったか?それとも恐れたか?
「犯人はお前だったのか・・・・・・。なら、殺すのに躊躇はいらねぇよな?」
どちらもはずれで、こいつ笑ってやがる。
なんだこのガキ?俺を殺す?馬鹿か?力の差があるとわかっていないのか?だったらもう一度教えてやるか。食うのはその後でも遅くは無い。
「かかってこいよ?俺を殺すんだろ?少し遊んでやるよ。」
そうおれが煽ると馬鹿正直に殴りにきやがった。やはりガキだ、チョロすぎるわ。
ふむ、結構速い。だが、俺のほうが上だ。俺は殴りかかろうとしてきた腕を掴む。
まさか掴まれると思っていなかったのだろう。驚い顔をしてやがる。
俺はこいつの勢いを利用したまま投げ飛ばした。
「こいつはおまけだ!」
そういうと全速力で走り出し、飛んでいったガキに追いついて追撃に殴ってやる。
ガキは受身も取れず木に背中からぶつかりそのままうつ伏せになった。
俺はガキに近づき、頭を掴んで顔をこちらに向かせた。するとどうだろう。こいつは俺を睨んできた。
気にいらねぇ、まだ諦めてないのかよ。
「そんな目が出来ないようにボコボコにしてやるよ!!」
俺はそう言うと蹴り飛ばし、飛ばした方向に先回りをしてまた蹴り飛ばす。それを繰り返した。
まぁ俺の能力なら軽く出来る芸当だな。
時間にして5分くらいだろうか、けり続けるのも飽きてきたので最後に思いっきり力を込めて公園の遊具にぶつけてやった。
おっと少しやりすぎてしまったか?まぁ死んだら死んだ時だな。
「これで・・・・おわり・・・・なの・・・・・か?」
そんな事を考えていたら、ガキはフラフラになりながら立ち上がってきた。
ガキにしてはなかなか粘るじゃねぇか。にしてもヴァンパイアの回復力ここまで高かったか?
そんな時強い風が吹き空の雲が晴れるとそこには丸く綺麗な月が現れた。
こりゃあのガキをオーバーキルしてしまいそうだな。
「喜べ!お前に俺の本気を見せてやるよ!!!!!!!」
そう叫ぶと俺はさらに雄たけびを上げる。
身体の内側から力を感じると共に全身の骨が軋む音が聞こえる。それすら心地よく感じるほど溢れてくる力は大きい。
視界の端に驚いて呆然としているガキが映る。先ほどとまったく逆の光景に笑いがこみ上げてきそうだ。
お前に勝ち目なんて最初から存在しねぇんだよ雑魚が。
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「これで・・・・おわり・・・・なの・・・・・か?」
全身が痛い、死んだほうがマシって思うほど痛い。あれだけ思いっきり蹴られたら当たり前だ。
だが、まだ大丈夫だ。自然と身体が治っていく感覚がある。
やっぱりきついわ、あいつの言うとおり俺の力は弱い。けれども勝てないわけじゃない。今は待つあれを行えるその時まで。
それにしても風が心地良い。なんで頑張っているのかも忘れたくなるくらいだ。そして風が止み空に大きな満月が顔を出す。
綺麗だ。普段はそこまで気にするものでもない満月だが、こういうときに見ているからだろうか、物凄く綺麗に見える。
そんな気分を壊すように獣野郎が叫びだす。
「喜べ!お前に俺の本気を見せてやるよ。ワーウルフの本領をな!!!!!!!」
あぁやっぱりか、薄々感じてはいたんだよあいつが本気ではないって事を。
それにしても先ほどまでの身体能力も化け物だったが、これ以上にやばくなるのか。
だが驚いた、格下相手に全力を出すタイプの人間に見えなかったからだ。後五月蝿い、物凄く耳障りだ。
そう不快な思いをしていると、獣野郎に変化が起きた。全体に一回りか二回り大きくなっていく。
「完全に化け物だな」
思わず口に出してしまった。
それくらい獣野郎の姿が凄かった。完全に2速歩行の狼・・・・いや、これはゲームや漫画で出てくるワーウルフと同じような姿になっていた。
粗方回復できたが、どこまであの狼野郎に通用するかだな。とりあえず身構える事にする。
「どうした?この姿を見て足が竦んで動けないのか?かかってこないならこちらから行くぞ!」
そういうと狼野郎の姿が消えた。否、速すぎて見えないのだ。
捉えることのできない速さって反則だろ・・・・・・。 しかもスピードだけでもこれだけ上がっているって事は、腕力諸々も上がっているんだろうな。
まじでやばいかもしれない。
「どうだ?このスピードでは俺が今何処にいるかもわからないだろう。初撃だけ教えてやる。真正面から殴ってやるからちゃんと防げよ?」
常に移動しているのだろう色々な場所から声が聞こえてくる。
「来るならさっさと来いよ。ギャーギャー五月蝿いんだよ駄犬!」
「駄犬だと?!ちょっとは手加減してやろうと思ったがやめた。全力で潰す!!!!」
そう叫んできたと思った直後。またもや鋭い痛みと共に俺の身体が吹き飛び、木にぶつかった。
一応構えてはいたのだが、腕が完全に折れた。いや、これは骨が砕けたかもしれない手の感覚が無いうえに動かない。
これ治るのか?それ以前にこの威力なら身体に当っていたら恐らくモツ抜き確定レベルかもしれないわ。
立ち上がろうにも腕が使えれないから、立つのに時間がかかりそうだしもう完全に積んでるわこれ。悪あがきだけしてみるか・・・・・・・。
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吹き飛んだガキが動かない。ちょっと本気を出しすぎたか?まぁいいどっちにしろ喰うのだから。
「もうギブアップか?ならこれ以上痛くないように喰ってやるよ」
「お前は食べることしか脳が無いのかよ駄犬!」
喰うのやめるかこのガキ。やっぱりぶち殺す!
「駄犬駄犬言いやがって!俺は狼だ!!!!!!!!!」
怒りに任せて思いっきり殴り飛ばしに行く。
どうやらクソガキは動ける状態じゃないらしい。身動き一つしない。これなら確実にしとめれる。俺はそう確信した。
だが不意に違和感を感じる。絶望的状況だというのにこいつ薄っすら笑みを浮かべているように見えたのだ。
そこで踏みとどまっていたら状況が変わったのかもしれない。だが俺はそんな些細な違和感を気にせずぶち殺すつもりで突っ込んだ。
だが俺の拳はクソガキに届かなかったのだ・・・・・・・・・。
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目の前には拳を俺に突き出したまま停止している狼野郎がいる。
ふぅ危なかった。真正面から来てくれなければこっちがやられてた。
「お前何しやがった!?ヴァンパイアにそんな力はないはずだぞ!?」
まじで五月蝿いわこの駄犬。そう思いつつゆっくりと立ち上がる。
「満月の恩恵を受けるのはお前だけじゃないって事だよ。」
「ふざけるな!そんなことは聞いた事も無いぞ!!お前はヴァンパイアだろ!?そんな事あるわけがない!」
そう叫ぶ狼野郎をそのままに俺は狼野郎の首に顔を近づける。それに気付いたのか狼野郎が慌てだす。
「何をする!?いやだやめろ!俺はヴァンパイアなんて低俗になぞなりたくない!まして眷属なんてごめんだ!!!」
「五月蝿いんだよ負け犬。お前がこれまで食べてきた女性も同じようなこといってたんだろ?それを無視し喰ったお前に言う資格ねぇよ。」
そう言い放ち俺は狼野郎の首に噛み付き血を吸いだす。
口の中に鉄の味が広がっていく。だが不快感は全く無い。美味しいおやつを食べているかのような感覚だ。
こんな風に感じるあたり俺も化け物になったんだなぁと思ってしまう。だが、俺が選んだ道だし深くは考えない事にする。
やめろ、ころせ、と喚いていた狼野郎だったが、俺が吸血するにつれて変化が起きてくる。
だんだんと人の姿に戻っていくのだ。それと同じく俺には血と一緒に不思議な感覚が身体に流れてくる。
「な、なんだ?!お、おれの力が消えていく?!なんだどういうことだ?お前か?お前がやっているのか?!お前は一体何なんだ!ヴァンパイアじゃないのかよ!!」
俺はその言葉を無視し吸血を続ける。それに伴い狼野郎は最初にあった人型にもどり、ついには尻尾、耳も無くなり。そして・・・・・。
狼野郎そのものが消えていった。
「ヴァンパイア、ヴァンパイア五月蝿いんだよ。俺がいつヴァンパイアの力だといったよ。俺の力は真祖だ。」
血を吸い終わり狼野郎が消えた俺はそう小声で呟いた。
血を吸ったおかげで治癒力が増したみたいだ。ボロボロだった腕も完治している。結構便利かもしれないなこの力。
荷物を回収した俺はふと思い声に出す。
「きこえるか?ロード」
(どうした我が盟友)
俺がそう言うと頭に直接そんな声が響くどうやら聞こえているみたいだ。
「これからもよろしく頼む。」
(勿論だ我が盟友よ)
返ってきた答えに満足した俺は家に向って歩き出す。
こうして俺の日常が終わり新たに異常な日常が始まるのだった・・・・・・。
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