1-1 少し語ろうか
「また、あの夢か・・・・・・。」
思わずため息混じりに言葉に出してしまうほど憂鬱だった。
それもそのはずここ2ヶ月くらい毎日のようにあの時のことを夢で見ているのだから・・・・・・。
まぁそんな暗い気分を吹き飛ばすためにも俺の事を少し話そう。
俺の名前は白影勇一、ハクエイやらシロカゲやら色々言われるから、好きに呼んでくれてかまわない。
だってそうだろ?読み方が違ったからといって俺が俺でなくなるわけじゃないし、特に気にはしていない。
年齢は15、容姿は、んー自分で言うのはなんだか気恥ずかしいものがあるが、中の上くらいだとは思う。
決してイケメンともてはやされることは無い、一時期塞ぎ込んでいたからか目つきはちょっと悪いかもしれない。
他人からの評価を聞いたわけじゃないから曖昧で良いよな。
身長は175、高すぎず低すぎず、俺も気に入っている。容姿についてはこんなもので良いだろう。
ん?そんな事より聞きたい事?あぁわかっているさ。
あの夢の続きを聞きたいんだろ?今からちゃんと話すさ。
と言ってもちゃんとしたことは俺自身良く分かっていない。
あの男達に撃たれた後、俺の意識は無くなった、次に目を覚ました時目に映った光景は真っ白な天井だった。
まぁ平たく言うと病院のベッドの上だった。
まぁその後は大変だったよ。俺が目を覚ましたと分かったら医者は奇跡だと叫ぶし、警察は来て覚えていることは無いかと詰め寄ってくる。
その時俺がどうなったかは想像付くだろう。
当然のように取り乱しその場はお開きになった。
ともあれ数日したら、俺は落ち着きを取り戻して少しづつ警察の人にじんもゲフンゲフン、質問されたり事件の事とかを聞いた。
なんでも警察が家についた時には、血だまりに倒れている俺だけだったらしい。
父と母そして犯人までもが行方不明、現場には銃痕や争った跡もあったそうだ。
犯人の男達は何者かは判明した。俺が犯人の容姿をギリギリ覚えてたおかげでとある事件の犯人と同一人物と分かったのだ。
その事件は銀行強盗。近くの銀行がナイフと銃を持った男3人組に襲われたらしい。男達は職員を縛りお金を持って車で逃走。
此処からは警察の推測なのだが、犯人達は確実に逃げるために人質を取ろうと考え、たまたま俺の家に襲撃にきたのだろうと言っていた。
だがおかしなことに、犯人の車は奪ったお金を車内に残したままマンションの近くに止められていたらしい。
後から分かった事だが謎が多すぎて操作は打ち切りになったみたいだった。
ともあれそのたまたまの所為で俺は病院送りで、父と母は行方知れず。俺は文字通り独りぼっちになった。
親戚もいなかった俺は施設に預けられる事になるのは当然だ。
だが退院する日慌てた様子で警察の人たちがやってきてこう言った。
「君を引き取りたいと言う人物が来たんだ、なんでも君のお父さんとお母さんの古くからの知り合いらしい。君はその人と施設どっちにいきたい?」
正直この時の俺は完全に塞ぎこんでいて何処に連れて行かれようが興味が無かった。
だから引き取りたいと言う人がいるのだったらそっちでも良いと言うと。
警察の人は安堵した様子で、「良かった、本当によかった。」と小声で言っていたのを覚えている。
俺は何でこの人のほうが嬉しそうにしているのだろうと不思議で仕方が無かったが気にするのを止めた。
そして警察の人に連れられて今すんでいるこの家にやってきたのだ。
質素な2階建て一軒家、それでも俺にとっては前に住んでた家に比べると豪華な家に見えた。
その時少しだけ引き取られても良かったと思ったの覚えている。
だが家に入ったら出迎えてくれるであろう人が誰もいないのだ、それを不思議に思って聞こうとするのと同時に警察の人が説明をしてくれた。
なんでも引き取ってくれた人は多忙で家にはいないとのこと、だが5歳の子が1人で暮らせるわけも無いので一人お手伝いさんが来るのだという。
その時の警察の人の顔は困ったような申し訳ないような顔をしていた。こんな状況は異常だしおかしすぎる。
だが子供の俺はそうなんだぁ程度にしか分かっていなかったのだ。
問題だらけな環境だとは思うが不思議と不満は無かった。少し寂しい事を除けば不自由なく暮らしていけるように手配されていてからだ。
どんな人が引き取ってくれたのか、どんな仕事をしているのかも俺は知らない。
何故なら未だに会った事がないからだ。でも健康で不自由なく暮らせているからたいした問題ではないだろう。
生きられればそれで良いのだ。あの事件の全貌が分かるその日まで・・・・・・・
さて気分を変えよう、一つ俺は寝起きだ。
その時に気分を変えるには顔を洗うのが一番! さっぱりするからな。
そういうことで洗面台に向かうとする。
今日は良い日になると良いなぁ・・・・・・・・・
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