2-2.5
「勇一さん、死なないでくださいね」
エレベーターが閉まる直前思わずそう言ってしまいました。
何故私はそんな事を言ったのでしょう、考えても答えは出てきません。
そんな風に少し考え込んでいると、後ろから声をかけられました。
「ほう、珍しいものが見れたわい」
声の方に振り返ってもそこには誰もいません。
普通ならおかしいと思うかもしれませんが、私は声の主に向けて冷静に返答します。
「何が珍しいのですか?グランドマスター、それに姿を見せなくても私は驚きませんよ?」
「お前さんは本当に動じないのう。まぁよい、珍しいのはお前さんの事じゃよ」
声の主はそう言いながら私の背後から前に出てきました。
恐らく振り返る時に反対側から回り込んでいたのでしょう。
そういう悪戯は何時もの事なので慣れてます。
それよりも私の事が珍しいとはどういう意味なのでしょうか。
グランドマスターとは何十年も一緒に過ごしているのだから珍しい事なんて無いと思われます。
「なんじゃ分からんのか?お前さんはあやつの事を心配してたじゃろ」
「心配ですか?そうなんですか?」
私がそう返すとグランドマスターは、呆れた顔をしていました。
心配とは、物事の先行きなどを気にして、心を悩ますこと。
気にかけてめんどうをみること。
この場合勇一さんの先行きを気にして、心を悩ましたのでしょうか・・・・・・わかりません。
このままだとまた考え込みそうです。
恐らくグランドマスターは私が困惑するのを楽しんでるに違いありません。
そのまま楽しまれるのも癪なので話題を変えましょう。
「そんな事より、グランドマスターも観戦に来られたんですか? 蛇岩先生は、朝早くから来られて楽しそうに降りていかれましたよ」
「結果が見えてる戦いなんぞ見ても面白くないじゃろ。 妾は、ここの資料室に用事があっての。 まぁ戦いが終わった頃に見に行くとするかの。 それより翠はまた授業をサボる気じゃな、生徒に見限られても妾は知らんぞ」
「授業をサボっていても、あの方は生徒には何故か人気ですからね。それよりもどちらが勝つと思っているのですか?」
戦いの結果を聞いてみると、グランドマスターは少し考えてから不敵な笑みを浮かべました。
これは、絶対に教えてくれなさそうです。
「なんじゃ知りたいのか? だが教えてやらん、ここで教えても面白くないしの。気になるなら見に行けばよかろう」
知ってました。
あの顔を見てからこうなる事は予測済みでしたよ。
「私これからやらなければいけない事があるのを知ってて言ってますよね?」
「あぁ、あれの撤去と荷物の移動頼んでおったのすっかり忘れておったわ」
グランドマスターは、わざとらしく今思い出したように笑いながら答えました。
ほんとこの方と話す時は疲れます。
あの仕事量を私ひとりにやらせるなんて鬼畜の所業です。
「妾はそろそろ資料室に行くとするかのう。あぁ忘れておったわい、学園前にトラックを手配して止めてあるから自由に使うが良い。あるのと無いのとでは違うからのう」
「ありがとうございます。では使わせていただきますね」
やっぱり分かってたじゃないですか!
でもトラック用意してくださっていたのは優しさなのでしょうか?
おかげで予定していた時間より早く終われるかも知れませんね。
「それと、終わって地下に向ってくる時に、特別保管庫にある例の物を2つ持ってきてくれないかのう」
「わかりました。ですが、2つですか?1つで足りないのですか?」
「念のためじゃよ。それでは頼みましたよ」
そう言うとグランドマスターは幻のようにその場から文字通り消えていきました。
最後の最後まで悪戯好きでしょうがないお方です。
頼まれ事が増えてしまいましたし、私もさっさと終わらせて地下にいくとしましょう。
それにしても最後に喋るなら最初から喋れば良いのに、ほんと良くわからないお方です。
副題思いつかなかった・・・・・
謎が謎を呼ぶ
完全に不定期でごめんなさい。




