2-2 リベレーター
外からは小鳥のさえずりが聞こえ、ふかふかのソファーに腰掛け、メイドが淹れてくれたコーヒーを飲む。
うん、美味しい。
なんて優雅な朝なのだろう。
こんな朝を迎えているのは世界でも数えるくらいしかいないのではないだろうか。
「落ち着きましたか?」
「充分すぎるほど落ち着いたよ。それで、会長は何処なんだ? 呼ばれてきたんだけど」
「愛さんは他の皆様と準備中ですので、その間私が色々と説明するように言われてます」
何の準備をしているのだろう? もしかして歓迎会でも開いてくれるのかもしれない。
いや、そうだったとしても、準備をしているような音がこの家からは聞こえない。
そうなると、何の準備をしているか皆目見当も付かない。
まぁそれも含めみきが説明をしてくれるのだろう。
「そろそろ説明をしたいのですが、よろしいですか?」
「何の説明か分からないけど頼む」
「そうですねぇ。勇一さんはリベレーターってご存知ですか?」
「確か英語で解放者って意味じゃなかったか?」
「正解です。後はFP-45という拳銃の通称でもあります。ですが私が言うリベレーターというのは、勇一さんと同じく人を超えた力を持った者のことですよ」
そうかそうか、俺と同じような力を持った人の事をリベレーターと言うのかぁ。
ってあれ? 何でみきが俺に力があるって知ってるんだ?
「まさかみきも、そのリベレーターってやつなのか?」
「いいえ、私は違いますよ。ですが生徒会の皆様は全員リベレーターですね」
「生徒会メンバー全員がリベレーターってどういうことだよ!?」
「全て順番に説明いたしますので、落ち着いてくださいね」
これで直ぐに落ち着ける人がいたら、それはそれで凄いと思うんだが・・・・・・。
そんな事をみきにいっても、恐らく軽く流されるのが何時もの事なので深く追求しない事にしよう。
なんだかこれだけで驚いてたら、身が持たなさそうな気がする。
胃に穴があかないか心配になってきたぞ。
(大丈夫だ盟友よ。その程度ならば、直ぐに治る)
デスヨネー。もう色々と諦めてみきの説明を聞くとしよう。
「初めにリベレーターについて説明します。そもそもリベレーターには全ての人間がなる可能性はあります。と言うのも、人はみな力を持って生まれてくるのです。その力は、内に閉ざされていて普通は使えません。ですが稀に何らかのきっかけで解放され、力を使えれるようになる人がいます。その者達を解放者と呼ぶのです。例外はありますが、リベレーターにはある一定の基準で段階に分けられています。まず第一段階は解放したばかりの状態です。解放されたばかりの状態では、使用できる力も一部だけで、自分の力の全てを理解することは出来ません。力は使い続けると成長し、やがて力が具現化した化身と呼ばれるものが現れ、ようやく自分の力がどんなものか完全に理解することが出来るようになります。これが第2段階です。次に第3段階となるのですが、人によっては何十年かかっても到達できない場合もあり、故に成長の壁と言われています。ただそれを超えられた者は、以前とは比べ物にならないくらい強力な力が手に入ると言われてます。ここまでで質問はありますか?」
昨日までの俺なら、理解するどころか絵空事と笑い飛ばしているような内容だろう。
だが、今の俺には笑い飛ばす事なんて無く、改めて人を超えた存在リベレーターになったのだと理解させられたのだった。
丁度質問はないかと聞かれているので、疑問に思ったことを聞いてみることにする。
「理解は出来たんだが、一つだけ聞きたいことがある。」
「はい、なんでしょう」
「リベレーターに目覚めた時に、第2段階の化身と呼ばれるものが現れることってあるのか?」
俺が疑問に思ったの当然かもしれない。
何故なら俺の場合、ロードが化身なのだ。
みきの説明の通りなら俺は、初めから第2段階に達していることになる。
みきは俺の言葉を聞いて、少し考え込んでから口を開いた。
「私が知っている限りでは、そのような事例は聞いたことがありません。もしそのような事があれば、その人とその力は相性が良いのでしょう。成長すればきっと凄いリベレーターになれるのかもしれませんね。ちゃんと答えれなくてすみません」
どうやら俺はリベレーターの中でも普通ではないのかもしれないな。
(嫌なのか?)
嫌というより、また未知な部分が増えて困ってしまった。
(それよりもあの娘落ち込んでるように見えるぞ)
ロードに言われてみきを見ると、ちゃんと答えられなかったからなのか、少し俯いていた。
「俺が変なこと聞いて悪かった。分らないのに答えてくれてありがとう。続きを頼む」
「いえ、分らない私が悪いんです。そ、それでは続き説明しますね」
少し元気になったみきはまた説明をしてくれるみたいだ。
(盟友よ、我が言う前に気付かなければ男として失格だぞ)
俺が悪かったよ反省する。
「次は此処白狐女子学院生徒会について説明します。どうやってリベレーターだけを集めているのかというと、昨日勇一さんも提出した入部届けにちょっとした細工がしてあるのです。どんな細細工がされているかと言いますと、こちらをご覧下さい」
みきはそう言って、懐から一枚の紙を取り出した。
「これって昨日俺が提出した入部届けじゃないか、何でみきが持ってるんだ?」
「これは蛇岩先生に言ってお借りしたものです。それよりもその紙を良く見てください。今の勇一さんなら見えるはずです。」
見えるようになる? そんな事あるわけ・・・・・・ん?!
入部届け
この文字が見えるものは白紙で出し生徒会に入る事
「 」
氏名 白影勇一
「どういうことなんだこれ?」
「これは普通の人には見えず、何の疑問に思わず、やりたい部活の名前を書くように暗示がかけられているのです。」
「文字は見えなかったけど昨日俺は、どんな部活があるか分らないから迷った挙句白紙で出したんだぞ?」
「それは勇一さんが、リベレーターになりかけで暗示がかかりにくかったのかもしれませんね」
「だからみんなに昨日驚かれてたのか? ってことは蛇岩先生もまさか」
「そういうことです。因みに勇一さんの思ったとおり、蛇岩先生もリベレーターです」
やっぱりそうだったのか・・・・・・。
そりゃまあ、リベレーターでもなく白紙で出してたら驚くわな。
「それにしても何でリベレーターを集めてるんだ?」
「そうですねぇ。勇一さんはリベレーターになってどう思いましたか?」
「どうって言われても・・・・・・」
あの時は必死だったからそんな事考える余裕なんて無かった。
いや、あの時確か俺は・・・・・・殺せると思った。
「言わなくてもいいですが、暗い思いがありませんでしたか?」
「ああ、あった」
「そういった感情を持ってしまうのも当然です。だって本当に出来てしまうのです。ですが勇一さん、貴方は今そういった感情を持っていますか?」
「いや、今は無い・・・・・・・と思う」
無いと思いたい。
だけど自信はない。
何故ならあの時、殺せると思ったのは紛れも無い事実、俺自身なのだから。
「それだけで充分です、気負いしないで下さい。世の中には貴方みたいに抑えられず、そのまま悪行を繰り返すリベレーターも多くいます。そういった悪行は基本、不可解な事件や事故だったり様々で、そういった者達を討滅する機関が国にあるのですが如何せんリベレーター不足なのです。それ故にこの生徒会のメンバーも国からの依頼で動いていると言うわけです。昨晩も依頼があり犯罪者を追いかけてたのですが、先に何者かに犯罪者を殺されてしまいました。この場合依頼は失敗扱いになるのですが、今回は何故か成功扱いなんですよね。何故かは勇一さん分りますよね?」
「俺がやったってことだろ」
「正解です。皆さん驚いていましたよ。昼間は普通の人間だったのに数時間の間にリベレーターになり、犯罪者を殺してしまうなんてどんな強さなのだろうと」
あれはほんと運が良かったとしか言いようが無い。
あいつが慢心していなければ、俺は絶対に負けていたのだから。
「俺は強くなんて無いよ。偶々勝てただけだ」
「それでも結果は残っているのですよ。そこにあるパソコンを見てください」
俺はみきが指差す方向に置いてあったパソコンに向かい、画面を見て書いてある文字を見てみる。
えーと何々、
依頼達成、達成者白影勇一、 報酬金300万円が振り込まれます。
と書いてある。
「300万って本当なのかこれ?」
「本当ですよ。命がかかってるにしたら少ないかもしれませんが、貰えるだけ良いと思いますよ? 因みに昨日貰った生徒会のカードに入金されています。それには、電子マネーやクレジットカードの機能も備わっています」
凄いカードだったんだなこれ。
だから先生がなくすなと言っていたんだな、納得したわ。
「生徒会にリベレーターが集められてる理由も俺に力があることがばれてた理由も分ったんだが、そうなると普通選挙とかで決める会長とかの役職って適当に決めてるのか?」
「役職は強い順ですよ。上から順番に生徒会長、副会長、会計、書記、役員となりますね。ですが今の生徒会は勇一さん含まなければ3人ですので副会長は空席ですね」
「空席ってなんでだ? 人数不足なら下のを空ければいいんじゃないのか?」
「それは単純に副会長レベルがいなかったからですよ。本来会計の伊吹さんが副会長なのですが、少し実力不足でしたので空席になってました。ですが最近の伊吹さんは副会長レベルに近い実力をつけてきたので、今年度に新人が入ってきた場合、力量を測るついでに伊吹さんと模擬戦をし、勝ったほうが副会長にしようと先日決まったところなのです」
なるほど今までは実力不足で空席だったのか。
ってことはやっぱりここに住んでるもう一人ってみきなんだな。
模擬戦しないといけないって今年の新人は大変だな。
「ん? って事は俺が伊吹先輩と模擬戦するのか?」
「はい。現在皆さんはその準備をしております。そろそろ準備は終わってると思いますので案内しますね」
準備って歓迎会じゃなかったのか・・・・・・。
俺はみきに連れられリビングをでる。
何処に行くのだろうと思いながら付いていくと、2階へと続く階段の裏で止まった。
「勇一さんカードを壁にあるそこの穴に挿してくれませんか?」
立ち止まったみきが俺にそう言うので壁を良く見てみると、そこには確かにカードが入りそうな窪みがあった。
挿したらどうなるんだろうと思いつつカードを入れると、壁が動きだしエレベーターが現れたのだった。
「どうなってんだこれ」
「隠し扉ならぬ隠しエレベーターです。これにのって地下に降りてください。そこで皆様が待っていますので」
「俺1人だけか? みきは行かないのか?」
「私はやらないといけないことが残っていますので、勇一さん1人で行って下さいませ」
用事があるなら仕方ないかと思い、俺は1人でエレベーターに乗り込む。
そして扉が閉まるとき、笑顔でこちらを見送っていたみきが一方的に声をかけてくる。
「勇一さん、死なないでくださいね」
そんな不吉な言葉をかけられ慌てたが時既に遅し、俺を乗せたエレベーターは動きだし、ゆっくりと地下に運ばれていくのだった・・・・・・。
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