意味のない日、意味のある日
――――――ガタンゴトンッガタンゴトンッ
電車の走る音が聞こえる
僕は今学校から家に帰るためいつものように電車に乗っている
僕が行っている学校は少し家から遠いため、毎日朝の5時半位に家を出ている、そうしないと学校に間に合わないからだ。
僕は今一人で電車に乗っている 友達がいないわけではないただ変える方向が違うだけ
だからいつも一人で電車に乗り帰ることが日課になっている。
別に寂しくはない、確かに最初は少し寂しいが人間は慣れれば大体のことはどうと言う事はなくなる
僕はふと電車の窓から空を見上げる
空は時間のこともあり少し赤みがかかり夕焼けが見える、いつもはちゃんと見ていないせいかとても綺麗で思わず見ほれてしまった
僕の知る空はいつも朝の空だ
朝家を出て空を見ると太陽がしっかりと出てきたころで真っ青である
まるで朝起きて仕事や学校に行く人たちを迎えてくれているようだ
耳を澄ませば 今日もがんばって来い と聞こえてくる様な錯覚さえ覚える
だがいつも夕方、仕事や学校が終わり帰る時間になると空は決して真っ赤ではなく少し赤いくらいでまるで何かを悲しんでいるような、我慢しているような、そんな色に思える
僕はいつもその空を見るとなぜか虚しさを覚える
そして僕は特に何も考えても思ってもいなかったはずだが何故か自然と言葉を口にしていた
「・・・・・これで2年生も終わりか、もう3年生になるんだな・・・」
自分でもこんなことを口にした意味は分からない
だが何故か自然と口から言葉が出てしまっていた
自分で言っといてなんだが自分で言った言葉の意味を考える
だが、答えはすぐに見つかった
今日は卒業式だったのだ、僕のではない 僕の上に当たる先輩たちのことだ
僕は2年前今いる高校に入学し生活を送っている
別に今の高校に不満があるわけではない、設備も悪くないし友達だっているし先生もいい人たちが沢山いる、だが、僕が考えているのはそういうことじゃない
「・・・僕は、このままでいいのかな?」
ふとそんなことを言ってみる、だが勿論この言葉に答えてくれる人はいない
僕は別にファンタジーな世界に行きたいわけではない
僕は別に学校で熱い物語を期待しているわけではない
僕は別に女の子と出会い甘くも少しすっぱいような青春を望んでいるわけではない
僕は別に日常を望んでいるわけではない
「・・・ハハッなんだこりゃ」
自分のあまりの矛盾の考えに思わず苦笑いしてしまった
だが本当のことだからしかながない
そして僕はまた窓の外の赤い空を見る、そして僕は思うのだ
僕は特別なことを望んでいるわけではない
だがこの空を見ていてふと思う
これでいいのかと
何か目的のあるわけでもない毎日
ただ過ぎていくのは時間だけ
そして僕は1年後に学校を卒業する
それでいいのかと
別に今の生活に不満があるわけではないがこのまま後悔のないように生活し学校を卒業しても僕は後悔する事になると思う。
何故かは理由はわからない
だが僕はほぼ断定できてしまう様な妙な自信があった
だが何をすれば後悔しないか僕にはわからない
僕は小学校の卒業式の後学校を出て思ったことは特になかった、ただ中学校に上がるだけ
そう考えていた、確かにそうだった
だが高校になって僕は思う
―――学校という学校の生活は多分高校が最後だろうと
僕は自問自答する
どうすれば高校生活で後悔しなくてすむか
どうすれば今日を意味のある日にできるか
どうすればその日その日の一日を特別なものにできるか
ちゃんとした答えなんて出るわけがないのに僕はずっと考え自分に問いかけた
だが答えなんて出ない
正しい答えがあるかどうかすらわからないのにわかるわけがない
だが僕は考えた
しばらく頭を伏せ考え続けて結局わからないまま20分が過ぎた
その時間はとても長く感じた、虚しさと悲しさで息がしずらくなりまるで酸素の変わりに虚しさを肺に入れて呼吸をしている気分だった
僕は自然と目線を電車の外の空に向ける
そして僕はその赤い空を見て思う
「・・・・あぁ少し分かったかもしれない」
わかったというのはさっきの答えではない
僕がわかったといったのは赤い空のことだ、虚しそうで悲しそうな空 その空の気持ちが少しわかったかもしれないと言ったのだ
勿論空が寂しそうなんて僕が勝手に思っているだけだしたとえ思っていたとしてもその中身は僕のとは違うかもしれない。
でも僕はあの空の虚しさと僕が思っている虚しさは似ていると思った
そしてそんなことを考えていると
一人の女性というには若々しく女の子というには少し大人びている子が僕に喋りかけてきた
「あの、大丈夫ですか?」
年は15位だろうか、高校の制服を着ているということは新入生だろうと僕は結論ずけた
そして僕はつい質問に質問で返してしまう
「・・・大丈夫ってなにが?」
すると女の子は少し驚いた顔をして僕に言った
「何で・・・・泣いているんですか?」
僕は驚きと同時に手を目元にやる
すると手にぬれる感覚があった
知らず知らずのうちに涙を流してしまったらしい
だが僕はなぜ泣いたのか理由はわかってもいつ涙を流し始めたかどれだけ考えてもわからなかった
これも何かの縁だと思い僕はこの子に話すことにした
「ま、どうせだから少し話を聞いてくれるかい?」
すると女の子は黙って首を縦に振った
それから僕はすべてを話した
自分でもあまりわかっていない話なのにこの子は黙って真剣な表情で話を聞いてくれている
それだけでもとてもうれしかった
そしてすべて話し終えて少したち女の子が話しかけてきた
「・・・確かに難しい問題ですね・・でもそれは私にもわからないです・・」
「ハハッしょうがないよ、自分でもよくわかっていないんだしね」
「そのようですね、でも何が虚しかったり悲しかったりするのかはやっぱりわからないんですか?」
「そうだね・・・どうだろう言葉で説明しようとするとあまりでてこないな」
「・・・そうですか、でも少しわかる気がします」
「ん?言葉が出てこないこと?」
「違いますよ、理由のわからない虚しさが沸いてくるってことです」
「へぇたとえば?」
「・・・そういうことは聞いてはいけないんですよ」
女の子は少しすねたような顔をした
はじめてみる年相応の顔に思わず笑みがこぼれてしまった
「そっか、変なこと聞いてしまったね」
「別にいいですよ、それに貴方が教えてくれたのに私が教えないのも意地悪な話ですから」
と、女の子が言っている
でも僕はそれは少し違うと思った
「確かにそうだけど僕は勝手に君に話を聞かせただけだよ、だから君が僕に気を使うのは無駄なことだよ」
「はい、たしかにそうです・・・・それに」
「ん?」
すると女の子が僕の想像の斜め上を行くことを言ってきた
「それに・・・・今日、この電車でこの時間、この夕焼けの中私と貴方とで会い話した時間も無駄なのかもしれません、でも私は貴方が泣いてなければ話しかけませんでしたし貴方も今日この電車で夕焼けを見なければ私と話をしなかったかも知れません、それも無駄なんでしょうか?」
その言葉を言う女の子の顔は自分にもわからないという顔をしていた
そして電車が止まる
どやら次の駅に到着したらしい
だが僕の家はまだ先なので座ったままだ、だが女の子はスッと立ち電車を出て行こうとした
どうやらここが女の子にとっての終点らしい
そして女の子は出る前に振り返りニッと笑って僕に言ってきた
「それじゃ先輩、ここでさよならですはなせて私のほうが盛り上がってしまってすみませんでした、
それと、明日からよろしくお願いしますね、先輩?」
そういい女の子は電車を出て行った
そして電車は走り始める
どうやら女の子は同じ学校の新入生だったらしい
そして俺はふと目線をまた窓の外の夕焼けにむける
その日その日に特別なことなんて無理なのかもしれない
意味のある日なんてないのかもしれない
後悔もするかもしれない
―――――でも、
「ふふっこりゃ大変な後輩をもってしまったな」
今日 この日この時間、この電車で見た夕焼けは意味のあるものだと僕は思ったのだ