魔剣姫は城に行く根回しをする。
ひろ、ちゃんと来てくれるかな。
下らぬ事で呼ぶなって言われたらどうしよう?
城下のそこそこいい小料理屋に呼んで待ってる。
下町の酒場なんぞ呼んだら文句言うだろうし。
「ニーシェ、下らぬ事で呼ぶな。」
わー、言いやがったよ。
「悪いね。」
どーせ私の縁談なんてあんたには
とるに足りないだろうよ。
「まあ、きちんと私に通した事は評価しよう。」
ひろが言った。
「うん、忙しいのにすみませんね。」
こいつを通さずに城に潜入すると
牢に入れられかねないからね。
「で、たかだか弟を見にきたのか?」
ひろ、この国のお世継ぎ廣宗が言った。
「そうだよ、私には死活問題なんで。」
私は言った。
廣宗と私は戦友だ。
お世継ぎとして義務として
ファモウラの戦場に晴喜の軍を従えて来ていたこいつとは
世継ぎどうしで愚痴ったりのみ明かしたりしたよ。
「...ラーガラースとの縁談はお前が私の正室になるんだと思っていたぞ。」
なんでそう言う話になる?
「私は、ラーガラースの世継ぎだよ、ひろ。」
私は言った。
「世継ぎになるものなど他にいるだろう?」
ひろが微笑んだ。
「いないよ。」
多分ね。
「シリス殿はどうだ。」
ひろが言った。
「シリスがなんで出るのさ。」
私は言った。
シリスは私の従弟です。
「お前は私の理想の女だ。」
ひろが甘く微笑んだ。
「ひろ、女嫌いだからね。」
男がわりにされちゃ困るよ。
「女はうるさい、可愛げもないし。」
つねに女が入れ食い状態だとこうなるのか?
「私も女だよ。」
忘れてるかもだけど。
「わかっている。」
ひろが言った。
「熱い夜を過ごしただろう?」
ひろが笑った。
「オーイ、誤解招く事言うなよ。」
ただ単に寒いよるに戦場でテントで固まって寝たくらいで。
「女はそのくらいでふつう責任取れと言う。」
そうか?私は女失格か?
「別にいいよ。」
何があったわけじゃなし。
「...弟が気に入らなかったら嫁にこい。」
ひろが言った。
わー、弟かあんたか二者択一?
「嫌だよ。」
特にあんたの女なのに男嫁が嫌だ。
「その条件をのまぬなら投獄する。」
どんな罪でだよ。
来るときちゃんと
ラーガラースの正規のパス使ったよ。
「安心しろ、座敷牢にいれて愛でてやる。」
わー、絶対出す気ないじゃん。
「わかった条件のむよ。」
私は言った。
ため息でるな。
全く母ちゃんに『つめが甘いわね』って
高笑いされちゃうよ。
「しかし、なぜ波留日の晴喜に紹介状を頼む、私でいいだろう。」
ひろが言った。
えー、あんたなんかに頼んだら
その代わりに嫁にこいって言われるじゃん。
あー、婿一人見るのに
高リスクだよ。
ひろの男嫁は絶対に回避だよ。