母ちゃん女王は高笑いをする。
ニーシェルが置き手紙をして
城出をしたわ。
やっぱり私の子ねー。
「心配だよー。」
夫のルーディムはもう心配していた。
心配いらないと思うけどね
父上がよく仕込んでたし。
「大丈夫よ。」
ちゃんと断ってくれれば
つてもコネのいくらでも渡してあげたのに!
まあ、何事も自分でやるが基本だしね。
「孝政様の情報も来てるのに調べなかったのね。」
困った子ね。
「もっとしっかり反対すればよかったよ。」
夫のルーディムが呟いた。
「反対しても許嫁にしたけどね。」
お父様が超乗り気だったし。
ムリュフ精霊国で見極めてきたんですって。
孝政様は買いだと興奮して帰ってきたし。
「でも、どうに潜入するのかしら?」
奥宮は国主の一族以外男子厳禁じゃなかったかしら?
...あの子、女だったわ。
母親の私が忘れてどうするのよ。
でも、妹のところの息子より
家の娘の方がカッコいいのよね。
黄色がかったオレンジ色の短い髪
印象的な切れ長の紫の瞳
きりっとした印象で....。
息子ならいいのにって何度思ったことか...。
でも、娘なのよね...。
「女装、成人式以来じゃない。」
ふつうのドレス着せたら似合わなすぎて
夫の出身地のギアムジュ竜連邦のドレスをアレンジしたのよね。
両スリットの刺繍の入ったたて襟に半袖のドレス。
同じ生地の上腕丈の手袋。
コサージを左胸に
ペンダントは幅広の胸当て風。
スカートの下はぴったりしたレギンス。
お父様そっくりの色男風で
かっこよかったわ。
ドレスなのに...。
やっぱり男に見えるのよね。
「あの子の持ってるコネもつても限られてると思うんだけど。」
波留日の晴喜様と...。
あとは...。
「まあ、失敗したら高笑いしてやるわ。」
捕らえられたら全力で助けるけどね。
恩着せがましく言わないと
気にしまくるから。
「ああー心配だよー。」
オレンジな竜人な夫がまた言ったわ。
「可愛い子には旅をさせろって言うでしょ?」
私は言った。
「ええ?嫌だよ、うちの子あの子だけだし。」
ルーディムが言った。
「うるさいわね。」
このヘタレ男!
あんたの事愛してるけど
こういう時ムカつくわ。
選択間違ったかしら?
ねえ、ニーシェル。
お母さんはあんたなら無事に
婿さん連れて帰って来るって信じてるわ。
だけど、もう一つ厄介な申し入れがきてるの
確認していきなさいよ。
詰めが甘いわね。