魔剣姫は日雇になる。
とりあえず資金稼ぎに
もとの港町に戻った。
「また、雇ってください。」
例の道づくりの現場監督の瀬田さんに言った。
「城勤めは諦めたのか?」
瀬田さんが言った。
「それはそれ、これはこれ。」
私は言った。
「若者は夢をみるか...。」
何かじじくさい事いってる。
この道は都につながる道だそうだ。
人が動けば国も動くぞなんて夢みたいなこと
瀬田さんがいってた。
「花乃お婆ちゃんだだいまー。」
私は、花乃お婆ちゃんのところに下宿させてもらっている。
トイレと風呂共同だけど
清潔ですごく良心的な値段なんだ♪
「おかえり、けん君、悪いんだけど、鍋とってくれないかい?」
花乃お婆ちゃんが吊棚を指差した。
「うん、土鍋?」
私は聞いた。
「そう、水炊きでもしようかなと思って。」
花乃お婆ちゃんが言った。
花乃お婆ちゃんの料理はなんでもおいしい。
ラーガラース人の私にわからないもんもあるけどね。
「今日は鍋か...。」
嬉しそうに瀬田さんが言った。
「うん、そうだよ。」
私は言った。
下宿の方はこの二人の他にもう一人いるけど
仕事が忙しいらしくてほとんど一緒にならない。
「このスープおいしい。」
私は鳥からでたスープの美味しさをたんのうした。
「酒のむか?」
瀬田さんが酒ビンを出した。
ムリュフ精霊国の酒は透明だ。
「いただきます。」
私はコップを出した。
国の酒はこんなに透明じゃない。
「何か、親子みたいだね。」
花乃お婆ちゃんが言った。
コップを差し出してる。
瀬田さんがついだ。
「せめて兄弟にしておいてくれないか?」
瀬田さんがダメージを負ったようだ。
瀬田さん、本当にいくつくらいなのかな?
100才?90才?私よりだいぶ歳上だよね。
「けんはなんで、城なんぞ行きたいんだ?」
酔ってきたらしい瀬田さんに聞かれた。
「そりゃ城にいけば色々なものが見られるじゃあないですか。」
特に婿さんとか。
「みたいようなもんじゃないぞ。」
瀬田さんが言った。
瀬田さんって何気に城の中知ってそうだな。
「見学コースじゃあ得られないものがみたいな。」
私は言った。
鍋の具がおわるとご飯をいれて卵ときいれると美味しいおじやの出来上がりだ。
「城に見学コースなんてないぞ。」
瀬田さんが言った。
...ない?ラーガラースにはあるのに?
「え?嘘でしょう?」
私は言った。
「ラーガラースにはあるのか?そんなけったいなもんが。」
瀬田さんが酒をのみながら言った。
「ふつうあるでしょう、国民の税金の塊だよ。」
私は言った。
「警護の関係でない。」
瀬田さんは言い切った。
わー、そうなんだ、知ってよかったよ。
見学させてくださいっていくところだったよ。
『あら、いく国の事も調べてないの?物知らずね。』
って母ちゃんに高笑いされそうだ。
「まあ、飲め。」
瀬田さんがついでくれたのでありがたくいただいた。
幸せな生活だけど、
当初の目的を忘れちゃ駄目だ。
晴喜に書いてもらった紹介状の設定通り
女装しないと...。
って私は女だって言うの...。
自分の意識までおかしいや。
気を付けよっと。