忍びはつらいよ。
孝政様から下宿人けんを救出するように命を賜った。
別に仕事に不満はない…が。
けんって下宿人だろう?
なんで救出しにいくんだ?
「大多の当主の隠れ家か…。」
オレは呟いた。
通信機で忍び情報ネットを確認しながら呟いた。
「また、くもの巣まみれだな。」
オレはぼやいた。
この屋敷の図面を通信機に呼びだしながら
天井裏を歩いている。
やっぱ、センサー類多いわ…。
クモの巣もだけどね。
この屋敷の警備ネットの線を見つけたので
ばれないようにつないだ。
今は忍びもそういう事が出来ないとやっていけない時代なんだよな。
『客人は奥の…座敷牢。』
通信機の画面に表示された情報を確認っと。
座敷牢閉じ込められてどうする。
下宿人…あんたお姫様かなんかかい。
ああ、お姫様ならモチベーションあがるのに…。
とらわれの姫君…良い…なんか良い。
助けたらそのまま結婚出来るし。
警備ロボットと精霊とセンサーをさけて
奥の座敷牢の上についた。
「母ちゃんに高笑いされるよー。」
とらわれの下宿人が呟いてる。
ああ、母ちゃんどころかオレが高笑いしてやるよ。
助けだしたらせせら笑ってやる。
「そんなに嘆かなくってもいいじゃないの!辰昭様よ、相手はかっこいいし良いでしょう?」
見張りの紫頭巾の女が下宿人に話しかけた。
辰昭様は…男色家ではなかったはずだが?
下宿人は男だよな。
「人の事ずらの男女なんて珍獣あつかいする人だよ。」
下宿人が体育座りで言った。
女と勘違いしてるのか辰昭様は。
「間違いなく王女様なんだから良いじゃない。」
女が言った。
王女だと?
「王女なんて良いもんじゃないよ…未成年の時からファモウラの戦場で戦闘だし…魔法と剣技はいつでも修行だし…第一、ラーガラースを継がなきゃだしね。」
下宿人がぼやいた。
ラーガラースの王女なのか?
「ふーん。」
女が言った。
なんか呑気な会話だな…。
さて、あの女どうするか…。
精霊使いだと厄介だな。
オレはちなみにさっきの警備ネットの監視カメラの映像を通信機で見ている。
最新の監視カメラらしく映像も綺麗だし、音声もはいる。
「まあ、良い事あるわよ。」
女が下宿人をなぐさめた。
お前らのせいで下宿人は不幸なんだとおもうが。
「そうかな…。」
下宿人が顔を無意識なんだろうが監視カメラの方に向けた。
…なんかモチベーション上がった。
紫の瞳の哀愁を取り除いてやりたい…。
あんな美人に気がつかないなんてオレはどうかしている。
忙しくても下宿屋もどれば良かった。
今すぐ、助けます『お姫様』
「辰昭様がおいでになりました。」
先触れの声がした。
…様子を見るしかない…。
いざとなったらなんとかして見せる。
まっていてください『お姫様』
孝政様の忍び、通晴・瀬羽の名にかけて…。




