二の君のご母堂は不機嫌
廣宗が女を寵愛?
きにいらないわ!
「私の若様、もう廣宗様ご寵愛の娘は見ましたか?」
辰昭がのんきに側女の中野に耳かきさせてたので聞いてやったわ。
「母上、まだです。」
辰昭は振り向きもせず言ったわ。
「中野、出ていきなさい。」
私は命じたわ。
あんな色気だけの女のどこがいいのかしら?
「はい、御方様。」
中野は辰昭の頭をそっとおろして出ていったわ。
「...中野まで出して何のようです。」
お気に入りの側女を出されて不機嫌そうね。
「あなた、分かってるの?!廣宗に嫁が来たら、子供ができたら、孝政みたいにあなたもお払い箱よ!」
まあ、言い過ぎかも知れないけど。
「本当にその女を寵愛してるんですか?女嫌いを明言してる廣宗様が。」
辰昭はのんびり言ったわ。
してるわよ!
あの廣宗が女を抱き締めてたのよ~。
後ろから~。
「見に行ってご覧なさい。」
私はショックで物影から出られなかったのよ!
いつもなら嫌味の一つや二つ言って来るのに!
「ハア、めんどくさいなぁ…。」
辰昭は言ったわ。
「相手は紫の瞳の美人よ。」
まあ、美形って言った方がいいかしら?
「...異国の血が混じってるようですね。」
辰昭が興味を持ったようね。
「ええ、切れ長の目、まるで月下の華ね。」
...でも、男性にも通じる美貌よね。
身体つきは女性なんだけど。
「それは、是非確認しないと。」
辰昭がニヤリしていったわ。
まあ、中野のように色気は無いけどね。
「そう言えば、孝政も見ませんね。」
辰昭が言った。
「引きこもってるんじゃないの?」
追い落とした相手に興味は無いわ。
三田もよく踊ってくれたしね。
だいたい三田と大多のどこに家格の違いがあるって言うの?
私が側室でなんであの女が正室なの?
気に入らないわ!
まあ、息子がラーガラース何て言う新興国に婿入りで溜飲下げたけどね!
「...ラーガラースの王女と婚姻だそうですね。」
よく知ってるわね。
「先代国王みたいに色気があるのかしらね。」
私は言った。
「....先代国王が手中のたまのように可愛がって育てたそうですから。」
辰昭が言った。
じゃあ、甘えん坊なのかしら?
少なくとも器量はいいわよね。
ラーガラース烈王国のラース先代国王の孫娘だもの。
お世継ぎでなければ、辰昭の正室にして
後ろ楯にしたいようだわ。
国力あるもの。
「まあ、廣宗様ご寵愛の女はそのうち見に行きますよ。」
辰昭はそういって部屋からでていったわ。
まあ、いいわ。
ともかく、廣宗の寵愛の女なんて
許さないわ!
辰昭が上様の跡取りになるのよ。
廣宗は追い落とすのよ。
女なんていたら隙がつけないじゃない。




