魔剣姫は奥宮でお仕事中1。
全く、無理にこぼすなよ。
足が長いんだね。
「まあ、ひばるビショビショね。」
廊下掃除をしてたらバケツの水をこぼされた。
「申し訳ございません。」
めんどくさいので謝っといた。
私は被害者だけどね。
「早く拭きなさい。」
クスクス笑いながら言うことかい。
ひろのせいで廊下も私も水浸しだよ。
「檪お姉さま、きついわね。」
一応行儀見習い仲間の希沙茶さんに言われた。
ここで同意するとチクられて面倒なのであいまいに笑っておいた。
あー、ラーガラースに帰りたい。
花乃お婆ちゃんの下宿でもいいや。
「御方様のおなりです、控えなさい。」
...目立たないようにっと。
「ニー...ひばるちゃん、ここにいたんだね。」
わー、藤野のおばちゃん!
目立ちたくないんだよ~。
なんでしゃがんで確認する~。
「御方様が気にかけるようなものでは...。」
お付きの女性が言ってるよ。
「なんで濡れてるの?ニー...じゃない、ひばるちゃん風邪ひくよ。」
藤野のおばちゃんはさっぱりしている。
戦闘能力もあってアキュア聖国にひろを訪ねてきた時、私にもよくしてくれた。
「着替えないとね。」
え?あ、ほっといてくれるとうれしいな。
「ニーシェちゃんが女装してるってひろに聞いてたのに...やっぱり驚くよ。」
藤野のおばちゃんが言った。
ひろからの情報か...。
「藤野のおばちゃん、私、女だから。」
私は言った。
人払いはしてある。
「ねー、孝政様と許嫁なんだって?」
藤野のおばちゃんが言った。
「うん、一応ね。」
私は言った。
「廣宗との結婚持ち出したらモーリィアちゃんがあいまいな反応すると思ったよ。」
藤野のおばちゃんが言った。
モーリィアは母ちゃんです。
「そうですか...っておばちゃん、私、ひろの嫁嫌だからね。」
私は言った。
「上様も孝政様がニーシェちゃんに婿入りするのが良いっていってるし。」
藤野のおばちゃんがため息をついた。
「ひろとはくっかないよ。」
私は言った。
「もう、手遅れだよ、ニーシェちゃん...いいえ、ひばるちゃん。」
手遅れ?私とひろはそう言う関係じゃないよ。
「周囲の認識は波留日のひばるちゃんは廣宗様のご寵愛を受けているって思われてるよ。」
藤野のおばちゃんはニコニコした。
「ご寵愛ね...本人が聞いたら怒られるな。」
私はため息をついた。
「実在の人物なの?」
藤野のおばちゃんが言った。
「もちろんだよ。」
本人にお願いしたんだ。
「ええ?困るよ。」
藤野のおばちゃんが言った。
「本人はミーハーの引きこもりだけどね。」
私は言った。
お祖父ちゃんと私の生写真請求されたよ。
でも、ひばるさん、血液型一緒だし
身長は私の方が高いけど。
なんといっても目の色がね。
一緒なんだよ。
「じゃあ、その人は引きこもっててもらって、ニーシェちゃんがひばるちゃんって事でひろの嫁でいいんじゃない?」
藤野のおばちゃんが言った。
「ひろは私が男っぽいから執着してるだけで本当に好きなんだかどうか。」
私はため息をついた。
こんだけ女がいるんだから誰か好みの人いるんじゃない?
「好きに決まってるじゃない、ひろが自分から上様にニーシェちゃんを嫁にとりたいって言ったんだよ。」
藤野のおばちゃんが言った。
「でも、孝政様が適当って言われたんでしょう?」
私は言った。
「...孝政様なんて引きこもりじゃない。」
藤野のおばちゃんが言った。
「ひ、引きこもりなんだ。」
じゃあどうやって会おうかな?
「ともかく、私はニーシェちゃんをひろの嫁にするって決めたから。」
藤野のおばちゃんは言い切った。
『状況確認してから動けないの?』
って母ちゃんに高笑いされそうだよ。
「藤野のおばちゃん、ひろの嫁は絶対に嫌だからね。」
私は一応自己主張しておいた。
「決めたよ。」
藤野のおばちゃんが言った。
決められたって困るよ。
私は孝政様の許嫁で
ラーガラースの世継ぎで
第一、ひろの男嫁になりたくないよ。




